RushGamingから学ぶフリーミアム

トレードオフと無料

「無料の昼食といったものはどこにもない!」“There is no such thing as a free lunch!”これはトレードオフという概念を意味する言葉の一つである。自分の好きな何かを得るためには、別の何かを手放さなければいけないという意味である。
 これはモノやサービスなどの資源は無限ではない(=資源の希少性)。人は予算や資源の範囲内で取引をする。取引の際、人は自分の満足度が最大となるように取引をする。(=効用の最大化)という経済学の前提があるため取引をする際、トレードオフは必須となる。
 そのためタダでモノまたはサービスを取引することはありえないのである。そうであるにも関わらずネット上ではタダで取引されるアプリやサービスは存在している。

価格形成理論から考えるタダの強み


 経済学において最もポピュラーな価格形成は平均費用価格形成である。この平均費用価格形成とはモノやサービスを作るのにかかった総費用(TC)を作った数量(Q)で割った製品一つ当たりの平均費用によって価格を決めるという価格形成理論である。
 この総費用には作る数量が増えても常に一定である固定費用(FC)と作る数量に比例し増えていく可変費用(VC)に分けることができる。
簡単に言うと固定費用は機械などの設備費、可変費用は材料費というように考えればよい。
 ものづくり産業において設備費はべらぼうな額の機械だったり、材料費は意外に安かったりするので沢山モノを生産することにより一つ当たりの固定費を安くできるため、まったく同じ製品を多く作るだけで安く売ることができる。このことを規模の経済(スケールメリット)という。

 このような規模の経済ではどれだけ数量を作り、固定費をどれだけ安くしても、材料費があるため絶対に無料にはできない。
 それではアイドルのようなコンテンツ産業はどうであろうか。コンテンツ産業において材料費はなんであろうか。例えばアイドルグループのCDの場合、材料としてかかるのはCDそのものの料金がほとんどである。
 しかし単純に歌を売りたいだけならばパソコン、またはネットを使えば容易にそして無料でコピーできる。そのためコンテンツ産業において、固定費さえなんとかなれば無料の商品、無料のビジネスは成立し得るということになる。
 その無料のビジネスの代表格が私たちRushファン愛用のYouTubeやTwichである。

無料のビジネスモデル


① 非貨幣市場
② 三者間市場
③ 内部相互補助
④ フリーミアム
 アメリカの著述家でジャーナリストであるクリス・アンダーソンはその著書「フリー:〈無料〉からお金を生み出す新戦略」の中で無料のビジネスモデルをこのように4つに分類した。それぞれを解説していこう。

 非貨幣市場とは注目や評判などのために(お金ではないもののために)無償で奉仕をすることである。私たちRushファン、KRTMサーバー民で例えるならばクソリプ研究会である。あそこまで面白いクソコラを彼ら彼女らが作るのはお金のためではなく、完全なる善意、またはノリで作っているため、クソリプ研究会は非貨幣市場といえる。
 また、非貨幣市場で自分の注目、評判、そして技術力を世間に披露することによって他の商品の売り上げを伸ばすという戦略としても利用できる。

 三者間市場とは主にラジオや民放、そして我らがYouTube、Twichなどで見られるビジネスモデルである。みなさん知っての通り、私たちは無料で動画を見ることができるがそこにスポンサーが広告を流すことにより収益化するというビジネスモデルである。

 内部相互補助とは簡単に言うと、おまけ商法である。一緒についてくるおもちゃのために両親にベネッセの進研ゼミをやりたいとねだったことをある人はきっといるはず。Rushで例えると、現在行っている月額制のファンクラブに入ればTシャツが無料でもらえるというキャンペーンなどが当てはまる。

そして話の本題、フリーミアムである。
 フリーミアムとは、消費者を、お金を払うかどうかによってある意味差別するビジネスモデルである。例えばニコニコ動画では有料会員は無料会員より優先的に生放送の視聴が可能になり、YouTubeでは有料会員になれば動画のダウンロードやバックグラウンド再生が可能となる。このように消費者がお金を払うかによってサービスの質を変えるようなビジネスモデルをフリーとプレミアムからとり、フリーミアムという。


 これが新しくRushGamingが行う、有料制ファンクラブ、Rush-Secret-Baseがこれに当てはまる。

Rushフリーミアム


 通常Rushの毎日の交流戦や、個人練習、Rushベースでの暖かい日常は三者間市場であるYouTubeを通し無料で視聴が可能である。
 しかし、それこそコアファン向けの移動配信や、オフラインの楽屋裏の話などの特別な生放送、Rushに肩まで浸かっているファン同士の(良い意味で)超変態的な話などが可能になる。うららさん秘蔵の「ガチ」オフショットや限定グッズなどの有料会員でしか味わえないような特別なコンテンツが多くある。

 元々このファンクラブはKRTMサーバーにコアファンが集まり過ぎたため引き起ったライト層のファンがコミットできないという問題に対し、コアファンがガチで騒げる場所を用意することにより、ライト層の参入障壁をなくし、門下を広く取ろうという目的で始めたものである。
 しかし経済学を学んでいる私から見ると見事なフリーミアムを体現したファンクラブである。くるたみさんの深夜のGEKIRO配信、否、深夜のSEKIRO配信を見ているようなコアファンの中でも精鋭に入る視聴者の中で実際に上記コンテンツのようなものを待ち望んでいたということもあり、見事に自分たちのファンの需要と、KRTMサーバーの問題点を一気に解決する非常に素晴らしい一手だと思う。

つまりここで言いたいのは・・・よくやったRushGaming&Wekids。

スーパー蛇足タイム


 ついでに完全競争市場のような市場において、市場おける企業数は参入障壁を持つかによって決まる。政府や公共団体による規制や、生産に必要な資源の1企業による独占的所有などがあると入りにくいため、下手にライト層向けのイベントなどを行うよりも参入障壁をなくすほうが自然にそして持続的にライト層のファンが増えるため効果的である。
 またこの先ライト層の育成によって新たなコアファンの誕生によってファンクラブが潤う可能性が多大にある。その点も含めてすばらしい。

まとめ

 このようにRushGamingを経済学的分析した結果、かなり理にかなっている無料のビジネスモデルを実行していることが分かった。実際RushGamingは無料のビジネスモデルを4つとも見事に活用している。さすが西谷麗さん。

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