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BasicChannelについての備忘録 / BC-09:1994年: Phylyps Trak II 1: Phylyps Trak II/I 2: Phylyps Trak II/II

トラック1は、その名の通りPhylyps Trak のバージョンIIの音なんだねーで、素直に受け止められる。トラック1については、これだけで終わりw (ごめんなぁー、人生は有限だから大切なことに時間使わしてもらうよ!)

今回の肝は、トラック2である。
このトラックは、かなり特殊な特長を有している。
おそらく多くのDJたちがプレイしていると思う。
(つまりは、前段で出てきたトラックを使える、使えないで聴いているアホもきっとこれは使えると言いやがるだろう)

自分たちの音への追求にふっ切りまくっているトラックだと言える。
このトラックは一聴するともの凄くシンプルなトラックだが、そのシンプルさが究極的に極められていて、それ故に汎用性の高いトラックに仕上がっていて、それがかの日本を代表するDJの1人である田中フミヤ氏も「いつもレコードバックに入れているレコードの1つだ」とインタビューで語っていた理由だろう。

simple is the best! とは良く聞く名言だか、言うは易く行うは難しの名言もまた良く聞く名言であって、ボブ・ディラン氏に多大な影響を与えた、アメリカのフォークシンガー:ウッディー・ガスリー様曰く、

「どんな愚か者でも複雑な物は作れるけれど、非凡な才能が無ければ、シンプルなものは生み出せない」

このトラックを聴く度によくこの言葉を思い出す。
当時、BasicChannelに夢中になったばかりで、まだまだ黎明期だったインターネットでその情報を漁っていた時に、もう20年近く前のことなので、そのサイト名は失念したが(と言うかブックマークしてたiMacがおしゃかになって、分からなくなった、もし知ってる人いたらコメント貰えると超が5億個つくくらい嬉しいでっす!)、私よりも遥かに鋭い考察でBasicChannelのリリースをレビューしていたサイトがあった。

その方が指摘していたのが、

「BasicChannelとは、ジャマイカのサウンドエンジニア、キング・タビー氏が産んだdubをテクノでやろうとしているレーベル」
だといったようなことを指摘していた。

正直その頃は、まだ音楽の体系知識が乏しかったので、キング・タビー?誰?ってなって、その当時はまだGoogle先生もいなかった、確かYahooやinfoseekくらいしかなかった。Wikiなんてシステムもまだなかった。書籍やら調べて、dubの成り立ちやキング・タビー御大の偉大さを知り、そしてその音を聴いて、その方の指摘にもの凄く納得した。そう思わせるような音色が特に顕著なのが、このトラック2なのです。
事実、そのサイト主の方は、モーリッツ御大の来日当時のDJを聴いていて、予想通りジャマイカのdubをDJで流していて、確信したと述べており、洞察力のある方だなぁと本当に感心したのを今でも覚えている。
ただ、ここで言うdubは、少々細かいところまで突き詰めるとキング・タビー氏のdubのリリースの内でも、いわゆるヴァージョン(version)と呼ばれるトラックのdubの音を指すと思われる。
(レコードで言う、B面のトラック)
これは、わかりやすく言えば、その字面通りに別ヴァージョンのトラックってこと。テクノやエレクトロニックミュージックのジャンルで言うところのremixヴァージョンみたいなもの。
但し、そのヴァージョンの違いがとてつもなくヤベェ音色を放ってた。寧ろそのヴァージョンのトラックを聴くのを楽しみにするファンが出るほどに。このBasicChannelのお二人もこのヴァージョンにゾッコンだったのだろう。調べると分かりますが、ヴァージョンの音はマッドサイエンティストが狂気の実験するがごとく凄まじいほどにエコーやリバーブ、ディレイ等のエフェクト処理が施された音になっている。
そう、今までのBasicChannelの音を聴いていると分かると思いますが、このマッドなエフェクト処理の影響をモロに受けている。
そしてさらにこのお二方は、デトロイトテクノも愛している。
この一見共通点が無さそうな二つのジャンルだけども、ある点で共通していると考えている。

