続・大日本弓道會とセバスチャンさん
以下の記事の続きです。狭い界隈とはいえ、ホットな話題であったためか、思いの外アクセスが沢山ありましたのでその続きを書きました。
前回の記事では、簡単なネット検索により得られた情報により、バーチャルオフィスで登記された団体である事や、大日本弓道會を名乗りながらも「よそく流」という不思議な流派の組織であることの滑稽さを紹介しました。
それらの限られた情報から、私は「『弓と禅』から弓道に興味を持った英語圏の方々に、日本の由緒正しき伝統的かつ国際的な弓道団体であることを装って、有料のメンバーシップ促すという詐欺まがいの団体なのかな」と想像をしたのですが、改めてその代表者であるセバスチャンさんのことを調べることで、また違った一面が見えてきましたので再び記事としました。(とはいえ、個人の感想です)
なお、全弓連による注意喚起の文書では、このたび新設された大日本弓道會の代表者はサバスティアン氏だと書かれています。そして、このサバスティアン氏は、フロリダ武道館という組織の館長であるSabastian Velilla(以下、セバスチャンさん)のようです。Facebookでも実名で活動されていますね。
フロリダ武道館では、弓道だけでなく、空手道と居合いについても稽古が出来るようで、各々立派な道場があり、例えば直近では6月にも弓道セミナーが予定されており、なかなか活発に活動をしている団体のように見えます。海外で、日本の武道がこのように広まっていることは微笑ましくも思います。しかしながら、なかなかにハイコンテクストな領域ですので、その技術や精神性を正しく伝えることは、とても難しいことだろうなと危惧もしてしまいますね。でもそれは、例えばバレエとか、カポエイラとか、フラメンコとか、サンバとか、フラとか、オペラとか、テコンドーとか、中国拳法なんかを日本で学んだとして、それをより本格的に追求し高見を目指したければ、しかるべき場所に赴くことになるのと同じような話なので、その切っ掛けとなる場があることに関しては、とても良いことのように思います。
なお、日本武道の稽古場であるフロリダ武道館は、Arching Oaks Art and Culture Center Incという、日本の伝統芸術と文化を促進することを活動目的とする非営利組織の運営の元になりたっているようです。ここでは武道だけでなく、茶道、香道、書道、生け花、石庭、神道による浄化儀式など、各々の講師や宮司を招いて、それを体験したり学ぶことが出来るような活動をしています。そして、この組織のボスもセバスチャンさんです。ネットからは収支決算の情報が見つかりませんでしたが、運営は会費と寄付で成り立っているようで、その会費は$85/月とお高めではありますが、それで荒稼ぎしているとも思えず、これだけの規模の組織を運営するからには、日本文化に対する相当な情熱とリスペクトがあるのかなと思いました。また、セバスチャンさんは、上智大学で日本研究 の大学院課程を修めている(らしい)こともあり、日本文化について相当勉強もされているのではないかとも思います。
さて、そんなセバスチャンさんと弓道ならびに大日本弓道會について話を戻します。ツイッターなどの情報によると、セバスチャンさんご自身も、名古屋で弓を引いていたようで、全休連の指導や審査も受けたことがあるようです。また、そこで何らかのトラブルがあったことを示唆する情報もありました。昇段審査で、腑に落ちない対応でもあったんですかね、そこは想像でしかないです。
今回問題となっている、大日本弓道會を名乗ることに関して、私の感覚的には完全にダメなことだと思っています。フロリダ武道館で同好会のような形で弓を引くことは全然良いことだと思いますし、せめて過去に実在した大日本弓道会の「弓道要則」や、阿波研造だとか本多利實の残した文献を元にした研究会のような組織を作るのでしたら良かったのではないかと思いますが、実在した大日本弓道会の復活とあっては、組織の信頼性を誇張するための詐欺行為になってしまいますからよくないです。ちなみに、全弓連の主張が全面的に正しくて、全弓連の運営には何ら問題点がなかったのかどうかについては解りませんよ。全弓連側にも、説明不足なり運営の不備なり何らかの問題があった可能性があるほうが自然な気もします。
それから、もう一つ。注意喚起の文書では、あたかも全弓連や国際弓道連盟と敵対的な関係にある大日本弓道會に、荷担をしている怪しからん弓人がいるような書きぶりになっていますが、私の想像では、海外で弓道の普及活動をしている団体に講師として招かれて、その期待に応えようと親切に指導をされた先生方がいたという話であって、何もセバスチャンさんと供にクーデターを企てている訳ではなく、こんな事態になることも努々思っていなかったんじゃないのか?と思いました。しらんけど。
ちなみにですが、フロリダ武道館の空手道のページには、船越義珍の写真と供に、松濤館流である旨の記載があります。(※船越義珍は、琉球武術であった空手を空手道と改めて本土に広めた人。空手道に流派はない!!と唱えたが、死後にいろいろな会派が誕生したため、松濤館と称した道場で活動を行っていた船越義珍の空手は皮肉にも松濤館流と呼ばれるようになる)しかしこれに関しては、全然違和感無いんですよね。全日本空手道連盟とか、國際松濤館空手道連盟とか、日本空手道松濤會とか、船越義珍をルーツとする空手道団体は大小他にも沢山あり、どこかが独り占めしているわけではないですから。もしかしたら弓道もそんなのりで、空気感を間違えて、大きめな看板を掲げちゃったのかな?という気もしました。
何年か前に、日本が大好きで日本語の勉強をしていることも公言していた世界の歌姫 アリアナ・グランデが、自身の新曲である「Seven Rings」にちなんで、お茶目な勘違いにより「七輪」とタトゥーを入れてしまうという珍事がありました。それによって、心ない多く日本人からのバッシングや蔑みの言葉をうけ、歌姫は日本から距離をおいてしまうという誰にとってもアンハッピーな結末を向かえてしまいました。
文化や利益を守ることはとても重要ですが全弓連には、射は、思いやりや慈しみを重んじる、仁の道であることを体現して頂きたいなと願います。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
今後も弓道に関することを記事にしていきたいと思います。
リアクションしていただけると嬉しいです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?