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[#17] Mac OS X 10.1 泣き笑い(泣)

初出: MacPower 2001年 11月号

待望の「Mac OS X 10.1」が発表になった。プレスリリースを見てみると、景気のいい話がいろいろと書いてある。速度の改善とか「Aqua」インターフェースの進化とか、DVDが見られるようになったとか…。うーん、どれもそりゃうれしいんだけど素直に喜べないのは、いまさら遅いよって気持ちが強いからか?Mac OS 9に比べて劣っていた部分がようやく追いついたわけで、グチになっちゃうけど、あー、何で3月の時点でこれを出せなかったのかなぁ。……つて、グチはやめましょう。はい。

「ことえり」の進化はうれしい。Mac OS Xを最初に触ったときに「すずき」を変換してみると、相変わらず魚の「鱸」が第1候補で出たのには脱力した。そんなこともあって、日本語入力プログラムの変換精度の向上はキーボード問題に匹敵するぐらいしつこくアップルに要望してきたことだ。そして、昨年と今年のWWDCではアップルの開発者から「次のことえりには期待してくれ」と言われていたのだ。

初めて「iMac」を買った知人に、ことえり2.0を使わせるのは本当に酷な話だ。ただでさえコンピューターの操作に慣れていないのに、日本語変換でも苦労しなければいけないなんて、教えるほうもイヤになる。コンピューターの使い方といえば日本語変換の仕方と言っていいぐらい、日本語変換を学ぶのには時間がかかる。これまでのことえりは、初心者に無駄な時間を使わせていたのだ。とにもかくにも、ことえりの進化は素直に受け止めよう。もともとインターフェースは悪くないのだから、今後の日本語入力プログラムのいいお手本になることを期待しよう。

先月書いたMac OS X 10.1での「AppleScript」の「SOAP」対応についていろいろと情報を調べてみて、さほど間違っていないことが確認できた。ひと安心だ。それ以外にも、AppleScriptの充実ぶりには目を見張るものがある。「Finder」や「Print Center」、「Terminal」などのシステムの中枢アプリケレーションのスクリプト対応もうれしい。また、スクリプトで操作する機能にとどまらず、Finderのツールバーやメニューバーからスクリプトを呼び出す機能も追加された。AppleScriptを積極的に使わせようという意欲の表れだろう。以前のAppleScriptは、うんああるよ、便利だよ、勝手に使ってねーそんな感じだった。使う環境がこれだけ充実してきたのは初めてだろう。

その集大成が年末に発売される予定の「AppleScript Studio [*1]」だ。これ自体は開発環境なので、ユーザーが直接使うものではないかもしれない。しかしAppleScriptだけで普通のAquaアプリケーションを作れるようになるのだから、ユーザーの視点に立った便利で使いやすいソフトがたくさん登場することが期待できる。格段の進歩なのだ。

AppleScript Studioの登場で、スクリプトの機能とインターフェースを分けることがいままで以上に簡単になると思われる。スクリプト作業のための単機能のソフトをたくさん集めて、1つのアプリケーションを作れる [*2]。楽しみである。発売は年末の予定だそうだ。

さて、いいこともたくさんあるMac OS X 10.1だが、泣きたいくらい残念なニュースもある。ファイルの拡張子を消すオプション[*3] が付いたのだ。Windowsでおなじみの機能だが、これってトラブルの元以外の何物でもない。MacとWindows間のファイルこのやり取りで、何か問題があるときはたいてい拡張子が絡んでいる。普通のWindowsユーザーは拡張子をあまり意識していないので、Macにファイルが送られてくるとトラブることも多い。そりゃ当たり前だ。拡張子が隠されているので、ユーザーは意識のしようがない。そんな状態が初期状態になっているのだから、WindowsはひどいOSと言われても仕方がないと思う。

拡張子の善しあしを語るつもりはない。いや、やっぱ少しだけ書かせて(笑)。拡張子は悪だ。こんなもの、Macでは本来必要がない。なのにUNIX環境をベースにしたインターネットの普及とWindowsの市場支配によって、Macは機能が低いほかの環境に「仕方なく」レベルを合わせているだけなのだ!ファイル名に種類を記述するなど、そんな原始的な仕様に縛られるのは、本来まっぴらゴメンなのである!ふー。

さて、拡張子を隠す話に戻ろう。なぜ隠そうとするかを考えてみると、それは不要なものだということを開発側がちゃんと認識しているからだろう。ユーザーにそんなつまらないことで負担をかけるのはどうだろうか?そんな判断があるのだと思う。一見もっともらしいが、果たして完全に隠せるのか。メールで相手に送ったら、ファイルには拡張子が付いているのではないか?ホームページを作りたいときにはどうするのだ?

ずっと知らない、気づかないのであればいい。しかし気づいてしまうようであれば、ユーザーは物事をちゃんと判断するのに余計な負担を強いられることになる。拡張子はそのいい例だ。あるときまで拡張子の存在を知らないできた。そして、トラブって詳しい人に聞きに行ったら、それは拡張子の問題だと知らされる。でもそんなものいままで付けていなかったし、ほかのファイルにも付いてないよ。初心者は、貴重な時間を費やして学んできたことが無駄になっちゃうような不安な気持ちになるだろう。

オレの考えとしては、多少不便をかけようとも、拡張子を付けるぐらいのことはちゃんとユーザーに学ばせないといけないと思う。隠してとりあえずの不便さを取り除いても、問題の先送りでしかない。いずれバレる。だから拡張子を消すオプションなど使わせずに、教えるべきことはちゃんと教えてそれなりに苦労をしてもらう。それが、いまの未成熱のコンピューターを使ってもらううえでのマナーだと思うのだが……。

バスケ(http://www.saryo.org/basuke/)
シエスタウェア代表取締役。先月お願いしたキーボードの署名は、2500人以上から集まった。大感謝。それと前後して、アップルがついにUSキーボードの販売を開始した。万歳。選択の自由という点ではまだ不満だが、とりあえず署名サイトは終了させてもらった。みなさん、ありがとう!

[*1] AppleScript Studio - 既存の製品では「FaceSpan」がこれに近い。
[*2] 1つのアプリケーションを作れる - 実はこれは、Windowsでいう「ActiveX」と「Visual Basic」の環境とほとんど同じだ。
[*3] ファイルの拡張子を消すオプション - ホント、最初見たときは泣いたぞ。

編集・三村晋一

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