それは「エレクトロニックによるエモい音」だ。

デトロイトテクノというのは、個人的にはテクノという非人間的なコンピュータによる音楽というイメージの強い音に対して、そのイメージを覆すような人間の情熱を付加させることに成功した音楽だと思っている。今風に言えば、エモい音。(その昔、西洋音楽のガッチガッチの奏法へ自由な感覚を融合しJAZZという音楽を人種混合で生み出したように、エレクトロニックミュージックにおいて、同じような革新性のある融合を成したのがデトロイトテクノだと私は考えている)
ジャマイカンdubもまた音を聴けば、分かると思いますが、これまた超絶にエモい!そのエモい音に絶妙なエフェクト処理施し、さらにエモさと音の面白みを加味することに成功している。

そして、このお二方は、この2つを天才的なセンスで融合させてdub technoという新たなジャンルを生み出すに至った理由である。
その集大成的な音として結実したのが、このトラック2のPhylyps Trak II/IIだと私は思っている。
ただ不思議なことに、これらエモい2つの音の影響を合わせたお二方から放たれる音色は、エモさは感じ難い音色になっている、寧ろその対極にあるような雰囲気の音とも言えるほど、クールな音色に感じると思う。
しかし前にも書いた通り、よく深海サウンドと称されるベーチャンの寒いほどにクールでドープな音世界に引き込むようなその音色の裏には、とてつもないエモさが隠されてると私は感じる。またその音色には独特の色気を醸すエロさも強く感じる。(いつもは超クールでもの静かな雰囲気の人が、ひとたびエロの話になるとマシンガントークになるみたいな、そのクールさはエロさ故にと言う)

このトラックは汎用性が高いと言ったが、正直なところリスニング向きかと言うと、うーん、難度が高いトラックだ。私みたいなベーチャン狂いなら、いくらでも聴けるのだか、これを単体で誰かに聴かせるかと言うと、やや思い留まるし、一定の条件が要求される。
しかし、このトラックの汎用性はDJ的にはめっちゃくちゃ高い。(だからDJやってますって若者がいたら、変なおじさんと思われようが猛烈にオススメトークする)
どんなトラックであれ、そのトラック毎の音色や雰囲気があり、DJする時にはそれを基に次にミックスするトラックをセレクトしていく、例えば、テクノトラックの次に民謡をミックスするDJはまず居ないでしょう。(まぁ、ミックスの仕方によっては、ありだけどさw)
そういう意味では、私はこのトラックはカメレオン的なトラックだと捉えている。エレクトロニックなトラックであれば、どんなトラックにもミックスできると言っても過言ではないと思う。BPMめっち下げれば、下手すると民謡にもミックスできんじゃないかと変態なミックス発想してるw
とにかく次に何をミックスするか迷った時には、これミックスしとくみたいな、DJにとって非常に有用性が高く、かつミックスした時にはその色を絶妙な塩梅で主張してくれる、なんとも素晴らしいことこの上ないトラックなのです♫
これ書くために何度もこのトラックを聴いてるが、DJしたくてウズウズしてしまう。2枚のレコード使って、これを1拍ずらしてミックスして遊んだことがあるがw とんでもないことになるw ベーチャンファンなら誰しもやったと思うw 
 田中フミヤさんがこのレコードを使った時のDJミックスがCDで聴けます。DJ MIX 1/2[MIX.SOUND.SPACE] - Fumiya Tanaka
これまた最高にカッコええ、このトラックの特長を上手く活かしたミックス、絶妙なタイミングでこのトラックのミックスを抜き差ししているのが、大迫半端ない😍 さらに次にミックスされる音の選択も絶妙な音色合わせで、テクノ番長のDJミックスの真髄を味わえるのではないでしょうか?

どこに着地点を置こうか分からなくなってしまったw
BasicChannelとはなんぞや?と言う方は、マストでこのトラックを聴くべきだと断言できる、それだけ重要なトラックであり、エレクトロニックミュージックの歴史上でも最重要トラックとなり得るトラックだと個人的に思っています。 このトラックの素晴らしさ、重要度が伝われば幸甚です。
DJをやっていて、まだこのレコードを持っていない、聴いたことがないという方、ぜひ今度のレコード購入リストに追加して頂けると嬉しい、そしてどんどん良い音の連鎖を広げていって欲しい。
Basic Channel: Phylyps Trak II

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