Tabula Rasa - 希望に満ち溢れる味

あらすじ

セルイというパプア島にある田舎出身の主人公のHansは都会でプロサッカー選手を目指して、故郷を離れた。ところが、ジャカルタでは彼が思ったより全てがそう簡単に上手く行くことができなかった。故郷のチームにいるとき、ジャカルタのコーチが彼の才能に魅了されたにも関わらず、右足がけがをしたばかりに、彼はクラブに治療を受けさせてもらうどころか、道端に捨てられたかのようだ。居場所をなくした彼はパプアを離れる日に義理母からもらったスポーツシューズを大事にしながら、毎日線路沿いに住み込んでいた。Hansが橋で自殺を試みた翌朝はパダン生まれの婦人のMakはHansが倒れているところを見かけた。誰もがHansを助けようとしないけど、彼女はHansを助けようとした。彼女の助けを断ったHansは彼女の食堂でご飯を食べること勧められた。同じパダン料理食堂を経営するNatsirとParmantoがMakの行動を理解できないけど、その日MakはHansにグライ・クパラ・イカンという料理(魚スープ)を食べさせた。噛めば噛むほど、恩返しとして彼は無理やり皿洗いをしたいほどに、Hansはこの料理に心を動かされた。


その日ご馳走してもらってから、すぐに何処かへ行ったHansは何故かMakを心配させて、NatsirとParmantoに反対されながらも、Makは彼の行方を探しに行って、再びHansを自分の食堂に連れてきた。この3人と一緒に暮らすことになったHansは買い出しの仕事を手伝いながら、日々違う文化と習慣に触れている。ある日、料理人のParmantoは計算上は食堂が潰れそうになると思っているから、新人のHansが負担にしかならないとHansをせいにして、食堂を去った。調理人がなかなか戻って来ない状況は調理過程に少し触れるHansの機会になった。それ以来、HansはMakの調味料の作り方や、材料の選び方や、道具の使い方などすべてのこだわりを理解しながら、パダン料理を学んでいる。

ある日Hans、Mak、Natsir、3人で、食堂のお客さんの人数が減少してきた原因にもなる近くにできた大きいパダン料理レストランに味比べをしに行った。Makは料理を口に入れるや否や、席を離れて、レストランの工房に飛んで行った。彼女が疑ったように、その工房に元料理人のParmantoがいた。自分の食堂の秘密のエトセトラを丸々真似したことにあまりにも驚いたMakに対して、Parmantoは自分がもう仲間じゃなくなって、今ライバルでいることを宣言した。ショックを受けたMakを励まそうとしたHansは初めて会った日に頂いた魚スープがあまりにも美味しいと思っているから、食堂のメニューとして導入することを勧めたけど、Makは感情を隠しながら、怒鳴り散らして、Hansに食堂を出させた。Natsirは彼女が怒った理由が理解できないHansを探しに行って、Makの気持ちを彼に説明した。お互いに理解できるようになったHansとMakは魚スープを新メニューとして導入することを試みた。その結果、料理の評判が良くて、ライバルのレストランのお客さんが減っているほどに、多くのお客さんを招くことができた。
ある夜に、3人は結婚式のために、大量のオーダーを受けた。しかし、Makは急に体調を崩して、病院に行かなければならない状態だったから、HansはMakの力に頼らず、自分の手で料理を作らざるを得なかった。パニックのあまりに、Hansは集中できなかった。そのとき、元料理人のParmantoは急に現れて、Hansが料理を作っているところを手伝った。二人の力を合わせた結果、オーダーを無事に完成できた。数日後退院したMakはHansに感謝の気持ちを伝えた。HansもParmantoに助けてもらったから、仲直りしてほしいとMakに伝えた。恥ずかしくて、今までずっと義理母に連絡できなかったHansはある夜に電話で連絡することができるようになった。その翌朝、HansはそっとMakの食堂を出て、自分の夢をもう一度追いかけることにした。


自分の感想
料理をメインのテーマにした映画はインドネシアで非常に珍しくて、観るだけで、涎が出てしまいそうなぐらい、食欲をそそるシーンが沢山詰まっている。弱火で混ぜるココナッツミルクや炭火で焼いている牛肉などのが実際に匂っていないけど、不思議に自分の鼻はMakの工房に充満している匂いが嗅げるように感じさせる映画だった。監督のArdiyanto Dewoさんが唐辛子といった材料や、乳鉢みたいな伝統的な器具で牛肉を潰したといった調理のプロセスや、ココナツミルクを絞る調理器具など細かくて、きれいにシーンに収めたから、視覚と聴覚だけではなく、「嗅覚」という舞台を演出することができた。


この映画のサブテーマは「異文化への理解」で、映画の会話がほぼ7割ミナンカバウ語(西スマトラ州のの地域言語)で行われている。ミナンカバウ語を選択した監督さんが視聴者さんにメジャーではない地域言語を理解してほしいという異文化理解のメッセージは一番著しい。所々出てくるパプア弁にも反映されているが、個人的に印象深いシーンはHansがMakにPapedaというパプア島の主食の食べ方を教えたシーンだった。インドネシア人の中でこの「噛んで、飲み込むではなく、すすって、すぐ飲み込む」あまり知られていないから、勉強にもなる。
最後に、このノートのタイトルにも書いてあるように、「Gulai Kepala Ikan」という味はHansとMakに希望を与えた。この味のおかげで、Hansは左足がけがしても、足を引きずりながらも、再び前へ歩む勇気を出すことができた。映画のエンディングではHansがどこに行くかはあまりはっかりしてないけど、食堂で働いている間に、ボールを買って、近所の子供たちとサッカーしたりするシーンがあるから、食堂を出てから、ジャカルタまで持ってきた夢を捨てることができないのかもしれない。そして、この味のおかげで、Makは思い出すだけでも怖い過去を前向きな未来に変えることができた。2009年西スマトラ州に起きた地震で、亡くなった息子の好きな料理はGulai Kepala Ikanなので、作るたびにお墓参りするように感じていたが、この料理が彼女の食堂で人気メニューになったから、今後も彼女は息子に感謝しながら、他のレストランに負けることなく、食堂を経営することができる。
読者の皆さんはGulai Kepala Ikanのように、皆さんの人生を変えたり、影響を与えたりする食べ物とかありますか。あったら、是非教えてください。

映画タイトル:Tabula Rasa
上映年度:2014

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