[#23] これ以上ストレスをためさせないでくれや
ファイルをどこに保存するかとか、どうやって分類するかって、人それぞれ意外に違うものらしい。オレの場合は、一時的に使うファイルはまずデスクトップ上にドカドカと保存しちゃう。よく使うなってわかってきたら、別の場所にフォルダーを作ってちゃんと移しておく。デスクトップにたまっていったファイルは、時機を見てゴミ箱行き。こういうサイクルだ。
基本的にファイルの保存や分類のスタイルは、コンピューターを使っているユーザーが決めることだ。誰かにとやかく言われる筋合いのものではなく、好きに使えばいい。でも、ユーザーがコンピューターをどう使うかにOSの機能が影響してくるのは確かだ。Macなら当たり前の方法が、Windowsでは使いづらかったりするのも、OSの存在が使い方に影響を与える証拠だ。別に強制されているわけではないから、従わなくてもいいんだけど、何となく面倒なのでOSのいうといおりにする。そのほうが楽に使える。
こんなOSの環境に体が慣れていけばいいのだが、どうしてもなじまないときはとても大きな問題になる。使うほどストレスがたまっていく。しまいには、触るのも嫌になる。まぁ、簡単に言うと、オレとOS Xの関係はこんな状況になってしまっているのだ。ともかく、ファイル操作がとてもやりづらい。生産性が極端に落ちているのだ。
OS XのFinderについてはこれまでさんざん文句を言ってきたが、もう一カ所ひどい出来の部分がある。それが 「開く」ダイアログだ。使いにくいと思っていたMac OS 8.5から同9までの「Navigation Services」のほうが、はるかに使いやすかった。
OS Xの「開く」ダイアログでは例えば、最初に開いたときに表示されるフォルダーがアプリケーションによって違っているので、ファイルをどこに保存するかをあらかじめ決めておいても意味がない。だんだん面倒になって、アプリごとにバラバラの場所に保存するようになる。そして、ファイルが管理不能になっていくのだ。
また細かいところでは、最後に開いたファイルを選択していないとか、開くことのできないファイルがリストに並んでいたりする。選ぶことができないのに、表示して何の意味があるのか。「場所」のポップアップメニュを開くとフォルダーの階層が表示されるかと思えば、よく使うフォルダーと最近使ったフォルダーがなぜか並んでいる。何のメリハリもなく。
OS Xは、キーボードによる操作の扱いもとてもいいかげんだ。カラム表示なので、階層は左右の矢印キーでのみ移動できればいいはずなのに、上下の矢印キーをどんどん押していくとなぜか階層をさかのぼってしまう。自分がいる場所は「場所:」ポップアップメニューで把握できる。とはいえ、カラム表示が左右にブンブン動くので自分がいる場所を簡単に見失う。さらに、フォルダーを選んでいるかあるいはファイルを選択しているかによって、セレクションの移動の仕方が違う(泣)。
何より最悪なのが「移動先」というフィールド。使い方は、キーボードからバスを入力して目的のファイルを直接開くというものだ。ま、MS-DOSやUNIXなどでは当たり前に使われている。しかし、Macではこれまで必要とされていなかったし、なぜ導入する必要があるのかもいまいちわからない。まぁ、URLなどの入力でユーザーが多少慣れているという理由はあるだろうし、必要とする人がいるのであれば納得しよう[*1]。
しかし別の問題がある。いままでの「開く」ダイアログでは初めにリストにフォーカスがあったのに、OS X では「移動先」に移っている。このために、「開く」ダイアログを開いまた直後にキーボードからリストの操作ができないのだ。「開く」ダイアログで、このフィールドが最初にフォーカスされなければならない必要が果たしてあるのだろうか?まさか、昔からのMacユーザーはマウスを使うだろうから、キーボードによる操作のフォーカスは「移動先: 」で構わないだろう、という考えなのだろうか?
確かにMacはマウスによるGUIを実現したが、実はキーボードによる操作もインターフェースに非常にうまく取り入れてきた。メニューのキーボードショートカットは一大発明だと思うし、リストでファイル名の最初の数文字を押すと該当するファイルに移動する機能も便利だ。矢印キーの小気味いい動き[*2]も特筆に値するだろう。「フルキーボードアクセス」のようにキーボード操作のさらなる改善が見られるだけに、「開く」ダイアログのいいかげんな作りには本当にがりさせられる。
とまぁ、こんな愚痴ばかりを書いていたらスペースが残り少なくなってしまった。愚痴はもう書かないと言っていて、これだから面目ない。これで終わるのも何なので、ここで宣伝を1つ。先月号の欄外に「Finder を作るぞ、バカヤロー」って書いたら、早速賛同者が現れてくれ、じゃあみんなで作ろうって動きになった。現在MLを立ち上げて、あーだこうだと活発な議論が進行中である。
これは何も、アップルに喧嘩を売ろうとしているわけではなく、プログラマーの余興というか課外活動なのだ。Finderに文句があるけど、口では伝えにくい。だったら手を動かそうぜ、オレらはプログラマーだぜ、ってこと。完成したプロダクトはもちろん、その過程で出来上がっていくパーツもみんなで共有したいと考えている。
この活動は、今後のアプリのためにも重要なことだと思う。何しろFinderといえば、Mac OS 9時代のアプリのお手本とされてきたソフトだ。いままで、Finderを作ろうなどという大それたことは考えもしなかった。こうした機会を与えてくれたジョブズには感謝しなくちゃいけない。うそ(笑)。アッブルはアップルでちゃんとFinderの完成度を上げる努力をしてね。頼むぞ。
バスケ(http://www.kanshin.com/basuke/)シエスタウェア代表取締役
何だ、新しい「iPod」のあの日本語フォントは!見苦しいったらありゃしないぞ!最初からこのフォントならまだしも、ひどくなるっていうのはどういうことなんだ!納得できーん!愛のあるモノづくりをやってくれ!
[*1] 納得しよう - うそ。全然納得なんてしてない。こんなものいらない。
[2] 小気味いい動き - 例えば1行のフィールドで上矢印キーを押すと先頭に行く。下矢印で末尾に行く。こうした細かい配慮は、Windows ではいまだに採用されていない。ちなみに、「MacWrite」もなぜか採用してなかった(笑)。
編集・三村晋一
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