自然人類学の今
国立科学博物館館長の篠田謙一さんの話を面白く聞いた。いや、衝撃的な面白さだった。
2006年に次世代シークエンサが生まれ、核DNAの解析が可能になった。
世界各地で見つかる古人骨のDNAを解析することで、人類がアフリカから広がり分岐しホモサピエンスに至った跡が辿れる。
学校で習ったネアンデルタール人以外にも、最近シベリアの洞窟で見つかったデニソワ人もホモサピエンスと同時代に生きていた。やがてホモサピエンス以外は絶滅するが、遺伝子に痕跡を残している。日本人にも何%かのネアンデルタール人の遺伝子がある。
狩猟時代は北海道を中心に縄文人がいたが、大陸から渡って来て農耕を始めた弥生人が多数を占めるようになる。縄文人はやがて滅びるが、交雑が進んでいたことは、遺伝子に痕跡を残していることで分かる。
DNA解析が可能になったことで、これまで形状が似ていたので同類とされていた昆虫が実は別の分類に属していたということが分かってくる。
学校で習ったことが塗り替えられるのは何だかウキウキする。
人類がアフリカで生まれて、シベリアやパプアニューギニアまで遠征した何万年の営みを想像しただけで気が遠くなる。
「交雑」なんて味気ない言葉ではなく、そこにも愛の営みを想像すると、何だか愛おしくなるのは私だけだろうか。