アレナドを獲得するべきなのか:MLBをデータ・サイエンスする(2)
2010年代MLBを代表する三塁手アレナド
カージナルズのノーラン・アレナド選手にトレードの情報が出ています。
アレナド本人は、ドジャース、エンジェルズ、レッドソックス、パドレス、メッツ、フィリーズのトレードならば受け入れるのではないか、ということです。
アレナド、本塁打王三回、打点王二回、ゴールドグラブ賞10回、シルバースラッガー賞五回の受賞歴を誇る、2010年代MLBを代表する名三塁手です。
カージナルズはこの名手をトレードしたがっているというのですが、なぜでしょうか。また、アレナドを獲得するメリットはあるのでしょうか。
さっそくデータを使って分析してみましょう!
データはfangraph、分析に用いたプログラミング言語はR、使ったパッケージはtidyverseです。
パワーを見る
バレル率とハードヒット率を見てみましょう。バレル率は、選手の打数のうちで、どの程度バレルゾーンに当たった打球を放ったかの割合です。ハードヒット率は、放った打球のうち、152キロを超える打球が占める割合です。
バレル率は大きく低下していて、2024年での落ち込みがひどい。ハードヒット率も大きく落ちてます。バレル率、ハードヒット率ともに同じような落ち込み方をしています。
アレナド、パワーが落ちたとみても良いのかもしれません。2024年は600打席以上打席に立ちながら16本塁打、71打点に終わりましたが、これが関係しているのかもしれません。
OPSをみる:得点力をみる
OPSは出塁率と長打率を足し合わせた値であり、これが高いほどチームの得点に貢献しているということになります。
28歳頃をピークに、OPSは大きく下降しています。カージナルズ移籍後(2021年)にやや持ち直してはいるものの、OPSが低下傾向にあることは否めない事実ですね。
走力を見る
次に、走力を見ましょう。走力はfangraphによるSpd値を用いています。これは、スピードと走塁能力で選手を評価するものです。
走力はもともと平均以下でしたが、近年では「悪い」から「ひどい」レベルへと低下しつつあるようです。走塁面では、ほとんど貢献できないでしょう。
選球眼:四球率と三振率をみる
三振率と四球率をみてみましょう。三振率が低く、四球率が高いほど、選球眼が良いということになります。
以上の二つのグラフを見るとわかりますが、年齢ともに四球率は徐々に落ちてきているようです。他方、三振率は加齢によってそこまで大きく変化したわけではないようです。
守備力をみる
さて、最後にアレナドの最大の売りの一つだった、三塁の守備力をみてみましょう。分析に使った数値はDRSです。これは同じ守備機会を同じポジションの平均的な野手が守る場合と比べて、どれだけ失点を防いだかを表します。
ご覧の通り、守備力も右肩下がりです。ただし、これは留保が必要で、アレナドはもともとのDRSが20以上と傑出して高かったのです。DRSは15以上でゴールドグラブ級といわれているので、20超えはモンスター級の数値といえます。
2024年現在のアレナドのDRSは5ですが、これでも平均以上です。守備は衰えたりとはいえ、まだ平均以上の守備が期待できるといえるでしょう。
アレナド、守備的には「モンスター級三塁手が優秀な三塁手に変わった」程度であり、衰えたりとはいえど、守備にはまだ期待できそうです。
結論
アレナドですが、パワー、得点力、走力、守備力など、多くの値が低下傾向にあり、打者としての衰えが目立ち始めているといえます。
しかし、守備は衰えても平均以上の守備が期待できるので、まだ三塁手としてやれるでしょう。問題は打撃の方です。OPSで見る限り、いまや並みの打者といわざるを得ません。
WARでは3.1あるので、総合的には、アレナドはまだ好選手の部類にはいるといえるでしょう。
カージナルズが、アレナドをトレードしようとしている理由もみえてきます。アレナドの現在の年俸は年平均3000万ドル以上と高額であるため、衰えとともにコスパに見合わない選手になってきているのだと思います。獲得するチームがあれば、年俸負担と、できれば若くて能力の高い選手と交換したい、というのがカージナルズの本音でしょう。
アレナドを獲るべきなのか、と問われれば、ポジションが空いていて、今後も特に打撃面での衰えが顕著になることを覚悟の上であれば、獲得もあり得るという状況かと思います。
(Cover Photo by jenniferlinneaphotography, Flickr)