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僕がテクノを作る理由(暫定)


DISCLAIMER
本投稿ではハウスミュージックとの比較が多いですが、これはハウスミュージックに対する批判では一切なく、近しいルーツを持つ双方の比較としてわかりやすいことと、自分がどちらのジャンルも心から好きで比較していることを前提としています。
それに加え、これらの記述の中にはハウスやテクノの全盛期を生きていない自分が自分なりに調べたり聞いて感じたことを根拠に書いているものがあります。
それを理解いただければ幸いです。


自分はBashという名義でテクノミュージックを作っている。(現在世に出ている自分の曲はほとんどインダストリアルテクノだが)
ここでは長々と自分の音楽ルーツを書くつもりはないが、なぜこんな音楽を作ろうと思ったのだろうか。

おそらく最初のテクノとの邂逅はPSの攻殻のサントラだろう

1曲目からストイックな反復するリズムが、当時の自分には斬新に感じられたと同時に、日本人の名前が載っていることに驚いたのを覚えている。
これとは違う動画だがコメント欄に「This is Techno!」と載っていたのを見て「あ~これがテクノね」って。

新しいジャンルに触れると、そのルーツを調べることがジャンルを知るには一番いい。そうすれば変な勘違いをしなくて済む。
「ふむふむハウスと同じ80年代のアメリカ発祥なのか それも有名な日本人もいるんだな 電気グルーヴもテクノなのか」みたいな感じでどんどん調べ、音源を聞き、どっぷりとテクノ沼のようなものにハマっていったのを覚えている。当時の同級生にテクノを布教しようとしたこともあった。

そんなある日Wikipediaにこんな記事を見つけた。
以下Derrick mayの記事から抜粋

「自身の曲は、シカゴ・ハウスへも大きな影響を与えている。なお、ホアン・アトキンスが当時シカゴでDJをしていたフランキー・ナックルズにローランド・TR-909を売ったのがシカゴ・ハウス誕生のきっかけの一つと言われているが、909の売却にはデリック・メイは反対したと言われる。」

この記述の真偽はともかく、ハウスとテクノがほぼ隣人のような関係であったことはどうも共通認識らしい。

僕はテクノを聞くようになった時から今日まで、機材やルーツ、ジャンルの音楽的な相違を含めここまで近しいジャンルがなぜ、ここまでの客層の違いを生み出したのかを考えている。これは最終的に自分がなぜテクノを作るのか、という表題への答えとなることはわかってくれるだろう。

ハウスをルーツまで聞きこむようになったのはテクノよりは少しだけ後だ。シカゴハウスのストイックな感じやピアノとボーカルの混ざったソウルフル、そして僕の一番好きなDetroit Deepなどハウスはテクノに劣らないほど様々な顔があるということを知れたのは、本当に音源集めしててよかった~と思えるたくさんの理由の一つだろう。

ハウスとテクノ、双方を聞きこむにつれて、様々なオーディエンスの意見も見ることが多くなった。ユーチューブのコメント欄やDiscogsのレビュー欄なんかがそうだろう。その中でも一番僕が好きな言葉が;
「House is the feeling, and Techno is the landscape」である。

正直言ってこの言葉を解説すること自体が無粋と感じるので、具体的なことは省略するが、ハウスミュージックが感情を表現する(愛、悲しみ、喜び)のに対してテクノは情景や第三者的な視点(未来、社会、風景)を題材にしたものが多い、という意味の言葉だ。

これこそが自分がテクノという音楽に傾いてしまう理由なのだとその時思った。
テクノは聞くものすべてを一つの風景として感じるジャンルであり、これがあの陶酔感や没入感の根源なのだ。
音楽的にもハウスがファンクへの回帰的なベクトルを持つのに対して、テクノはファンクのグルーヴ感をテクノロジーを通して未来へ進むようなベクトル持っているように感じる。
自分はテクノロジーが好きだ。ピアノよりもシンセが好き。コンサートよりもクラブが好き。対面講義よりも在宅講義のほうが好きだ。

おそらくレイヴにあこがれる僕と同世代のアーティストもテクノとは言わずともこの没入感への慕情を無意識/意識的に理解しているに違いない。

頭文でも述べたがこれは一切僕がハウスを嫌っているという意味ではない。
人と気持ちを共有するうえで 音楽ほど効果的なものはない。ハウスミュージックはその点でこの世で最も完成された音楽の形態の一つだと本気で思っているし、この比較を通してハウスミュージックが劣る点など一つもない。(その逆も同様)

正直、自分でもどっちも好きだからどっちも作りたいときは作るのだが、もっとメタなレベルでテクノを選んでしまうことが多い。(機材が好き 激しいのが好き 的な)

もちろんこれだけが答えではないだろう。自分が好きなジャンルはほかにも山ほどあるし、テクノやハウスと同等に聞きこんでいるものもある。正直ここまで書いて結論に困るのはよろしくないのだが、その方がいい気がする。

以上

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