6-19の日報

昨夜
翌日のうんこ御開帳セールに備えて座薬を飲み、12時前に床につく。とっさのはずみに下剤が猛烈な働きを見せたらどうしようという不安を抱えたせいで2回ほど目が覚めた。


4時、5時に目が覚め、その度にうんこの可能性を確かめ、寝直した。8時にベッドから出て身支度を整える。

私はいつも朝ごはんを食べて30分後くらいにお花を摘みに行くのだけど、今日は切れ痔+イボ痔の玉突き事故が引き起こした悲劇の根本を確かめるべく行われたうんこの情報開示*が執り行われるため、お花摘みを控えたほうが良いのか、はたまた全ての花を摘みまくった状態で検査に挑んで良いのかという便をいつ出すかについて逡巡するという今思えばバカバカしいことに時間を割いていた。結局うんこは我慢したし、下剤は全く効き目を見せることなく病院までたどり着くことになる。何だったのあの下剤。なんだったら人工甘味料入りのプロテイン飲んだほうが便意を催すぞ。

電車を乗り継ぎ病院へ着く。名前を呼ばれ医者に説明を繰り返すと「じゃあちょっと観ましょうか」と診察台に横たわるように指示される。
おとなしく従いズボンを下ろし、パンツを下ろして診察台の上に横たわった瞬間「ぁぁ怖い”ぃ”!!」と声が出ていた。生きてきた中で一番情けない声が出た。ケツだけ出して壁向きに横たわった状態で怖いと慄く姿はさぞかし憐れみ深いものだっただろう。あと完全に不意打ちだったのか看護師が普通に笑っていた。医者は「怖くないよ〜〜〜大丈夫だよ〜〜〜」と私をあやしながら指だの器具だのをスポスポ突っ込んだり引っこ抜いたりしていた。言動と行動がシンクロしてないのよ。

ハムスターの餌皿と水飲み器の補充をするみたいに肛門に色んなモノを出し入れしたのち「イボ痔ですね」と分かりきったことを改めて言われる。わかってたじゃん。それ先週やったわ。写真もとってたわ。

「次は怒責検査*をしますね」と宣言され、待合室で小さくなっていると別の階へ行くように指示された。向かった先には溌剌とした女性が立っており今からどういうことをするのか、どういうことをしてはいけないのかの説明がなされた。*いきんでうんこをする検査のこと

パンツとズボンを脱ぎ、不織布で出来たハーフパンツを履く。そのハーフパンツは肛門付近に穴が開いている。そして一人乗り用のジェットコースターみたいな装置に腰をかけて(シートは便座になっている)装置を軌道させるとそのまま空中で後ろ倒しの状態になり、ハーフパンツに空いた穴めがけて冗談みたいにデカい浣腸用の注射器でお湯を流し込むのだ。あの注射器のデカさはヤードグラスとほぼ同じだったと思う。お湯が注がれた後、再び装置を動かして通常の排便体勢に戻り5分待機した後、腰掛けた椅子の下にある容器に向けていきみまくりお花を排出しまくる。排出が終わり、そばに置かれたポケベルを押すと医者が現れて内視鏡カメラを肛門に突っ込み、患部を確認する_という流れだった。説明の途中サラッと私の患部を「肛門が最悪な状態になっているところ」と形容され”私の肛門って最悪な状態になってるんだ……”とハッとしてしまった。そうだよな。最悪だから手術を見据えた検査なんだもんな。あとうんこを見てはいけないと何度も釘をさされた。看護師が出ていく間際まで念を押された。

