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【コンビニ誕生から半世紀】短歌が詠んだコンビニ半世紀

NewsPicksで、ニュースを読んでいたら、目に留まった記事が、こちらです。

1974年5月15日。

東京・豊洲にセブン-イレブン1号店がオープン。

その名の通り、午前7時から午後11時までの営業。

当時としては、深夜まで開いている店は、画期的でした。

それから半世紀。

オフィス街。

住宅街。

幹線道路沿い。

人通り・車通りがあるところには、必ずといっていいほど、コンビニエンスストアが有るのを見かけるファスト風土化した日本。

東日本大震災で、コンビニ大手3社が、300万個以上のおにぎりを、被災地の避難所などに提供したことは、あまり知られていないのではないでしょうか?

「ファスト風土化する日本 郊外化とその病理」(新書y)三浦展(著)

「再考 ファスト風土化する日本~変貌する地方と郊外の未来」(光文社新書)三浦展(著)

但し、コンビニが社会のインフラって誰が決めたのかと言った問題提起は以前からあって、中で働いているのは「人」なので、その「人」をいかに守れるのか?(事業をするための安心できる環境作りが重要)といった面からもケアが必要と思われます。

前から社会に存在していた「情緒性」の大切さが、コロナで顕在化し、綺麗事かもしれないけど、

「モノに対してお金を払う」

のではなくて、

「その店を応援するつもりで、お金を払える」

様な社会、コンビニが、もっと増えてくれればよいかなって、この小説や漫画を読んでも、そう感じます(^^)

「コンビニ人間」(文春文庫)村田沙耶香(著)

「この手も足も、コンビニのために存在していると思うと、ガラスの中の自分が、初めて、意味のある生き物に思えた」 『コンビニ人間』より引用

「コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―」(新潮文庫nex)町田そのこ(著)

「万人に受けたい、ってそりゃ簡単じゃねえだろうよ。

でも、少なくともお前はいまふたりの人間に『いい』って言われてる。

そういう粒みたいなのはいらねえの?」『コンビニ兄弟』より引用

「コンビニたそがれ堂」 (ピュアフル文庫)村山早紀(著)

あとがき「地上は人間を愛しているのじゃないかなあと思う」

「島さん : 1」(アクションコミックス)川野ようぶんどう(著)


「たかがコンビニのバイトでしょ」という青年の言葉に対し、島さんはこう言うのだ。

「まあ……コンビニってちょっとした買い物で お客さんが店内にいる時間なんて短いけど…… お店に来た時より お店を出る時 その時 喜んでもらえたら嬉しいから」

そんな感じで、「コンビニ」に、ご縁のある本とかに接していたら、こんな記事に出会っちゃいました(^^♪

(寄稿)コンビニ50年、現代短歌が映す変遷 非抒情空間が都市生活や労働の場、日常風景へ 山田航

面白い視点ですよね(^^)/

「コンビニで買う白滝のざくざくと切る水無月は大粒の雨」
大野道夫『冬ビア・ドロローサ』

「コンビニは安心できる絶対に「ほんもの」だけは置いてないから」
松本秀『5メートルほどの果てしなさ』

「不器用な父が買い来しコンビニの袋の中のいちご大福」
長浦史恵

「ローソンのバックヤードでくちづけをおぼえる子供たちによろしく」
魚村晋太郎『バックヤード』

「抒情せよセブン・イレブン こんなにも機能してゐるわたくしのため」
小池光『日々の思い出』

「「お客さん」「いえ 渡辺です」「渡辺さん、お箸とスプーンおつけしますか」」
斉藤斎藤『渡辺のわたし』

「たぶん親の収入超せない僕たちがペットボトルを補充してゆく」
山田航『さよならバグ・チルドレン』

「持ってません温めません付けません要りませんいえ泣いていません」
西村曜『コンビニに生まれかわってしまっても』

そこで、ちょっと調べていたら、こんな記事を発見!

