見出し画像

筒香嘉智は横浜優勝のピースになるか。

筒香嘉智が帰ってきた。

横浜の背番号25が帰ってきた。
2019年までベイスターズの背番号25を背負ったのは当時キャプテンであった筒香である。
2016年にホームランと打点の2冠に輝いた実力だけでなく、野球に対してどこまでもまっすぐなその姿勢から、ファンにも愛された選手である。当時の横浜スタジアムは、私の記憶では、筒香のユニフォームを着て応援しているファンが一番多かったように思う。2024年シーズン中、その筒香がベイスターズに帰ってきた。残念ながら凱旋とは言えないだろう。アメリカに渡り、怪我や感染症の流行にも悩まされ、壁に跳ね返されて帰ってきたというのが正直な印象である。それでも、彼が帰ってきたのである。そのチームにもたらす価値については編成部門へのインタビューなどで語られているので、ここでは編成上の価値について考えてみたい。
さて、この記事はベイズターズ’エールの片割れ、筒香が横浜高校1年だった時から追いかけている在野がお送りする。

横浜のチーム事情。「4番・レフト」は用意されていない

インタビューの中で本人も語っているように、4番・レフトという渡米前の筒香の指定席がそのまま用意されているということはないだろう。アメリカのマイナーリーグなどでの成績から考えて、日本においても他の選手を圧倒するような成績を残すと期待するのは少し難しい。すると、渡米前と同じような運用はあまり想定されないのだろう。
筒香の起用を考えるためには、チームの状況を前提として理解する必要がある。まず、ベイスターズの外野はウィークポイントになっている(DELTA社のデータに基づいてWARで比較した結果のだが、DELTA社のデータは個人利用に用途が限定されているため、相対的に弱いという言及にとどめる。裏を取りたい人はDELTA社のデータを見てほしい。 https://1point02.jp/op/index.aspx )。これは、ベイスターズをずっと応援している人にはある種不思議な話であり、あんなに抱えていたプロスペクトはどうなっているのだ?となる。言うまでもなく、期待の若手たちがそろって伸び悩んでいるのだ。
内野に目を移そう。セカンドは牧秀悟がレギュラーを務め、サードは宮崎敏郎がレギュラーを務める。ファーストに怪我で離脱中とはいえタイラー・オースティンがおり盤石にも見えるかもしれない。しかし、宮崎敏郎は現在35歳とかなりのベテランになっており、パフォーマンスを維持するためにも定期的な休養が求められる状況である。これはオースティンについても同じことが言え、仮に4月の離脱がなかったとしても、定期的な休養は必要だったのだろうと考えられる。外野手が飽和気味の状態であれば、レフトの佐野をファーストに移し、4番手の外野手を起用することでチームの出力を維持することも考えられたのだが、上述したような伸び悩みからその運用も難しい状況である。
ここまでの情報を総合すると、たとえフルメンバーがそろっていても、定期的にレフト・サード・ファーストのどこかを埋める需要があるということだ。平均以上のクオリティで埋めることができるならばチーム全体の出力を維持することにつながる。

筒香はフィットするか。

守備位置から見ていこう。渡米前の筒香は、守備能力に大きな問題があったとはいえ、レフトを主な守備位置としていた選手である。渡米後には苦しみながらもライト(20試合。データ元はMLB公式サイト。以下も同様 https://www.mlb.com/player/yoshi-tsutsugo-660294?stats=career-r-fielding-mlb&year=2024 )の守備をこなしていたが、MLBのキャリアを通して最も多く守ったのはファースト(66試合)である。MLBでもサードを14試合守っているが、横浜高校からベイスターズに入団してしばらくの期間、筒香はサードを守備位置としていた選手である。2019年に宮崎が離脱した時期にサードを守っていたのを記憶している人もいるだろう。守備位置の面で見ると、筒香はチームの穴を、高い水準でなかったとしても埋められるピースだと言える。
打撃の方はどうであろうか。こちらについては分からない。MLBでもかなり苦労していたという印象があるし、速球に対応できないという報道もある。筒香の渡米していた期間でNPBの投手の平均急速は上昇しているし、そこを不安視する声は存在する。
その一方で、かなり主観が入るのだが、筒香が速球に弱いと言われだしたのは、MLBへの挑戦を本格的に視野に入れてヒッティングポイントを後ろに寄せた時期からなのではないかと思っている。この仮説が正しいのであれば、日本仕様でポイントを前にすることによって米国マイナーリーグでの成績から予測される以上の成績を残しうるのではないかと考えている(というか、上振れがあるとすればそこではないだろうか)。このような考え方を筒香がするかは分からない。そもそも在野は野球未経験である。ただ、今後の筒香のバッティングを見る際の着眼点の一つとして、引き付けて腰の回転で打つのか、前でさばくのかは注目ポイントの一つではないかと考えている。

余談:この穴はベイスターズ編成の優先事項

私見ではあるが、ここ数年、ベイスターズは宮崎がフル出場できないかもしれない(いつ大きく能力を落とすか分からない)状態をどうマネージするかはここ数年のベイスターズ編成の優先事項の一つだったのではないかと思っている。理想だったのは小深田大地の独り立ちだったのだろうが、すぐには期待できないというのが育成契約という昨年オフの結論だったのだろう。それが西浦直亨のトレードでの獲得であったり、蝦名達夫のサード守備の練習だったり、井上絢登を指名した際に内野の守備に言及したりの意図ではないかと考えている。今年については筒香の起用こみでなんとかなるかもしれないが、シーズンオフにどのような動きを見せるかも同様に注目ポイントの一つであると考えている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?