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【讀み・1】論考。

〈花に月庭木ばかりの曇りかな 井月〉

うーんと唸らせるテクの作品である。何故"テクの"なのか。山櫻を狩りに山麓へ吟行する。そして結果としての何句か。さう云ふものとはレヴェルが違ふ。櫻に月影が差す、それを樂しんでゐる。が、別に曇り空の山に分け入るでなく、庭の植ゑ木で充分だ。縁に寝そべり氣持ちだけだつたら、何処にでも背景設定できるではないか!吉野や熊野での群生(安吾が悩まされた例の笑)を想像しても良いし、崖から飛び出た岩鼻に一本、孤絶的に咲くそいつでも…現前せしめるのだ。井月さん、素直な詠ぶりを、何て飛んでもない、やはりMr.Okkaku!! ビューティホー極まりない一句。こんなのがごろごろしてゐるのが、まさに井月ワールド。何回か続けさせて貰ふが、一発め(井月さんは子をなさなかつた)はコレ。落ち着き払つた中に自然との交感が、あつたな。ぢやオマケに、

〈今朝も高津のサイジロ先生センセ句には花 くにを〉

有能有り余る助手には編纂責任者・下島空谷も大いに助けられた筈。山頭火は句碑建立の際まづ才次郎に頭を下げるべきだつたね。

©都築郷士


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