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[偵察]を実のあるものにするには

先日、[偵察]タグに関する議論を見かけた。ざっくり言えば、(演出面の話を除けば)データ的に[偵察]をすることで得られるメリットは、実は非常に少ないのではないか、という問題提議だ。
事実、通常は戦闘シーンの直前でエネミーの大まかな姿かたちを知ったとして、その情報を(データ面で)活かす手段がなければ、敢えて[偵察]に取得特技枠を用意するのは特別の事情がなければ不要となるだろう。

では、ディベロッパーサイドとしては、この[偵察]行動にどのような旨味を用意してやれるだろうか。本稿でいくつか提案してみたいと思う。

行動タイミングの増加

LHTRPGでは、《アンカーハウル》や《ハートビートヒーリング》をはじめとして、セットアップ行動が豊富である。メンバーの構成によっては、最初のセットアップ行動に《エネミー識別》や《異常探知》に行動を割くことができないという状況は十分に考えられる。
用心深い冒険者はこれに備えて[速攻]特技を用意することができるが、シナリオサイドからもこの点にフォローが可能だ。例えば以下のようにするとよい。

名称を知る:そのエネミーに対して《エネミー識別》を行ってもよい。難易度は[識別難易度+2]となる。
エンカウントシートを見る:そのエンカウントシート上にいるものとして《異常探知》を行ってもよい。難易度は[探知難易度+2]となる。

ここでは、識別の巻物を意味づけるために判定難易度を上げている。また、戦闘前に情報屋などを出して、判定や購入によって「エネミー」や「地誌」の情報を入手させ、エネミー名称や地名がわかることで自動的に情報を開示するとしても良いだろう。

登場Sqの拡張

プレイヤー側から変更が効きにくい要素の1つに「登場位置」がある。[偵察]に成功することで、複数の地点からPCの登場位置を選べるようにすると、判定に挑むメリットを増やすことができるだろう。
無論、場所が増えればどこでもいいという話ではないので、エネミーの位置や導線をよく読み取って、「少しだけ」有利となる位置を与えよう(例えば奥のエネミーに接敵することができるとか、何らかのプロップを解除できるとか、一部のエネミーの射線から逃れることができる位置だ)。

エネミーのタグに関するあれこれ

エネミー拠点を叩くシーンのブリーフィングでは、エネミーの「見張りのシフト」に着目できる。例えばこうだ。
[偵察]の成功によって、〈小牙竜鬼の詠唱師〉の[魔法攻撃]についている[電撃]を、好きな属性タグに変更することができるようにする。すると、冒険者は有利なエネミーが現れたタイミングで戦闘を開始することができる。同様の発想は[弱点][軽減]にも、属性に限らず武器種別タグにも応用ができる。剣で戦う戦士に[弱点(槍)][軽減(弓)]を持たせて3すくみの関係を作るなど、遊びの領域を盛り込むことで、いろいろな拡張が期待できるだろう。

特殊行動・勝利条件の開放

[偵察]によって単にプロップ(それも探知が不要なもの)の名称や内容が分かったとしても、冒険者はほとんど対応した行動をすることができない。この部分をケアしたければ「応用を思いつく」ような形で何らかの行動や勝利条件を開放するというのはどうだろうか。ルールブックにあるものであれば《呼吸を止める》などがそうだ。[ボス]がついていないがリーダー格である、というようなキャラクターを見分けることで、勝利条件をエネミーの全滅から特定エネミーの戦闘不能に変更するというものもこの例に含まれるだろう。

おわりに

利用が非常に難しい・あるいは「弱い」行動が発生するのは、データを多数備えた形式のゲームである以上、一定は避けられないだろう。しかし、そのデータの使いづらさを規定しているのは「状況」である。ディベロッパーサイドは、この状況を操作可能な立場にいるのだから、「この特技は難しい」と思ったらそうでなくすように考えることができるのだ。
「そうは言ってもそのシナリオの中での話だろう?」と言う人もいるかもしれない。しかし、[偵察]しがいのあるシナリオが増えていけば、あるいは話題になっていけば、おのずと[偵察]もPC作成時の選択肢に入ってくるはずだ。現状を変えたいと願うディベロッパーの方が読者の中に居られるなら、ぜひ、ひと手間を検討いただきたい。


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