見出し画像

マンドリーノ東京13thの曲紹介

毎年恒例(にしたいと思っている)マンドリーノ東京定期演奏会の振り返り曲紹介です。
昨年の10月にマンドリーノ東京の広報担当に加わり(なぜに)、演奏会前には公式SNSに載せる曲紹介を書かせてもらいました。そこではすごく気取った文章を書いて、英訳まで付けました笑 せっかくなのでそれも併せて載せますが、今回の書き下ろし部分はオタキッシュかつふざけたテイストで書いてみます。ちなみに私は2ndマンドリンのパートにいるので、演奏に関してはセカンド贔屓で書くと思います笑

一曲ずつ動画リンクは貼りますが、流しっぱなしにしてまとめて聞きたい方はこちらのプレイリストから!
https://www.youtube.com/watch?v=fVqNUfN9JOE&list=PLPjcxnnyZI2aZs02JLnmDUZnkpmj6EYTk&pp=iAQB

一曲目 丸本大悟 『虹彩』

空にかかる虹の鮮やかさ。薄れるときの儚さ。瞳の色を決める「虹彩」は、目に入る光量の調節をも担う器官。……ときに翳りをおび、ときに懐かしく、美しく響く旋律は、虹と虹彩が持ついくつもの顔を思わせます。
The vividness of a rainbow and the impermanence of its existence. The iris is responsible for eye colours, and it also adjusts the amount of light coming into an eye. Some parts of this song sound dim, and some nostalgic, while beautiful, just like a rainbow and the multifaceted term “iris”.

マンドリーノ東京 X / Instagramより

いきなり長くて難しい曲。緩急がすごいのと、半音が入りがちなのと、伸ばしばっかりだったセカンドに急に16分音符の細かい動きが降って湧いたりもする。
個人的には、序盤の盛り上がりがすっとおさまったところに現れるギターソロがとても綺麗で大好きでした。特にソロ6小節目で高めの音になるところはなんだか過去の何らかの痛みを懐古しているような感じがして切なく、気を抜くと泣きそうだし、序盤のクライマックス(?)で低音パートたちが主旋律を奪っていくのもかっこいい。中盤ですごく加速して大きな音でサビメロディを弾くところは、楽しいのはたしかだけれど、本当に腕がしんどかったです笑

二曲目 青山涼 『彗星のタイムカプセル』

空に走る彗星は、これまで何を見て、これから何を見るのだろう。その光が私たちの目に届くころ、彗星自身は何光年という距離の分だけ歳を重ねています。繰り返される主題が、太陽の周りを回る彗星の姿と重なります。
What has a comet seen so far? And what is it going to see in the future? When we see it shines in the sky, the real-time comet is older than it used to be when it emitted the light because the light has travelled across the universe for light years. The theme repeatedly appears to remind us of the comet going around the sun.

これは実は初公開です(公式SNSでこの曲の紹介をした回には作曲者の言葉が載ってます)

マンドリーノ東京名物といえば青山涼さんの新曲! 初演ってやっぱり嬉しいんですよね。音源が公開されていないところからまずは各自で譜読みをして、さてさて全体で合わせるとどんな曲なんだろうと思いながら練習会場に向かうときのわくわく感といったらありません。
前回の初演曲『雪女伝説』は短調のホラー展開になっていく組曲だったので(いい曲だけど)、今回のこの曲のきらきらした感じは純粋に綺麗だなと沁みました。そんなに音としては難しくない分、なめらかに音をつないでいくための指遣いなどにすごく苦労した記憶。この雰囲気のワルツがあったら絶対に弾きたい。

三曲目 青山涼 『風のステラ』

深い吐息のようなチェロの音色ではじまり、徐々に細かい音がそよぎ、ダイナミックで力強いテーマが吹き抜け……地球の呼吸としての風と、風でもある人間の呼吸。刻々と雲が流れ、表情を変える空が目に浮かびます。
The song begins with a sigh of the mandoloncello, followed by the delicate breeze of glittering tremolo and a strong and dynamic theme. The wind is a breath of the earth, but at the same time, we, humans, are a part of the wind through our breath. You can imagine how clouds flow and how the sky changes its expression.

