2024.03.29-31

29
すべてのタイミングを逃してしまい、夜の街をあるき続けてしまった。食べたいご飯がわからず、それでいて適当に何かを口にするのは意に反する気持ちが滞留していてとても嫌な気分だった。ラーメンか蒸し鶏かな、と決めようとしたところ、見慣れないタピオカ屋が新装開店していた。中国のチェーン店らしく、360円以上の購入でソフトクリームがついてくると謳っていた。タダのソフトクリームの響きが嬉しくてタピオカミルクティーを頼んだところ、会計後に店員から申し訳なさそうにタピオカが切れている旨を告げられた。”じゃあ良いです”の一言が言えず、目に入ったトッピングのあずきでおねがいしますと伝えた。申し訳なさそうな顔と共にあずき入りのミルクティーが渡された。無料のソフトクリームはどうなりましたか?と告げるのが面倒くさくなりその場を離れた。あずきは4,5粒口に入ったきりで、その他すべての豆はストローを通る前に干上がったカップの中に残されていた。もう全部ダメじゃんと人生を呪いながら歩みを進めた。すべての選択が間違えているとしか思えないときは銭湯に行くしかない。

銭湯へ行き、湯船に身を沈めた。露天の炭酸泉でゆっきゅんの遅刻を歌っていたら壁を隔てた向こう側にある女湯に親子連れが入ってきた。しきりに母親としりとりをしようとけしかける子供が微笑ましく、3文字以上の単語が出てこないこと、とりあえずラッコを濫用しているところが気になったが、子供と同じレベルで母親らしき人も適当だったので、すでに使った単語を繰り返したりしていた。きっと一日何度もしりとりを仕掛けられているのだろう。気分が上向きになったところで銭湯を出た。結局この日は何を食べたのか忘れてしまった。

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運転免許証の更新期日が迫っていたこともあり、意識的に早く起きた。これという格好が思い浮かばず、2回服を変えた。リュックサックも手提げカバンに変えたのだが、更新ハガキを忘れてしまい一度家に戻った。実際のところ、ハガキはなくとも免許の更新はできるのだけど、更新センターの場所や時間帯など再度目を通しておきたい気持ちに負けてしまった。電車の中でハガキを読むと、土曜日は免許の更新が出来ないことを知る。選択を誤るターンがまだ続いていることにうんざりする。ファンブル。

捨て鉢になったこともあり、行きたかったクレープ屋へ行くことを決意した。11時半につくと13時開店のための整理券を配る列が設けられていた。私の前には2人しか居なかったが、列に加わったあとに続々と人が集まってきた。照りつける日差しがキツい。整理券を貰い、その場を去る。昨日あてもなく歩いていたときに見つけたレストランへ行った。モダンな店構えをたたえながら純喫茶風のプリンを宣伝していて(バカがよ)とポーズを取っていたが、事実モダンな店構えに惹かれた人間が取って良い態度ではない。カオマンガイとダージリンティーを頼んだ。ダージリンティーってなんだっけ。紅茶とシロップ、お冷とカオマンガイにかけるための出汁が卓上に並び、液体が大好きでしかたない人になってしまった。優雅に編み物でもしてやろうかと考えたが、13時のクレープのために編める量はたかが知れているので本を読んだ。

それはイスラエルに住む日本人が書いたもので、昨今におけるこの国の選択がどれだけ非道で間違っているかの憤りが高まっているなかこれを読む意味はあるのか考えてしまう。知らないよりは知っていたほうが良いだろうという理由を持って読み進めている。イスラエルに住むユダヤ人がユダヤ人たろうとする姿勢と矛盾を知る。中でも宗教観はとても興味深かった。

ユダヤ人は神殿も持たず、礼拝のためだけの教会も持たず、偶像を置く城ももたない。彼らは時間の中に城を構築する。空間に聖域を設けるかわりに、時間に聖域を設ける。時間は構造を与えられ、識別され、区別される。時間は実態となり、ユダヤ人はある一つの構造をもつ時間から、異なる構造をもつ時間へ歩み入る。そこを立ち去るときがくれば立ち去るが、彼らはそこをふたたび訪れることができることを知っている。

奪い取られ続けた(この認識も今となっては慎重にならなければならないけど)彼ら・彼女らはとにかく頭脳を鍛えることを優先すると聞いたことがある。実存の物質に頼らずとも強く生きるための用意をしている。知識と歴史の共有、算段と目利き。そういった側面が宗教観と相互に作用しているのだろうか。話がそれた。

クレープ屋へ戻る。日差しが強い。メニューに書かれたおすすめのトッピングセットを頼む。薄く焼き上げられたクレープの皮は丁寧に折り畳まれ、アイスとメープルシロップ、砕いたナッツとカステラが盛られた。仕上げにレンガのような大きさのバターが側面に塗られ、手渡された。きれいに食べるのがとても難しいクレープで、ボロボロと食べくずを撒き散らしながら歩いた。食感は軽く、パリパリに焼き上げられたクレープの皮と染み込んだバターの塩気がたまらない。夢中になって食べていたら歩行者を留めるためのポールに気づかず金玉をしたたかぶつけてしまった。立ち上る鈍い痛みと恥ずかしさにうめきながらクレープを食べすすめた。

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免許の更新に挑むも、午前の締め切り時間ギリギリになってしまいタクシーを使って更新センターへ行った。遺族が語る死亡事故の映像を観る。母親のために手作りの花束を作っていた高校生がトラックに跳ねられてなくなったという話で少し泣いてしまった。

帰宅後、パン屋で買った塩パンを2つ食べた後深い眠りにつく。起床後、目に入ったお笑いライブが気になったので知人を誘った。まだ返事はないが、行けないようだったら一人で行こうかな。

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