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㊗岩倉美津未と成瀬あかりの本屋大賞

2024年の本屋大賞に「成瀬は天下を取りにいく」が選ばれました。

本屋大賞という賞には賛否があるようですが、私はわりと肯定的にとらえていて、やはり売れる本というのは、今の時代を反映していて、読者を選ぶことなく、エンターテイメントとしての素直な面白さがあるように思います。

成瀬は天下を取りにいく」は、本屋大賞受賞の記事を見てから、Audibleで配信されていることを確認して、その日の帰りと、翌日の通勤の時間を利用して聴きました。とても愉快なお話で、明るい気持ちになれました。ストーリーがどうこうというよりも、ただただ成瀬あかりの魅力を楽しむことが出来ました。

最近私が読んだ(聴いた)本屋大賞の受賞作品( 汝星のごとく、流浪の月、黄色い家、同志少女よ敵を撃て、ザリガニの鳴くところ、など)にも、成瀬あかりと同年代の少女が主人公のものがあったが、それらの物語では、もっとずっと厳しい時制や環境で、過酷な現実に立ち向かう少女の姿が描かれていたので、それに比べると本作はずいぶんとおちゃらけた物語ではあるのですが、成瀬あかり自身はおちゃらけているわけではなく、他の作品の少女たちに引けを取らないほど真剣であり、一生懸命に生きているさまに、清々しさを覚えました。

こんな少女の物語を最近どこかで見たような気がして、それがなんであったかと思いあぐねていたのですが、どうやらそれはスキップとローファーという漫画に登場する岩倉美津未でした。一巻を一度読んだだけなので、全然違うという突っ込みもありそうですが、あくまで私の印象です。なお、この漫画を見た時には、面白い漫画があるもんだと感心をしたのと同時に、軽い衝撃を受けました。何にどう衝撃を受けたのかは表現するのが難しいのですが、こんな生体の女子高校生の描かれ方、が私にとっては斬新だったのかもしれません。角度は180度違いますが、高校生の時に初めて読んだ岡崎京子の漫画でも、同じような衝撃を受けました。結局私は男だから、女の考えることは想像するしかないわけで、その想像の枠からはみ出た存在が登場した時に感じる小さな混乱が、軽い衝撃の正体なのかもしれません。どちらもフィクションの世界ではあるんですがね。
でも、もしもそれが現実に起きたなら、成瀬あかり岩倉美津未のような女の子に不意に出会うようなことがあったなら、恋に落ちちゃう(脳が処理しきれなくて、そのように錯覚している可能性あり)のかもしれないなと思いました。カルタ大会で出会った同級生の男子高校生のように。

多様性が尊重される時代ですので、物語の中だけでなく、現実社会でも、もっともっと成瀬あかり岩倉美津未のような子が闊歩する世の中になると楽しいだろうなと思いました。

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