マンドリーノ東京 X / Instagramより

めっっっちゃくちゃ憧れてた曲なので、今回の曲目が発表されたときはひとりでスマホに向かってにこにこしてました。まずチェロの低いドの伸ばしで始まるというのがイケてる。全体の爽やかさは言わずもがな。ただ憧れ要素の詰まった16分音符はやっぱり難しかった。ここはファーストだけかな、私たちはもっとゆったりしたおいしいところをいただけるのかなと思っていましたが、ちゃんとセカンドも16分担当でした笑
とにかく風が吹き抜けていく感じが印象的で、演奏中に息を止めがちな(そして酸欠になりかける)私でもこの曲のサビだけは大いに息を吸い込みながら演奏しています。

四曲目 久石譲 (青山涼編) 『魔女の宅急便メドレー』

伸びやかなトレモロにはじまり、魔法を感じさせる不思議な音の重なりに、駆け足のピッキングが生き生きと響くメドレー。黒猫ジジを連れ、ほうきに乗って空を飛び回るキキの冒険を思い浮かべながらお楽しみください。
Starting with a relaxed sound of tremolo, the medley proceeds to unfold mysterious harmonies and vigorously trotting pickings. The heroine, Kiki, accompanies a black cat called Jiji and freely flies around the city skies. A lot of adventures lie beyond her...

マンドリーノ東京 X / Instagramより

言わずと知れた「魔女宅」、これがまた曲者。久石譲作品ってとても好きなのですが、できれば聞き専でいたいというのが正直なところです。
何がって、まず私はフラット系の調性が苦手なのに初っ端からフラット系の、結構細かい音符が連発される。音符って細かくなっていくほどぎっしり詰まって見た目が黒っぽくなっていくので、大変ややこしい楽譜に出会うと「真っ黒!」とか言うことがあるのですが、この曲は1ページ目が本当に真っ黒でした。
でも映画音楽だから、入っている曲のジャンルヴァリエーションはすごく豊富。ラテンとダンスが大好きな私としては、タンゴっぽい曲があったのが嬉しいポイントでした。ゴットランド行きたい。

五曲目 末廣健児 『Beyond the Skies』

空はいろいろな表情を見せてくれます。晴れているとき、雨が降っているとき、日が高いとき、星が輝くとき……いくつもの空を越えて行き着く場所と見える景色への憧れが、きらめく音色に乗って眼前に立ち上がります。
The sky is full of expressions. When it’s sunny, rainy, when the sun’s up, and when the starry night falls... What is conveyed in this song is a longing for a place beyond those skies and the view there. Listen closely to glimmering melodies to draw your own view.

マンドリーノ東京 X / Instagramより

私にとって、今回の演奏会で一番の大問題児。曲目アンケートで私も一票を投じた気はするので自業自得でしかないのですが、この独特なリズムと、転調なのか臨時記号なのかもはやわからない曲調の激しい変化、謎に掛け合いになっているがゆえに入るタイミングをすごくすごーく間違えそうな箇所がいくつも、などなど本当に大変な曲でした。でもところどころ顔を出すマンドリンならではのきらきらした高音とか、マンドリンの圧を受けながらめっちゃ頑張ってる低音のかっこよさとか、やっぱりいい曲だなあと。喉元過ぎれば一瞬で熱さを忘れる私。
すごくアグレッシブにみんなで弾いている箇所など、動画で見ると腕がシンクロしていておもしろいのでぜひ。

六曲目 末廣健児 『祈り』

静かに、穏やかに、強く優しいメロディが波のように打ち寄せるこの曲。たしかなものは何ひとつなくても、儚いほど微かな希望しかなくても、その祈りが空に届くようにと見守り続ける、そんなハーモニーに注目です。
Quietly, softly, a gentle and sturdy melody washes on and off over and over again. Even if there is nothing certain, even if there is only a fleeting, faint hope, the harmony sounds as if it assures that their wishes will be granted.