穂村弘さん曰く、短歌に登場するコンビニは、ローソンばっかりなんだそうだです。

穂村弘さんが『群像』12月号の連載で、下の歌を引き、その謎について書いていたことを知り、

「コンビニの短歌はなぜか「ローソン」が詠まれる私は「サンクス」が好き」安藤匡宏

こういうバイアスが発生するメカニズムに、何だか、とっても、興味をそそられませんか?(^^♪

と言うことで、これ以外に、どんな短歌があるのか、ピックアップしておくので、自分のコンビニ・ライフを振り返ってみて、一首または一句、詠んでみるのも、良いんじゃないでしょうか(^^♪

■コンビニ編

「コンビニの麵麭と水だけ口にしてとがらせてゆく秋の結末」
安田茜『結晶質』

「亡き人のSuicaで買ひしコンビニのおでんの卵を分けあひて食ふ」
内藤明『虚空の橋』

「知らぬことまだまだありさうコンビニのクリームパンが好きな連れ合ひ」
外塚喬『鳴禽』

「2月5日の夜のコンビニ 暴力を含めてバランスを取る世界」
永井祐『日本の中でたのしく暮らす』

「コンビニはひかりの名前ひとつずつ呼びかけながら帰路は続くよ」
服部真里子『行け広野へと』

「青い舌を見せ合いわらう八月の夜コンビニの前 ダイアナ忌」
山崎聡子『生きなおす』

「コンビニの光につよく照らされて殺菌処理され夫出でて来ぬ」
川野里子『硝子の島』

「老いわれが氷雨を避けしコンビニで日頃目にせぬヌード誌めくる」
藤村 学『ぐい飲みの罅』

「「七十歳のコンビニ強盗」といふ見出し付けられてゐる男のあはれ」
中地俊夫『覚えてゐるか』

「コンビニの光の及ぶぎりぎりに少年たちが肩を寄せ合ふ」
三澤吏佐子『シャドーグレー』

「スピードを落とした車の窓が下りコンビニの袋投げし手首よ」
長谷川と茂古『幻月』

「コンビニ弁当病む母の眠る辺に食みぬ卵焼きの渦ながく見つめて」
川野里子『王者の道』

「伊吹山 重装備の登山の人とすれ違うコンビニにでも行くような妻」
正岡豊『白い箱』

「営業をやめてしまつたコンビニがさらすコンビニ風の外観」
千葉優作『あるはなく』

「コンビニはそのうち影も売るだろう闇をなくした夜を背負いつつ」
遠藤由季『鳥語の文法』 

「からっぽをわけあうようにカレンダー通りに休むコンビニの前」
黒﨑聡美『つららと雉』

「人息に曇る壺中に働いてコンビニに買ふ〈ピュア酸素缶〉」
尾崎朗子『タイガーリリー』

「いい意味で愚かですね」とコンビニの店員に言はれ頷いてゐる
山田航『さよならバグ・チルドレン』

「過去のなき空間のごとく光りおり八月の朝のコンビニの中」
小島なお『サリンジャーは死んでしまった』

「コンビニの定員聖痕あらはして卒倒そのときイラク空爆」
小林幹也『裸子植物』

「馬車道にコンビニがあつて花屋がない不思議のままに行く朗読会」
中川宏子『いまあじゆ』

「役立たずな気分の夜はコンビニでしあわせ印の桃缶を買う」
森本平『モラル』

「暴食と吐瀉繰り返す恋人のためにコンビニ閉じないでくれ」
八木博信『フラミンゴ』

「コンビニの袋に入れて持ち帰る賑やかな孤独ポテトチップスの」
杉山理紀

「コンビニに流れる歌詞に聞き入ってどうかしている今日の私は」
松原和音

「ひそやかな祭の晩に君は待つ コンビニ袋に透けるレモンティー」
ちゃいろ

「ほほ笑みを仕舞つた若き蝶たちが光を求める夜のコンビニ」

「努力して夢をかなへた人たちの「夢はかなふ」がのしかかる夜」

「春風に時をり抗はうとするむすび百円セールののぼり」

「窓外の景色を白く阻むのは指名手配のポスターの裏」

「真夜中にいつもと同じパンを買ふ人の名前も憂ひも知らず」

「人間の顔を見ないで人間の手ばかりを見てお釣りを渡す」

「潔く命の期限を前面に押し出して待つ棚の弁当」

「来る者は拒まず去る者は追はずひかりも透かす二枚の扉」

「コンビニのレジの横には箱のあり祈りを捧ぐる場所のごとくに」

