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Apple Payがもたらす通販体験の本当の変化

先日、久々に裏庭のBBQグリルを使っていたら、蓋のネジが取れていることに気がついた。その辺を見渡してみても落ちていないので、気がつかないうちに取れて紛失してしまったようだ。

ネジが外れていても気をつけて使えばとりあえずは問題はない。でもまだ買って1年経ってないし、ネジ外れたまま使うのもくやしいなーと思った。かといっていまさら返品するわけではないので、なんか直せないかなーという気持ちで一応サポートのWebサイトをのぞいてみた。検索窓に機種名と「Screw」というキーワードで検索するとマニュアルとかがヒットする。

ふとその通販サイトでネジのパッケージが検索結果にリストされていることに気がついた。見覚えがある、組み立てたときに使ったパッケージだ。一つ一つのネジではなく本体に付属されているものがそのままセットで売っているようだ。値段をみると$5。国内は送料無料だそうだ。とりあえずカートに入れてみるとすでにチェックアウトボタンが表示されている。すすむとApple Payの選択肢があるから当然それを選ぶ。住所からなにから勝手に入れてくれてすぐに会計は終わった。30秒後にはメールで注文の詳細も届いた。ネジが外れていることに気がついてからここまで10分かかっていない。

問題のネジ

通販の利用はもちろん初めてどころではなく、普段の生活も通販がなければ回らない。便利な自動決済も実に日常茶飯事で、街に出ればApple Payで決済も済ましている。現金はおろか物理カードもほとんど出番はない生活だ。それでも。この修理のためのネジをApple Payでこうも気軽に買えたことには驚きを覚えた。ほんとうのApple Payの可能性を見た気がする。

もし普通のサイトだったら、このネジを買う体験はどうだっただろう。まずネジが普通の商品に並んで売っていることはないだろうから、サポートとのやり取りは避けられないはずだ。そして必要な商品番号を聞き出して、それを手に入れるにはどうしたらいいか、クレジットカード番号を電話で伝えるとか前時代的な方法を強要されたのではないか。「後ろに書いてあるセキュリティコードを教えてー」なんて気軽に言われたことだろう。というか、それでも手に入るなら御の字ではないだろうか、最悪の場合はホームセンターで同じようなネジを探す羽目になったのではないか。Apple Payがスマートとかいうレベルではないのだ。

言いたいのは、Apple Payによってメーカー側もネジを商品として並べておくコストが下がったんだろうということだ。パッケージになっているものだったら倉庫会社に発送までも任せて管理してもらえる。この手の商品なら普通郵便で送れるので送料も固定ですむ。だから並べておくことができるようになったのではないか。

当たり前の話だが、ホームセンターでネジを自分で探すとなるとひとつ$1しないで見つけられるかもしれない。でもそれを探し出すコストはいくらになるだろうか?メーカーから純正でパーツが手に入るなら、しかも$5程度の金額で家まで送ってもらえるならば、そちらを選ぶ方が断然にいい。繰り返すが、問題の認識から注文完了まで10分かかってない世界なのだ。

企業が直接顧客へサービスを提供する、そうした時代のサービスを支えるインフラは、既存のクレジットカードをベースとしたサービスだけでは足りなかったんだろうということがわかる。いろんなカードが使えるようになっても、決済手段が増えても、決済APIサービスがいかに普及しても、それらだけでは足りなかったのだ。配送先情報もサービス側が管理してくれて、企業側への負担を減らしながら必要な情報だけを伝えてくれるような、そんなモダンなサービスが出てくることで企業側も提供できる商品やサービスの種類が増やせたのだろう。Apple PayやGoogle Pay、Amazon Pay、Stripeなどなど。特にデバイスと一体化されたApple PayとGoogle Payは強力な後押しとなっていると感じる。

というわけで、無事ネジは1週間もしないで到着したのだが、なんと外れたネジは最初から組み立てられていたパーツのもので、購入したパーツセットには含まれていないことが判明した。で、そのネジもちゃんとリストアップされていたので再度注文した。やはりどんなに便利でも説明はちゃんと読まないとダメだな、という話であった。

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