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焙煎コーヒー豆輸入時の食品届の記入方法

はじめに

海外のロースターから焙煎したコーヒー豆を輸入販売するショップが増えている。弊店も同様で、しばしばイタリアのGardelli Specialty Coffeesをはじめとする海外のコーヒー店から焙煎豆を輸入し販売している(詳細はこちら)。また、個人でも簡単にコーヒー豆の輸入ができる時代になった。個人で消費する分には何も考えなくてよいのだが、これが販売となると話は別である(ここでいう販売とは「不特定又は多数の者に対する販売以外の授与」も含み、輸入した本人が自家消費する場合を除くほとんどの場合のことを指す)。販売を目的としてコーヒー豆を輸入する場合は、食品衛生法第27条に基づき食品等輸入届出書(通称「食品届」)の提出が必須となる。

しかしネット上では情報が非常に少なく、僕が輸入をはじめた時もゼロから手探りだった。とはいえ皆が皆同じ苦労をする必要はない。焙煎したコーヒー豆を輸入することを前提に、実際の書類を見ながら記入事項を解説していくことで、わずかながらでもこれから輸入をする人の助けになればと思っている。


輸入の流れ

まずは大雑把に輸入全体の流れを見ていこう。海外のコーヒー店のウェブサイトでコーヒー豆を注文すると、発送完了後に発送通知のメールが届くのが一般的である。発送通知のメールが届いたら、そこに記載されている運送会社に「通関前に留置をして、食品届に必要な情報を連絡してほしい」と伝えよう。これは、個人輸入扱いで届出なしに通関されてしまうのを防ぐためである(一度届出なしで通関が完了してしまうと、あとから巻き戻って届出をすることはできず、その商品は販売できなくなる)。

購入した商品が日本に到着すると運送会社から連絡が来るため、必要事項を記入した食品届(提出用と控用の2部)と原材料表・製造工程表、インボイスとAWB(いずれも運送会社がメールやFAXで送ってくれる)、切手を貼った返信用封筒を同封の上該当する検疫所の食品監視課宛に送り、申請する。

審査が終わり無事届出が完了すると判が押された控用の届、通称「済証」が送られてくるので、その済証を運送会社に送れば、それをもとに通関手続きを進めてくれる。ここまで来ればあとは輸入が許可されて配達されてくるのを待つだけである。

それでは実際の届出書を見てみよう。個人が販売用に、イギリスのBig Ben Coffee Roastersという架空のコーヒー屋からエチオピア産の豆(250g)「Niguse Gemeda Mude」を5袋輸入するという設定である。


食品届とその内容

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(1)記入不要
(2)個人の場合は個人名を書き、個人の印鑑を押すのが一般的
(3)「一般」に丸
(4)記入不要
(5)ここの「生産国・製造国コード」を参考にコードを記入
(6)記入不要
(7)ここの「製造者(A)コード」を参考にコードを記入。多くの場合は5の「生産国コード+ZZ9999」。併せて、インボイスにあるロースターの名前と住所を記入
(8)ここの「製造者(A)コード」を参考にコードを記入。多くの場合は5の「生産国コード+ZZ9999」。併せて、インボイスにあるロースターの名前と住所を記入
(9)記入不要
(10)記入不要
(11)積込港名とコードを記入
(12)積込年月日を記入
(13)積卸港名とコードを記入
(14)到着年月日を記入
(15)保管倉庫名とコードを記入
(16)搬入年月日を記入
(17)トラッキングナンバーを記入
(18)航空機の便名を記入
(19)届出年月日を記入。郵便で送るのであれば、多くの場合は記入日の翌日か翌々日。(万が一違っていても問題はない)
(20)多くの場合は「無」に丸。運送会社から事故の通知があった場合のみ「有」に丸
(21)記入不要
(22)「食品」に丸
(23)「初回」に丸。(2回目以降全く同じ商品を輸入する場合のみ「継続」となる)
(24)「F840100」と記入
(25)コーヒー豆の商品名を記入
(26)輸入する袋の数量を記入。単位は「PC」と記入
(27)コーヒー豆の総重量を記入(仮に一袋が250gであれば、今回の場合0.25×5袋で1.25kg)
(28)コード: 1、「小売り用」と記入。無償で譲渡・頒布する場合も同様
(29)ここの「包装の種類コード」を参考にコードを記入。多くの場合はKPE/ポリエチレンやKPR/紙。不明な場合はロースターに要確認
(30)記入不要
(31)記入不要
(32)記入不要
(33)記入不要
(34)コード: ECF、「コーヒー豆」と記入
(35)いずれの欄にもNILと記入
(36)コード: Z00、「焙煎→選別→包装」と記入
(37)生豆の原産国を記入

画像赤枠の箇所(11〜18、20)に関しては運送会社が記入情報を連絡をしてくれるので、もらった情報をそのまま記入すればよい。

また、複数の商品を輸入する場合は、それぞれの商品に関して22〜37を記入する。一度の届出で最大7種類まで届け出ることが可能である。


原材料表・製造工程表

また、併せて原材料表・製造工程表も提出する必要がある。下記のようなものである。

成分表サンプル

原材料表・製造工程表は製造者に作成してもらうか、製造者に確認した情報をもとに輸入者が作成する必要がある(上記画像は後者のパターン)。これが大きなハードルの一つかもしれない。


終わりに

あくまでも上記は一例であり、運送会社によってはお金を取って届出を代行してくれるところもあるし(運送会社によってはトラブル防止のため、強制的に有料代行を行う場合もある)、状況や輸入元のコーヒー店、豆によっても記入する事項は変わる場合があることはあらかじめ注意してもらいたい。

また、残念なことに食品監視課の担当者の裁量によって、微妙な記載の仕方や原材料表・製造工程表のフォーマットによる可否が異なるため、上記の通り届出を行っても修正を求められることもあり得る。その場合はいくら担当者に文句を言っても無駄に時間がかかるだけなので、素直に修正をしよう(ちなみに僕は文句を言う)。

それから、コーヒーの生産国によっては検査(数万円の費用がかかる)が必須となったり、デカフェであれば製造方法によっては輸入が禁止されているので、輸入前にはしっかりと事前調査をすることをオススメする。

食品届はあくまでもただの紙ではあるが、輸入品を販売するプロとして、法に基づいた手続きは必ず行わなければならない。いかによいコーヒーであっても安全安心が伴わなければおいしくは飲めないだろう。すべての輸入コーヒーが、安全安心のもとにお客さまに販売されることを願っている。

※なお、万が一上記のように食品届を提出して不利益が生じた場合でも、一切の責任は取りかねますのでその旨予めご了承ください。

参考リンク

食品衛生法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000233

コード一覧
https://bbs.naccscenter.com/naccs/dfw/web/system/code/fains-code.html

東京検疫所食品監視課
https://www.forth.go.jp/keneki/tokyo/kanshi_hp/a001.html

その他参考になりそうなサイト
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144562.html
https://www.acj2002.co.jp/blog/2020/12/21/coffee/#2



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