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チューバ現代曲レパートリーその2:木下正道

はじめに

チューバ現代曲レパートリー第2弾は、木下正道(きのした・まさみち)さん(1969-)です。

木下さんとはおおよそ15年来のお付き合いになるかと思いますが、演奏会場でやたら服の色合いが被ることが多く、またメガネ、ハゲという共通の記号からか、「木下さんがチューバを吹いている」と勘違いされている方もいらっしゃると聞きます。違います。元々1人だったのですが、ある時を境に善と悪に(略

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木下正道のチューバ関連作品

 私にとっての木下作品の魅力は、「ダイナミズムと繊細さを併せ持つフラクタル的音楽」です。曲全体の構造をみても、或いは細部を覗いても、一見(一聴)相反するダイナミズムと繊細さ(静謐感)がそこには同居しています。
それでは、年代順に作品を紹介していきます。

1. 灰の上の眠り IV (2006)

 この曲が私と木下作品の最初の出会いだったと記憶しています。打楽器の山本昌子さんのリサイタルのプログラムで演奏された、チューバと打楽器の作品。演奏時間は13分。チューバは池田幸広さんでした。

2. 双子素数 I -a(2011)

低音デュオ(松平敬、橋本晋哉)で委嘱。初演は懐かしい門前仲町の門仲天井ホール。こちらは低音デュオの2枚目のアルバムに収録、Apple Musicでも視聴可能です。

3. 昼の中の眠りの群島 V (2011)

 フルート、チューバ、ピアノのトリオ。ウストヴォーリスカヤの《コンポジション第1番》(ピッコロ、チューバ、ピアノ)と同じ編成でできることを念頭に委嘱しました。演奏時間は15分。委嘱は「秋吉台の夏2011」初演は同年8月に秋吉台国際芸術村ホールで、村上景子(フルート)、橋本晋哉(チューバ)、大宅裕(ピアノ)。

4. 双子素数 I-b (2012)

 前述の《双子素数I-a》に連続する作品として加筆されたもの。I-a、I-bをそれぞれ単体として演奏することも可能。ここでは単体で演奏されたものをリンク。

初演は2013年3月、杉並公会堂小ホール「低音デュオ第5回演奏会」。I-a、I-bを通しで演奏すると25分の大曲となり、あまり再演する機会がなかったのですが、21年6月23日の木下さんの個展で久々に両曲を演奏します。

5.  crypte XIII (2013)

 チューバ独奏の作品。とある事情で委嘱ー作曲ー初演の期間がとても短かった記憶があります。2013年8月秋吉台国際芸術村で初演。リンクは初演時の演奏(youtubeリンクですが音声のみ)。

6. 眠ること,鳥が滑空するように VII (2014)

  リコーダー、チューバ、ギターという非常に珍しい編成のトリオ。鈴木俊哉(リコーダー)、橋本晋哉(チューバ)、山田岳(ギター)によって初演。演奏時間は17分。

7. plants of no nation II (2015)

 短い曲でも10分を超えることが普通な木下作品ですが、この曲は2分の小曲。秋吉台の現代音楽セミナーで行われていた自作指揮の講座のために書かれた作品。橋本晋哉(チューバ)、山根孝司(クラリネット)、安田貴裕(ヴァイオリン)、般若佳子(ヴィオラ)、山澤慧(チェロ)、中山敬子(ピアノ)の六重奏。

8. 真実における灰 VI (2016)

 チューバとヴィオラの二重奏による作品。演奏時間は17分。「コンサートシリーズ《PETETOK》第7回定期公演 」で初演されました。演奏は安田貴裕(ヴィオラ)、橋本晋哉(チューバ)。

まとめ

 以上、木下正道さんのチューバ関連のソロ曲、アンサンブル曲計8曲をご紹介しました。木下さんには来年予定しているリサイタルでチューバとピアノのデュオをお願いしていて、今から楽しみです。

 ここでチューバの独奏曲や室内楽曲を知った作曲家の皆さん、もしこの楽器に興味を持たれたら大変嬉しく思います。奏法や演奏でご相談に乗れることもあるかと思います。お気軽にメールください。shinya.hashimoto@gmail.com 

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