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BAドライバ8機搭載で4000円の破格イヤホン「KZ AS16 Pro」レビュー


はじめに


皆さんは「イヤホン」と聞いてどこのメーカーを思い浮かべるでしょうか。
日本であればSONYやオーディオテクニカ、アメリカであればShure、ドイツのゼンハイザーetc…イヤホンは様々な国から発売されています。

そんな群雄割拠のイヤホン市場の中で、一際異彩を放っているのが中国。
今回紹介するイヤホンもその中国産であり、その中でもトップと言って差し支えないブランド力を誇るKZ(Knowledge Zenith)のAS16 Proのレビューになります。

まず初めに、KZは2008年に広東省に、元オーディオテクニカのエンジニアであるキース・ユエ氏とクラシック音楽家のゼン・リー氏によって設立されたメーカーであり、主に低価格帯のイヤホンを主軸に展開しているメーカーです。(メーカー公式サイトより)
創立年からもわかるように、既にイヤホン界では比較的歴史のある有名ブランドであり、同社の製品は日本でも専門店や家電量販店などでも取り扱われるほどのものになっています。
KZは低価格帯を主力としつつもその価格からは想像もしないようなサウンドを放つ機種を数多く送り出し、世界中にファンを増やしています。

今回紹介するAS16 ProはそのKZが作る、いわゆる「多ドラ」と呼ばれる構成で、各帯域毎にチューニングを施したアーマチュアという音声ユニットを複数機シェル内に内蔵した構成のイヤホンです。
ドライバの数が増えれば物理的にその分コストも上がるので高価格帯の機種が多い構成です。

そんな中、AS16 Proでは左右両側のシェルに8基のドライバを詰め込みつつ実売4000円程に価格を抑えた一見すると常識外れとも取れるモデルです。

購入はAliexpressから行いました。国際発送なので長期戦を覚悟していましたが、なんと注文から4日で届きました。国を跨いで4日とは…物流業界恐るべし。

4000円を切るまさかの3700円。しかも送料無料

外観

外箱
包みを外した状態
内容物

内容物としてはイヤホン本体、イヤーピース、ケーブル(2pin-3.5mm)となっています。
ただ、1点注意したいのが付属のケーブルです。音質は特筆すべきところはないのですが、とにかく「臭い」がすごい。灼けたゴムタイヤの臭いを更にキツくしたような臭いがします。もちろんイヤホンをつけているとずっと臭いに晒されるので、私はQoL改善のためにリケーブルしました。

イヤホン本体

シェルの作りは4000円とは思えないほど非常に美しく、ダイヤモンドカットのような処理を施した透明プラスチックシェルとメタルの組み合わせによりイヤホンを超えたアクセサリーのような外観になっています。
シェルが大きく、装着すると耳の中央を覆うような形になるため、装着しているだけで非常に目立ちます。このルックスの美しさだけでも4000円の価値があると思います。


音質

では皆が気になる音質について、視聴環境は

Windows PC → iBasso D-Zero Mk2 → AS16 Pro

となります。DAPが少々古い構成ですが、高音域がハッキリ聞こえるようになり全体的な鳴りを改善してくれる良いDAPです。(最新鋭のDACはもっと音が良いかもしれませんが)

また、視聴に使う音源としてどの機種でも必ず「ファインダー(kz's DSLR Remix)」を使います。聴きなれていることと、各楽器の分離がよくイヤホンの特性を把握しやすいからです。決してKZ繋がりだからというわけではありません。

・高域

他の帯域に埋もれるということはなく、キラキラしたシンセの倍音やハイハットの金属的ニュアンスが醸し出す空気感をしっかり掬い上げてくれる。
歯擦音をなども歪んだりすることなく低域。中域を引き立てる心地よい鳴り方をしている

・低域

キックの輪郭が視えると錯覚するほどタイトなローが駆け上がってくる。
ベースは控えめながらも存在感をきちんと醸しており、ブーミーになりすぎていないところがとてもGood。

・中域

ここがAS16 Pro一番の鬼門と言ってもいい箇所。
これはあくまで私見という前提で書きますが、名脇役として楽曲を傍から支えていた低域や高域と比べると、かなり「ヤンチャ」な音に感じます。
イコライザーで1000~2000Hzあたりを3dbほどブーストしたような音がします。そのためボーカルの音は伸びやすく、イヤホンの放つステレオ音声の中心に必然的に鎮座する主役となります。
ただ、その仕様が、低域・高域と育て上げてきた絶妙な音のバランスを一気に破壊してしまっているようにも思えます。
音の隙間から聴こえる低域・高域はとても美しい。しかし、主張しすぎる中域に搔き消されてしまっています。
ボーカルやギターサウンドなどをはっきり聞き取りたい!という層にはとても刺さると思いますが、素直で綺麗な音楽を聴きたいという層にはあまり刺さらないかも知れないというのが正直な感想。個人的には手元にイコライザーが欲しくなりました。
ただ、標準で付属していたケーブルの品質があまりよくないこともあり、リケーブルを行うと音の傾向がかなり改善するように感じました。完璧に特性を変えるとまでは行きませんが、試してみる価値は大いにあります。

標準からリケーブル

総評

  • 外観の章でも述べたとおり、見た目は非常に良い。ここまでオシャレな市販のイヤホンは他に見たことがないレベル。見た目買いはアリ。

  • 8BAで4000円という価格がまず魅力。多ドラがどんなものかを試しやすいい。(だが、これが多ドラというものなんだとも思ってはいけない。コンビニに売ってる二郎系が本当に二郎の代わりになるのかという問題のように…)

  • リケーブル前提であればかなり楽しめる機種。逆に付属のケーブルはパフォーマンスを出し切れていないということであり、AS16 Proの全力を見るためには追加でコストを強いられるということでもある。そこをどう捉えるか

以上が自分の感想です。8ドライバは間違いなく面白いので一度聴いてみてほしいなと思う魅力はある。その魅力をさらに磨ければ原石から宝石になれるかもしれない…そんな機種です。

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