「悪人」

悪人 を鑑賞
2010年公開 李相日 監督作品

ズシン、とくる映画だ

以前、同監督の「怒り」を観た時もそうだったのだが、本当にズシンとくる
「怒り」を観た時に絶対にいつかこの映画も見ようと思っていた

終始不穏な雰囲気で、序盤から常にいつかどこかで何かが始まってしまいそうだった
絶えず流れる緊張感が伝わる
そんな中で、罪を犯してしまう男性とその男性を愛してしまう女性

どう表現すればいいのか分からない
悲しいとか怖いとか、それだけじゃないのだけれど、泣きそうな気持ちになった

出演している俳優陣の演技力が総じて高い
故に、よりリアルに感じて見ているのが辛くなる場面もある
視聴する側のエネルギーが削られるような映画だ

前述した通り、俳優陣の演技力が高く、一人一人名前を挙げて語りたい
しかしさすがに長くなり過ぎるので已むを得ず割愛し、2名だけに絞らせてもらう

まずは深津絵里、愛してしまった女性を演じている
言わずと知れた実力派女優だ
もともと可愛らしい印象を持っていたのだが、この映画の中では恐ろしく綺麗だ
1歩引いて見ると、恋に溺れて周りが見えなくなっている愚かな女性なのだが、
その愚かさも、必死さや溺れていく様さえも、切なくて美しさを引き立たせるようでぐっと熱が入る
馬鹿馬鹿しく愚劣なのだけれど綺麗だなと思わずにはいられなかった

次に樹木希林、罪を犯した男性の祖母を演じている
この方も素晴らしい女優さんであることに間違いない
驚くべきはその自然さだ
加害者家族になってしまった、どこにでもいるような本当にただの田舎のお婆さんなのだ
迫力というより、自然すぎて本当に哀れに思ってしまう
樹木希林のシーンが個人的には1番見るのが辛かった
改めてその存在感、凄さを思い知った

他にも妻夫木聡を始め、キャストそれぞれが人間臭くて愚かで、素晴らしい
そして登場シーンは少なかったが永山絢斗も良い役どころだったと思う

改めて考える
何をすれば悪人なのか
何をしなければ悪人では無いのか
悪人とはそもそもなんなのか

見終えたあとにどっと押し寄せる感情に自分でも上手く言葉にできなくて苦しい

浅はかで汚らしい、でも誰もが持ち合わせているはずの部分
「お前にもあるんだからな」
とでも言われたような気持ちになるのだ

なぜ、殺したのか。
なぜ、愛したのか。

(※画像はサイトgirls hourより引用)