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スカシウマ書き出し小説大会【前編】

タコスバンド天国

「今週はハードですね」の「です」がまだ過去形にならない。

祖母の命日だけは、ニシンのパイを食べると決めている。

逞しい木だったころの走馬灯を見ながら、紙ストローはゆっくりと死ぬ。

森のクマ

『ある日、森の中、一目惚れした。まさか親友が狙っているとも知らずに…。』

伊藤麺吉

炎のように燃える火の中、彼女のドレスは美しさと力を放ち続けた。

映画館の一番後ろの席で、僕はリングを見つけた。

僕は、「おっぱいサラダ」という奇妙な看板を見つけ、その店に入った。

とみちゃん

タバコに火をつける彼を見て、あと5分は一緒にいれるとユミは思った。

いくら多様性の時代とはいえ、ウェディングドレスで電車に乗っているのは私くらいだろう。

牛あいこ

おととい、最後の孫の葬式が終わり、私は今日182歳の誕生日を迎えた。

海老江のさわらぎ

あの日流れた君の涙の理由を知らないまま私は街を出て、またこの街に帰ってきた。

寄せては返す波の下に私の興味を掴んで離さないものが確かにそこにあったのだ。

清々しいよく晴れた秋空の下に、反比例して顔を曇らせた彼は、眩しさから目を逸らすように地面を見つめていた。

chicagocoffeee

ねぇ、これから予定ある?と爽やかに笑った彼の鼻の穴からは勢いよく毛が飛び出していて、三本まで数えたところで私は彼の誘いに乗ることにした。

金木犀の香りに気を取られていた僕はうっかり正解しそうになって、慌てて、今回も、ちゃんと間違えた。

「くん、は、いらない、オレのことはヤマダでいいよ」そういってタナカは駆け出した。

後編へ続く。

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