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安室奈美恵のBaby Don't Cryが何を歌っていたのか、今日の今日まで理解せずにいた。この曲が何を歌っているかよりも、彼女そのものを前にしたときに充満する「すげぇ〜〜〜安室奈美恵だ!」というわんぱくな気持ちで満足していた。長らくの間この曲は安室奈美恵が誰かを励ましているんだなぁ〜くらいの感覚で聴いていたし、発売当時こそたくさん聴いたが聴いていなかった時期のほうが長い。

今日、柴田聡子のカバーを聴いて目から鱗が落ちた。この曲は他者ではなく自分のために歌っている。
3年の月日を経て再び遭遇した恋人(あるいは想い人)の隣にパートナーが居ることに気づいた主人公はふと(目を)逸らした仕草から溢れ落ちるように内面へ目を向け始める。3年の間に積み重ねた経験と再び会えて湧き立ってしまった自分の褪せない思い・執着・労り・情けなさが混ざり合う。歌い出し以降続く歌詞は深掘りしていくにつれ後ろ暗く、辛さがまんべんなくにじみ出ている。これは誰かのこととして歌うにはあまりにもシビアで、自分ごとだからこそ辛く厳しい時期がいかに途切れず続いてきたかを並べることができるのだ。自分が置き去りにしてきた痛みの起点まで降りることが出来たこと、かつての自分を迎えにいくことが出来たという歌だった。こんなに素晴らしいセルフケアの歌を「安室奈美恵って歌がうまくてかっこよくて最高」で終わらせてきたのもったいなかったな。

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