まず空中でケツ丸出しの状態になるのは生まれて初めてだし、その状態でお湯を注がれるなんてもっと初めてのことだった。しかし、うんこをするところを白衣を着てバインダーを抱えた人たちが観察するのではないか、という不安は杞憂だとわかりホッとした。ただ、うんこ本番はちゃんと私一人にしてくれたのだけど、看護師が出ていく際に「大きな音を流しますね」と何かのボタンを押した。乙姫的なヤツか〜と思ったそばから業務用冷蔵庫の稼働音みたいな音が再生されていた。もっと本気の騒音を流してほしい。業務用冷蔵庫の稼働音ごときじゃかき消せない。あとこれはただの提案なんだけど、壁に何かポスターでも貼って欲しかった。なにもない壁を観ながら誰も居ない部屋で足が空中に浮いた状態でうんこをしないといけないのだから何か集中する手がかりとなるものが欲しかった。ダーツの的でもいい。何でも良い。体勢を保持するためのレバーをしっかり握る以外ない。ただがむしゃらにいきむしかないのだ。

抜け殻状態になった私はポケベルで看護師と医者を呼び出した。すぐ来るものだと思っていたが数分放置され、追加の怒責を楽しんだりしていた。今思えば恐れ知らずにもほどがあるな、ドアを開けた瞬間ぶっ放してたらどうするつもりだったんだろう。謝るほかないが。

医者と看護師が現れ装置を起動させ、再び私は空中に浮かびアナルを壁に向けた状態で静止していた。肛門に内視鏡カメラが入るにつれ体勢を保持するためのレバーを握る手に力が入っていく。

内視鏡カメラは患部を洗うためのお湯が出るようになっており、同時に空気を入れて腸内を膨らませることができる。確実にマズいタイプのおならが出そうな状態と、肛門内を行き来する異物感で頭がおかしくなるかと思った。医者は「イボ痔ですねぇ」と呟いていた。知ってる!!!!

「それではいきんでください」と言われ、絶対お見舞いしてしまうと恐れながら控えめにいきみを見せる。我ながらすごいコントロール力だったと思う。医者は「ああ〜〜〜〜〜…」とだけ口にしていた。そこは言って!!!

元の体勢に戻され、簡単な説明を受ける。どうやらそこまで酷いことにはなっていないから薬でなんとか出来るけど…?と提案されたので食い気味に「切らないんですか!?」と発言したら「綺麗にすることなら出来るけど…」と譲歩の代わりにイボの摘み取りを提案された。何が何でも切ってくれと伝えた。そうだ。私はうんこに怯えながら暮らすなんてもうまっぴら。どうか傷つけないでと祈った時間だってバカにならない位費やしている。

全ての検査が終了し、着替えて待合室で待機するよう言われる。検査装置の写真を撮っていたら着替えが遅いことを心配した看護師が確認しに来た。写真撮影をする姿をばっちり見られていた。

再び診察室へ通されて手術の説明を受ける。ついでに見せてもらった患部の画像を確認すると3つのイボがベンツのエンブレムよろしく鎮座していた。私はなんて恐ろしい怪物を育ててしまったのだろう。

手術は全身麻酔を使いイボを切り取り、肛門を少し広げるために切れ目をいれるそうだ。本当にボーリングのピンが入るくらい大きくなってしまうかもしれない。でもいいや。もうなんでもいい。うんこの度に痛みを感じないのであればなんでもいい。なんでもいいんだ。うんこの度に血が出てないか確認しなくていいなら何でも良い。

ということで私は手術を受けます。


受験に合格したときと同じ位明るい気持ちで病院を出る。浮かれたまま明石焼きの店に入って明石焼きを食べた。

ジムへ行く。真面目にやった。缶のMATCHを2本も飲んだ。浮かれてるな。

服屋を周る。リュックサックと靴下、シャツと半ズボン、ベルトを買った。ハチャメチャに楽しんでいる。取り戻そうとしている。損なわれることのない未来を生きようとしている。きっとこれが肛門にイボがない人たちの見ている世界なんだろうな。


明日はハイキングだというのに2万歩近く歩いていた。すこぶる馬鹿。

夜ご飯はとろろ芋をかけた牛丼、大根サラダ、フライドチキン。プロテイン。

友から”雨で地面がぬかるんでいるから、ハイキングは別日にして明日は普通にパンケーキとか食おうぜ”と伝えられる。パンケーキか〜〜〜。

足に湿布貼りまくって寝よう。確約された明るい未来を胸に寝よう……

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