タクシードライバー 感想文

タクシードライバーを観た。ロバート・デニーロとジョディ・フォスターが出演のドラマ。公開は44年前。そりゃ古いわけだ。

不眠症のトラビスが流しのタクシードライバーに転職するところから始まる。簡単な面接で祝日夜勤いつでもいけますみたいなこと言っていて、アメリカでもバイト面接的なやりとりは共通するんだなあと思った。海兵隊に所属歴があり名誉除隊の経歴持ち。観ていた時は流していたけど調べるとなかなか見えてくるものがある。最前線に投入される陸海空を併せ持つ部隊、名誉除隊は20年以上の勤続もしくは傷痍除隊に属するもの。トラビスは傷痍除隊として名誉除隊扱いになっている。彼は実戦において痕がくっきり残るほどの怪我をしている。

街で見かけた女性に惚れ職場に赴きデートまで漕ぎ付けるが、初デートでポルノ映画を選ぶセンスのせいで振られてしまう。文章で見るとアダム・サンドラーが出てきそうな陽気な雰囲気がするのに、映像で見ると全くそんなことはない。彼が選ぶ選択の一つ一つがズレているのに、本人はそのズレに全く気付いていないように見える。そこに怖さがある。劇中で交わされる会話も成り立っていない。付きまとわれた女性・ベディはそんな彼のことを「事実と作り話が半々の歩く矛盾」と指摘した。一見的確に見えるけど、そんなの誰にだって言えるようなことなんじゃないか?

ベティに振られたことを契機に仕事先に押しかけるトラビスは彼女の支持する大統領選立候補者を暗殺しようとする。トラビスがもし極上のバカだったらコメディになるんだろうけど、そうはならない。彼は殺しに向けて入念に準備をする。着々と武器を揃え、かつての従軍経験を元に体を鍛える姿は観ていて嫌な予感しかない。彼が腕を組むたびに銃をぶっ放すんじゃないかとヒヤヒヤした。

序盤でトラビスに与えられた正義の鉄槌を下すチャンスは後半になると再び訪れる。独りよがりな正しさの元、売春少女を救おうと奮闘するトラビスを観ても応援する気はわかなかった。結果的にトラビスは新聞で報道されるほどのヒーローになり、少女の家族からもらった手紙とともに壁に貼り付けるが、彼の歪みは解消されていないし、孤独であることは変わらないままエンディングを迎える。ふわふわと不穏さが漂い続ける映画だった。JOKERが大ヒットした今を思うと、この映画はものすごく先取ってると見るか、70年代レベルまで価値観が落ちているのか分からない。あんまり自分の中に残らないタイプの映画だった。

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