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小説 友達の話〜眠れない夜に

眠れない夜に、胸くそ悪い話をこれからしてやろう。俺の友達、ダイキの話だ。

ダイキはその町では、ビバリーヒルズと呼ばれる高級住宅街に住んでいたんだ。両親と姉と4人暮らしだったらしい。

ダイキのお父さんはどっかの重役で忙しいのか、ほとんど家に居ることはなく、代わりに母親が家事いっさいを引き受けダイキや姉リサの面倒を見ていたらしい。今でいうワンオペってやつだが、まあよくある話だ。

母親はまあ、満たされてなかったんだな、いつも不満をリサにぶつけていたらしく、耐えかねたリサは、家を出ていった。リサが20、ダイキが高校を卒業した春だ。

残されたダイキに母親はこういったんだ。「ダイキもいつでも出ていっていいのよ。お母さんのことは心配しないで」って。それを聞いてダイキはこの家を出ない決心をした。だってそうだろ?ダイキにとって母親は守らなければいけない存在で、そんなことできやしない。

ダイキは働きだした。しかし、給料を1円たりとも家に入れることはなかった。だってお金なんて母親は全く求めていなかったから。

「ダイキ、今日もいつもと同じ電車乗るの?」「そうだよ」ダイキはいつも徒歩15分の最寄り駅まで、車で送ってもらった。

「このワイシャツ、アイロンかけといたよ」「わかった」ダイキはいつもアイロンをかけられたワイシャツを来て出勤した。

「ダイキ、夕食とっといたよ」「…ああ」ダイキは遅くなっても家で食事をとるようにしていた。

そうやって時が過ぎ、ある時気づいた。

俺の人生って何なんだ。ああ、そうか、姉貴はとっくの昔に気づいたんだ、だから出ていったんだ、そうか、俺がバカだった、望み通り、母親がいなきゃ何もできない息子になっちまったよ…。

ねぇ、俺もう60だよ。父さんも母さんも金だけ残して向こうにいったよ。これからどうやって生きていけば…。

…友達の話だ。「金があるなら何でもできるだろう」と、俺はアドバイスしてやった。でも「いくら金があっても時は戻せないし、人生はやり直せない」というんだ。「なにいってる、俺だって同じ年、でも人生はこれから、いつからだってやり直せる」と言ってやったさ。だが納得してないようだ。

なあ、どうすればいい?良かったら一緒に考えてくれないか?どうせ眠れないんなら、俺のため…じゃなくて、友達のダイキのために。答えを待ってる。





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