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叡王戦のしくみ

それは、2019年4月のある日の出来事であった。
見知らぬ電話番号から電話がかかってきたので、就職活動中の私はどこかの会社からの電話だろうと思って電話に出た。
しかし、電話はなんとドワンゴからだった。叡王戦第3局の見届け人に当選したらしい。

というわけで、この度叡王戦を見に行くことになったのでその様子を中心にnoteに書いていきたいと思います。よろしくお願いします。
ゆくゆくは将棋のことをもっといろいろ書きたいという思いはありますが、それはまた別の機会に。
初回は、叡王戦の特徴について「見る将」の立場から2つあげてみました。

予選

他の棋戦では順位戦のクラスをもとにシードが決められていることが多いのですが、叡王戦では段位別予選という制度が採用されています。
順位戦のクラスは昇級だけでなく降級する可能性があるために、現在の実力がある程度反映されたトーナメントになる傾向があります。
しかし将棋の段位は降段という規定はなく、ある棋士が一度でも九段の規定を満たしたら引退するまで九段となります。このため、段位別予選では他の棋戦ではなかなかお目にかかれないような対戦が数多く見られます。

そうはいってもなかなかピンとこないかと思うので、具体例として今期叡王戦の開幕局の対戦カードである九段戦Bブロックの組み合わせの一部を見てみましょう。

① 三浦弘行九段(A級)VS 屋敷伸之九段(B級1組)
② 福崎文吾九段(C級1組)VS【①の勝者】屋敷伸之九段(B級1組) 
http://www.eiou.jp/qualifier/ より引用)

他の棋戦であれば、B級1組の屋敷九段とC級1組の福崎九段が予選2回戦の段階から対戦することはめったにありません。しかし、福崎九段はタイトルを獲得した経験もある名棋士で2005年に九段に昇段されているため、叡王戦ではこうした対戦が実現するわけですね。

持ち時間

叡王戦の段位別予選の持ち時間は1時間、本選トーナメントの持ち時間は3時間となっています。他棋戦では持ち時間は4~6時間程度に設定されていることが多いため、叡王戦の持ち時間は比較的短いといえます。
終盤戦では1手60秒未満で着手しなければならない「秒読み」に追い込まれることが多いため、劇的な逆転劇が起こりやすいのが特徴です。
叡王戦の劇的な逆転劇といえば、本選トーナメントの佐藤天彦名人VS.渡辺大夢五段戦があげられます。私も中継を見ていたのですが、解説の渡辺明棋王(当時)が「頓死だ!」と叫んでいたのをよく覚えています。

図の101手目▲8六歩は渡辺五段の勝負手で、次に後手玉が詰んでしまう「詰めろ」の状態になっています。ここで佐藤名人が受けに回れば後手の勝ちでしたが、後手玉の詰めろを見抜けず△8九歩成と攻めたため大逆転で渡辺五段の勝利となりました。
(全棋譜→ http://www.eiou.jp/kifu_player/20181224-1.html )

しかし、何といっても叡王戦の最大の特徴は七番勝負の持ち時間変動制です。
とりあえず、叡王戦ホームページの説明を見てみましょう。

[ルール]
【第1局・第2局】と【第3局・第4局】と【第5局・第6局】と【第7局】で、対局の持ち時間を変更して行う。
[持ち時間(の種類)]
A 持ち時間1時間 B 持ち時間3時間 C 持ち時間5時間 D 持ち時間6時間 ※全てチェスクロック方式/消費後は秒読み1分
[持ち時間の振り分け]
【第1局・第2局】【第3局・第4局】【第5局・第6局】のいずれかに、持ち時間1時間(A)、持ち時間3時間(B)、持ち時間5時間(C)が振り分けられ、【第7局】は、持ち時間6時間(D)で行う
http://www.eiou.jp/outline.html より引用)

…難しい。
では、今期叡王戦の持ち時間がどうなったのか具体的に見ていきましょう。
(動画で見たいという人は、ニコニコ生放送のタイムシフト視聴で見ることができます。特に振り駒のところは注目ですよ!)

①振り駒
ニコニコ将棋の広報大使であるVTuber「ひふみちゃん」による振り駒の結果、第1局は先手番:永瀬拓矢七段後手番:高見泰地叡王に決定。
②第1局・第2局の持ち時間
第1局の先手番である永瀬七段によって持ち時間5時間に決定。
③第3局・第4局の持ち時間
第1局の後手番である高見叡王によって持ち時間3時間に決定。
④第5局・第6局の持ち時間
第1~4局で選ばれなかった持ち時間1時間に決定。

このような持ち時間変動制は日本将棋連盟の佐藤康光会長の考案によって実現したとのことですが、他の棋戦にはない叡王戦ならではの制度です。この持ち時間の変動が勝敗にどう影響するのか注目です。

おわりに

初回なので少し長くなってしまいましたが、叡王戦について予選持ち時間という2つのポイントからまとめてみました。
次回は両対局者について紹介する記事を書く予定です。
ご覧いただきありがとうございました!

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