マンドリーノ東京 X / Instagramより

ひとつ前の曲と同じ作曲者とは思えないほど、優しい雰囲気の穏やかな曲です。友達にはちょっとレクイエムっぽい雰囲気を感じたっていう人も何人かいて、聞き手によっては影を感じるのかもしれないけれど、私はどちらかというとノスタルジーというか、いろんな経験を経てすべて包み込んでくれるような芯のある優しさを感じました。
特に超絶技巧とかはない曲だったけれど、問題がひとつ。中盤のほぼ聞こえないくらい小さな音で主題を繰り返す役が、セカンドの下パートという、私がいる少人数集団にジャストで当たってしまったこと。そこは本番音源もちょっと問題ありなので、あんまりしっかり聴かないでください笑

七曲目 武藤理恵 『Smile for your life』

ふと立ち止まり、自分のこれまでを振り返ると、心のなかのスクリーンには大切な思い出や、ずっと温めていた感謝の数々が。一つひとつを懐かしむような旋律をくぐり、晴れやかな空を思わせるラストへと走り抜けます。
When you stop to look back on the days you spent so far, you will see precious memories and gratitude you have wanted to share for a long time. The melody reflects on those emotions to streak toward a bright ending that reminds you of a sunny sky.

マンドリーノ東京 X / Instagramより

みなさんとにかくこの曲だけは聴いてください、ってくらい大好きな曲です。ロッシーニとかワルツ王のほうのシュトラウスとか、チャップリンとかニーノ・ロータとかが好きな人には特におすすめ。全体に華やかで盛りだくさんで、ラストなんてオペラの終わり方そのものです。
こういう曲って弾いていて楽しいから練習も苦ではないのですが、細かいリズムと目まぐるしいほどの音のアップダウンが難しくないわけはありません。でもこの曲に関しては、正直正確さよりも楽しく弾くことに専念するのがいいかなと自分に言い訳。あとラストの加速、腕折れそう笑

アンコール 坂本龍一 (青山涼編) 『戦場のメリークリスマス』

アンコール曲は当日まで秘密だったので、この曲だけは事前に書いた曲紹介がありません。それにしても、坂本龍一さんが亡くなったのが記憶に新しく、しかも「戦場」といって連想してしまう国や地域が残念ながらいくつもあるタイミングでの演奏、なんだかしみじみしながら弾きました。
オリジナルはフラット5つでしたが、この編曲ではフラットもシャープもない一番シンプルなハ長調(長調って呼んでいいのなら)。だからこそ静かな感じも中盤の力強い感じも余韻の寂しい感じも、全部雰囲気が増していたかなとも思います。中盤の迫力ある刻みのリズム、1小節のなかの最後の0.5拍が16分に分割されてアクセントがついているところが好きでした(ニッチすぎる)。

感想

全体的に曲が難しかったのはたしからしく、個人的には3週間ほど海外に行っていて練習ができなかった時期もあったので、なんかもっとできたかな、と不完全燃焼感がなくもない演奏会でした。が、相変わらず周りのみなさんがとっても上手に弾いてくださるから、こうしてYouTubeで俯瞰ならぬ俯聴(?)してみると案外悪くない気もしてきたり。
余談ですが引用形式で載せた事前紹介文のこだわりポイントを2つほど。1つには、Twitter(じゃなくていまはXだった)にハッシュタグなども含めて載せられるように、すべて100字を超えないように書いたこと。もう1つは、今回の演奏会チラシの背景が青空だったから、すべての曲紹介に「空」という言葉を入れたこと。これ、誰か気づいてくれてるのかな笑 アンソニー・ドーアの風景描写や比喩が好きすぎて、そのノリがうつった文章になっているかもしれないです。

次回はどんな曲を演奏することになるのか、とても楽しみ。卒論と院試のためしばらくサボっていますが、晴れて(くもりでも雨でも)すべてが終わったらまた練習を頑張りたいと思います。
駄文長文、お付き合いありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?