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6万円で事業をはじめた話

6万円。これが何の金額かお分かりになるだろうか。僕が最初に事業をはじめたときの、まさに最初の資金である。

僕はコーヒー器具の輸入販売をしている。現在ももっとも人気のある商品が、この6万円で一番最初に輸入した商品だった。事業をはじめようと思ったきっかけはいろいろあったが、趣味の一環として海外からコーヒー器具の輸入をしていたことが、そのうちの大きなひとつだ。

コーヒーの業界に入る前、僕は大学院で英語をやっていたので、個人輸入に際し言葉の壁はあまりなかった。個人で輸入を繰り返すにつれ、まわりのバリスタ仲間から「俺のも一緒に輸入してよ」と声をかけられることが多くなった。もしかしたら、輸入したいけれど、言葉の壁のせいでできていない人が大勢いるのではないかしら。そう思った。

それではと、当時人気のあったコーヒー器具を輸入販売してみることにした。最初は軽い気持ちで、まさかそれが人生を変える大きな転機にになるだなんて考えてもいなかった。ノウハウもなければツテもない状態でのスタート。あったのは、無知だからこその勢いだけだった。「キミのところの器具を、日本で販売したいんだけど」と、とりあえずメーカーにメールをしてみた。するとあっさりと「もちろんだよ」と返事がきた。意外と簡単にいくものだなあと感じたのを覚えている。

とは言え販売用の輸入だ。ある程度数量を仕入れなければいけないだろう。そう思いさらに聞いてみると、「ダンボールひと箱からでいいよ」と。これは今考えると非常にラッキーであった。後でわかったことだが、最低注文量が数十個、価格にして数十万円、なんてメーカーはザラにある。

とりあえずダンボールひと箱分の注文をすることにした。仕入れ価格は約6万円だった。当時安月給のコーヒー屋に勤めており、貯金なんてものはまったくなかった。家内に頭を下げ6万円を借りた。最初の、たった6万円の資金は自分のものですらなかった。

今や数十分で終わる輸入の手続きに、当時は一週間かかった。手間取った手続きのせいで、輸入ができないのではないかと、その一週間本当にドキドキしたのは一生忘れないだろう。やっと届いたひと箱のダンボール。その中に入っていた器具たちは、ほんの数日でそのほとんどが旅立つこととなった。

ノウハウもない、ツテもない、お金もない、そんな状態でも事業ははじめることができる。BATHTUB COFFEEをはじめて2年半、いまだに僕はコーヒー器具の輸入販売を続けている。そしてこれからも、ずっと続けていくのだろう。

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