「うつむきて雨に濡れつつ歩くのは制服を着たほやほやの自我」

「いつまでも売れぬおでんの大根を励ましながらひっくり返す」

「あたたかきものの居場所はせばめられ夏に向かひて走るコンビニ」

「絶え間なく代謝のつづくコンビニで老廃物のやうに働く」

「平等に流るる時の真ん中で平等でない命を削る」

「とりどりのサラダの並ぶコンビニに蝶が舞ひこみさうな夕ぐれ」
熊谷純『真夏のシアン』

■ローソン編

「外を向いて俯いてゐるひとたちが綺麗だ 風の夜のローソン」
魚村晋太郎『銀耳』

「グレープフルーツがどうしても食べたくてローソン100で買った包丁」
伊舎堂仁『感電しかけた話』

「ローソンのドアが手動で開けながら佐藤優の猫のことなど」
山川藍『いらっしゃい』

「ローソンだ近くに行って見てみよう 雨の横断歩道を渡る」
絹川柊佳『短歌になりたい』

「ベッド柵にローソンの袋を結わえてゴミ袋にして、ここにあなた、昨日あなたを吊ろうとしていた」
田丸まひる・鯨井可菜子・山崎聡子編『短歌ホスピタル』

「ローソンの袋の皺に眼はありてじいつと俺の方を見てゐる」
斎藤寛『アルゴン』

「夕霧にほのか濡れつつローソンの青き光をくぐる獅子舞」
高島裕『薄明薄暮集』

「ローソンの前に女の子がすわる 女の子が手に持っているもの」
永井祐

「一月は暦の中にあればいい 手紙を出したローソンで待つ」
吉田恭大

「海を見るための地図買うローソンで真黒い窓の自分は見ない」
川合大祐

「生きていて何するでない一つ身はおでんの為にローソンへ向く」
小笠原和幸『黄昏ビール』

「妻と子の家に寝ぬるが力なり夜のローソンにビールを買いつ」
永田淳『竜骨(キール)もて』

「ローソンに買ひにやつたが最後にてあのぐづをとこ二度と戻らぬ」
池田はるみ『奇譚集』

「ローソンに足りないものをだれひとり思い出せない閉店時間」
照屋眞理子『抽象の薔薇』

「ローソンの若き店員ぎんいろのピアスは何を受信してゐむ」
大塚寅彦『刺青天使』

■ファミリーマート編

「まず樹々がさわぎはじめて雨走るファミリーマートを丘の起伏を」
三枝昂之『それぞれの桜』

「霊園へ続くファミマの白菊を未知なるもののように眺める」
スコヲプ

「ファミマから出てきたばかりの軽四の屋根に乗ってるアイスコーヒー」

■その他

「母さんはどんなものでもチンをする温かくてもこれは冷麺」
塩谷風月『月は見ている』

「あと十円足りずに千円札を出すわづかに角の破れたるまま」
濱松哲朗『翅ある人の音楽』

「きつと誰かほどいてくれる使はずになくした傘の透明な襞」
魚村晋太郎『バックヤード』

「死ぬまえになにが食べたい? おにぎりと言おうとしたら海が開けて」
西村曜『コンビニに生まれかわってしまっても』

「残業の夜はいろいろ買ってきて食べてゐるプラスチック以外を」
本多真弓『猫は踏まずに』

「鮭の死を米で包んでまたさらに海苔で包んだあれが食べたい」
木下龍也『つむじ風、ここにあります』

「看護師に夜勤明けかと問われたる医師は小さきゴミ提げており」
西川啓子『ガラス越しの海』

「レシートを返す箱にはレシートがあふれおり白き花束のごと」
田中濯『氷』

「海苔フィルム外して巻いてゆくときのさみしきさみしき音を聞かしむ」
吉岡生夫『草食獣 第七篇』

「今日一日(ひとひ)生きた証のレシートを入力しゆく夕餉を終えて」
吉野亜矢『滴る木』

「投げつけたペットボトルが足元にころがっていてとても悲しい」
加藤千恵『ハッピーアイスクリーム』

「ローソンへ小さく前へならえして」
なかはられいこ『脱衣場のアリス』

【参考図書】
「生きていくうえで、かけがえのないこと」若松英輔(著)

「生きていくうえで、かけがえのないこと」吉村萬壱(著)

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