見出し画像

ルール作りに参加する


点字ブロックを歩く

点字ブロック探検隊!に参加しました。

点字ブロックは、「止まれ」の警告と、「進め」の誘導を指示する視覚障害のある歩行者向けのユーザーインタフェースです。点字ブロックユーザーはたった2つの原始的な規則に基づいて移動します。

点字ブロック

いわゆる目が見える人は晴眼者と呼ばれています。晴眼者は意図せず誘導ブロック(線状ブロック)で立ち止まることがあります。このような状況は誘導の障害になります。点字ブロックを知らないことでユーザーの行動が妨げられていました。私もそのような晴眼者の一人だったと思います。

恵比寿駅を歩く

点字ブロックに従って、恵比寿駅を歩く際に、下記のミッションが与えられました。

恵比寿JRから地下鉄に乗り換える。

シブヤ大学授業 点字ブロック探検隊!チーム別ミッション

結論、ミッションを達成することはできませんでした。以下、今回の探検の詳細を書きます。

JR恵比寿駅西口のコンコースには、地下鉄日比谷線を案内する表示と並行して誘導(線状)ブロックが敷かれています。

JR恵比寿駅西口

警告(点状)ブロックに着きました。進行方向の傾斜を警告する意図でしょうか。しかし、誘導が無く行き止まりです。来た道を戻ると、エレベーターに向かう別ルートがありました。

傾斜と警告ブロック

別ルートの誘導ブロックに従って進むと、エレベーターおよび階段前の警告ブロックに着きました。階段スロープの上下端に点字があります。下端の点字は、「→ 出口(前 バス・タクシー乗り場
右 東京メトロ日比谷線)」とあります。文頭の矢印は進行方向の上りを意図しているのでしょうか。

エレベータ横階段スロープの点字(上り)

上端の点字は、「← 西口改札」とあります。文末の矢印は進行方向の下りを意図しているのでしょうか。

エレベータ横階段スロープの点字(下り)

日比谷線改札に向かう比較的長い階段のスロープは両サイドに一つずつ計二つあります。上端の点字はいずれも「日比谷線 恵比寿駅」を案内していますが、矢印の位置が異なります。進行方向下り左側のスロープの矢印は文頭に、同右側のスロープの矢印は文末にあります。矢印の位置は上り下り以外の何かを意図しているようです。一方で、人流の交通を整理する矢印が階段の上下に案内されています。これは点字ユーザーに見えません。もしかすると、点字矢印の位置によって、ユーザーに人流の逆流・順流を知らせているのかもしれません。

日比谷線恵比寿駅階段スロープの点字(下り左側)
日比谷線恵比寿駅階段スロープの点字(下り右側)  

また、Low vision(ロービジョン)は、視力が通常よりも低い状態を指します。これは眼鏡やコンタクトレンズで完全には補正できないレベルの視力低下です。多くの場合、ロービジョンの点字ブロックユーザーは点字を識字することができません。従って、階段スロープの点字が読めず、先に進むことができません。

誘導ブロックが自動運転車椅子のレールになり、車椅子がガイドヘルパーとなって点字ブロックユーザーが歩く様子を想像しました。

日比谷線恵比寿駅誘導ブロック案内板

点字が読めないロービジョン点字ブロックユーザーは警告ブロックの目前に誘導ブロック案内板があると分かりません。つまり、音声ガイダンスが必要です。

案内板前の警告ブロック

コード化点字ブロック

既存の点字ブロック上に三角形や円形状のマーカーを付加し、スマホのカメラでスキャンすることによって、周囲の情報を音声でガイドするサービスがあります。いわば、「しゃべる点字ブロック」です。ロービジョンユーザーがゴールを目前に警告ブロックで立ち往生した時に Next step を音声で伝えるこの機能は、ラストワンメートル課題を解決する音声ガイダンスAR(拡張現実)体験と言えるでしょう。警告ブロックの先にある目的地にアクセスするための道案内です。

コード化のためのマーカーを警告ブロックに実装するためには国土交通省の指示に従って地権者の許可を取る必要があるそうです。特定非営利活動法人日本インクルーシブ・クリエーターズ協会(NPO法人 NICA)は、金沢工業大学と協同でコード化展示ブロックの実証実験の企画、普及を推進されています。

ユーザー視点のルール作り

点字ブロックのルール通りに動いても目的地に辿り着けない経験を通じて、ルールを守る人がルール作りに参加する必要があると思いました。その機会はコード化のユースケースの数だけあります。警告の先にある世界を創造する街歩きは探検隊の好奇心をくすぐるでしょう。

万能なテクノロジーはない

そもそも障害者の定義は何でしょうか。ロービジョンの先生は「私は障害者ではない。進もうとする私に向かって障害がやって来る。社会は障害で溢れている。社会の方が障害者だ。」と言われました。擬人化された社会像になんとなく納得感がありました。

先を急ぐ人の流れがバリアフリーの障害になっている事は知られていません。今回、異なる視点で街を歩いて、最低限のレールしか敷かれていない移動の不便がよくわかりました。点字ブロックが施工される段階でユーザーの不便が考慮されていないのかもしれません。

地域共生社会で共に障害を乗り越えるために、「青ですよ。」のさり気ない一言が、一歩を踏み出す安心の起点になる事は万物・万国共通だと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?