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心が決まった日

病院から紹介された療育先へ行った日のことは、正直あまり覚えていません。ただ、情報量が多すぎて、目まぐるしかったことだけは覚えています。

■情報に飲まれた一日

予約時に、「長丁場になるだろうからお弁当を持ってきてください」と言われ、朝早くから準備して向かいました。お話をしてくださったのは、いかにもベテランそうな見た目の、ハキハキと喋る先生でした。

案内されたお部屋には、難聴児とその親御さんたちがワイワイと賑わい、レッスンを受けていました。先生からは、病院でいただいたオージオグラムをもとに、息子の聴力に合わせた補聴器をここで準備できること、購入するまではここの物を貸し出せること、イヤーモールドだけは作らなければならないこと、補聴器をつけ始めたら反応を記録してほしいこと、身の回りのお世話をする時にどのような声かけをしているか台本を書いてきてほしいこと、息子のレッスンを開始する前に親向けのセミナーを複数回受けに来てほしいことなどを説明されました。

難聴児について、右も左もわからない私は、まずは言われた通りにやるしかありませんでした。早速、イヤーモールドの型取りをして、声かけの台本の書き方を教わり、1週間後の予約を取りました。

また、今の息子は言語面が1年遅れていること、追いつくのに早くても2年はかかるであろうこと、親の声かけを意識的に変えないといけないことなども説明されました。

その日、受けに来てほしいと言われていたセミナーがちょうど開催されていたので、受けてから帰りました。

■検索魔になる日々

帰宅してから、また現実が襲ってきました。
あの場にいたお母さんたちは皆、細やかな声かけをしており、会話が途切れることもありませんでした。毎日あんなに喋り続けないといけないの?と不安になりました。

また、いただいた資料には各年齢の平均語彙数が記載されていました。
6歳で約4000語、小学1年生で約5000語、語彙数の多い子で約7000語とありました。息子が小学校に入学するまであと4年、約1400日です。つまり今から毎日1日3語、約7000語を目指すなら1日5語ずつ獲得させねばなりません。現時点で20語もない子にです。2年半経っているのに20語も獲得できていない子にです。

毎日増やし続けるために、あれだけの量を親が話しかけるの?
私にそれができるの?
やるしかないけれど、上手く出来なかった場合、息子はどうなるの?
みんなどうやってるの?
あの場にいた難聴児達はみんな喋っていたけれど、本当に息子もあんな風に喋られるようになるの?
仕事、復帰しようと思っていたけれど、自分の時間をとれる見込みは?

この日までは「難聴だったらどうすれば?」と必死に検索していましたが、この日からは「難聴児の言葉を育てるには何をすれば?」「難聴児の言語発達の仕方は?」というようなことを検索するようになりました。不安で検索せずにはいられません。検索結果に出てくるブログ、論文、なんでも読みました。読むことに集中することで、現実逃避していたのだと思います。

■そして、補聴器デビューの日

1週間経ち、息子が初めて補聴器をつける日がやってきました。

嫌がらずにすんなりとつけ、数秒後に目を大きく開き、にっこりと微笑みました。

それを見て、この子に音は届く、だから全部届けてあげよう、そう心に誓いました。あの瞬間、私は覚悟を決めたのだと思います。

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