映画『ルックバック』感想 大切なたった一つの言葉

創作とは、基本的に孤独な作業だ。
この『ルックバック』においても、創作者の常に背中ばかりが映し出される。机に黙々と向かい、誰と話すでもなく無限に作品を描き続ける。

もちろん、みんなと一緒に書くこともあるだろうし、それを誰かに見せることもあるだろう。
しかし、創作時間の大半は、孤独なのである。
物理的に仮に誰かがいたとしても、その人が私の作品の出来を保証してくれると限らない。私の作品を買ってくれるとも。読んでくれるとも限らない。
今こうして書いているnoteも、誰も読んでくれないかもしれない。
あるいは、読んだところで何も心が動くことなく、記憶に残らず消え去るかもしれない。

全ての創作は、どこまで言っても自分がどうなるかわからない宇宙に放り出されていて、左右どころか、上下も、星も、地上も、何がどこにあるのかはさっぱりわからない。

そういう時の救いは、一つの丁寧な感想や、熱心なファンなのだ。
いいねが100ついたとか、リツイートが500来たとか、もちろんそれも大事かもしれないが、それよりももっと、そっちの方が光輝いている。

『創作は孤独に耐えられねばやっていけない』、『一人でやっていても楽しくなければ続かない』、うん、そういう言葉、よくわかる。確かにわかる。それでも、完全なる孤独に、人は耐えられない。

それを支えるのが、目の前のファンの言葉で。
それが凄く染みる映画だったなあと思った。
もちろんこの映画が言いたいことはたくさんあると思うのだけれども、個人的には、作ること、その孤独さ、そしてその喜び、源泉、そういうことを描いた作品だと思う。

もちろんたくさん認められるのも大事かもしれない。
クラスのみんなに褒められたとか、たくさんの人が読んでくれた、買ってくれた、入賞した。
けれども個人的には、一人の根強いファンがいてくれるだけで、支えになる。
そのファンが、何かを背負う必要はない。
別に実力も要らない、批評の知識も要らない、何も要らない。
ただ、ファンが一人いてくれている、それだけで支えになる。

自分も小説を書く。
小説は絵や漫画より、さらに孤独な作業だと思っている。
サッとその場で見てすぐコメントを返すと言うことができないからだ。
必ずしっかり読み込んで、時間をかけないと感想が返せない。

だから、感想が一つもついていない、わからない作品はごまんとある。

そんな中でくれた大切な感想たちは、自分の中にしっかり残っている。
誰が言ってくれたか、どういうことを言ってくれたか、読者が思っている以上にしっかり残っている。

そういうことを思い起こす作品だった。
創作者は、色々刺さるところがあると思うので是非見てね。

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