見出し画像

元ネタを落とし込む

仕事が忙しく、趣味のテキスト執筆など早々に放り出してしまった1年だった。しかし、やはり私はTRPG無しに生きていくのがなかなか難しいらしく、また戻ってきて何かを呟きたくなってくる。以前のような調子で書けるかはさておき、よければ暫しお付き合いいただきたい。

今回は、今や世界的MMORPGとなった「FF14」を元にした私のLHTRPGシナリオ「エオ変転」シリーズの制作経験から、ある元ネタをゲームデータとして落とし込み、プレイヤーに体験してもらうことについて話したいと思う。

TRPGとの相性を考える

まず何よりも大事なのが、元ネタと、移植先であるTRPGシステムとの相性である。
こう言うと、「こっちは意気揚々と作品作ろうとしてるってのに、なんてこと言うんだ」と叱られてしまいそうだが、ここが考えられていないと折角のアイデアが活かしきれない結果に終わってしまうリスクが増大するのだ。是非検討したい。

元ネタの、ネタとしての「幅」にも分類の仕方があるだろう。移植したいのは世界観なのか、特定のイベントなのか、エネミー単体なのか、それとも技やアイテムの範囲なのか。TRPGシステムとの相性を考えながら元ネタの移植範囲をある程度明確にすることで、どこを強調し、どこを省略するのかを考える段階に進むことができる。自分が表現したいのはどの部分なのかをよく考えて整理しておこう。

例えばFF14の、ある戦闘コンテンツをLHTRPGに移植するとしよう。この時、私であれば以下のようなことを検討する。

  • 戦闘は、LHTRPGのSqタイル戦場にマッチするか

  • LHTRPGの書式の範囲で再現ができそうか

  • ギミック処理は、LHTRPGの体験として見たとき楽しいか

  • (色々組み立てようとした後で)無理してないか

特に、下2つは入念に考える。率直な話、元ネタありきのデータというのは全く異なるシステム系統にあるデータである。移植の際に「そのまま」持ってくれば、LHTRPGの戦闘として見たときにヘンテコなものが出来上がる確率は増大する。独りよがりなデータをディベロップするよりは、やはりバランスをみて、どちらのファンにも感心してもらえるものを目指したい(あくまで私はの話だが)。だから、ある元ネタをどういった側面から見つめるのか、という面は、しっくりくるまで何度も試行錯誤を重ねるべきなのだと思う。

元ネタの意図を探る

元ネタをそのまま移植するなという話をした。ではどうすればいいか。元ネタの「意図」に注目するのである。一部ではあるが、紹介をしたい。

例えば、FF14には戦闘の中盤に、配下キャラクターを登場させるボスが数多く存在する。配下がいる限り、ボスが無敵化することも多い。
このようなギミックは、キャラクターの攻撃対象を変更させ、移動を促したり、戦場に一定の緩急を作り出す効果がある。これは、意図をそのままにLHTRPGに持ってきやすいギミックと言えるだろう。適度に移動してもらったほうが、PCは退屈せずに済むからだ。

俗に「タンク強攻撃」と言われる、ヘイトトップのキャラクターを中心とした範囲への攻撃を持つものもいる。FF14内では、この手の攻撃は防御スキルの使用などを促すものだが、LHTRPG側では「いつもの攻撃」と言えるだろう。近接職が位置どりできなくなることを防ぐため、元が小範囲技であっても単体攻撃として扱うなどすると、最も基本的な攻撃技として採用しやすいと思う。無論、追加効果に他の技の効果を抱き合わせるというのも面白い。

また、移動による回避を前提として、範囲攻撃を一定のルールで連打するような攻撃を行う者もいる。LHTRPGにおいては、移動の回数はごく制限されたものになるため、このような技を実装するときは、いわゆる安置とそこに入るべきタイミング、入ることである職だけ攻撃ができなくなってしまうという現象への補償など、LHTRPG側の運用で無理の出ないような工夫が必要となる。特に、シナリオが進むたびにこのような攻撃をするエネミーは多くなるので、エネミーの位置どりも加味して設計をしていきたい。

このように、元ネタがPCをどう動かしたいかという意図を読み取ることで、LHTRPG側ではどうすればいいかを考える材料が得られる。少々難しいことだが、ここがうまく噛み合うと「自然な移植」をすることができるように思う。

TRPG側にもリスペクトを

先にも述べているが、重要な要素に「移植後、それで遊んで楽しいか」がある。この楽しさを担保するのは、元ネタ側ではなく移植後のシステム側の問題だ。
LHTRPGでは戦士職、回復職、武器攻撃職、魔法攻撃職がそれぞれ1名いて、バラバラの射程でバラバラの任務を担当していくのが普通だ。ギミックを重視するあまり、ある担当がゲームを楽しむ余地が損なわれていないかは、都度確認していきたい。特に、私が作るときは射程とラウンドあたりの移動回数が問題となることが多い。

色々と書いたが、両方をリスペクトした移植シナリオは、片方を知るプレイヤーの世界を広げ、両方を知るプレイヤーに幸福を与える。是非、君の知る素敵な世界を、別の世界に再現してみてほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?