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【夢から醒めて】#3「一夜明けて」

あの後、看護師さんに助け起こされ、支えられながらベットに戻った。
・・・なんで足に力が入らないんだ?
その事だけを頭の中でぐるぐる考えているうちに、意識がなくなった。

うっすら開いた目に光が入ってくる。外は明るい。
理由がわからず抜いてしまった右腕の点滴はまた刺されており、感覚は相変わらずなかった。
まだもやもやと重たい頭にはっきりしない視界。真ん中の2・3センチは割と見えるんだけど、それ以外はボヤけてるなぁ。寝起きってこんなに見えなかったっけ?

そんな寝起きの頭でもわかるのはここは病院なんだろうな、という事。まだ自分がどうしてこんな所に居るのかわからない。右手が動かない理由はわからないけど、そういえば前にもこんな事あった気がする・・・
しかし、頭に霧がかかっている今はそれを思い出す事ができず、ただただうすぼんやりとした時間の中にいる感じが続いていく。

「失礼しまーす」
看護師さんの声。
なんだか少し遠くから聞こえる感じがするな。
カーテンを開け、女性の看護師さんが入ってくる。一番上にノートパソコンが乗せられていて、下の段には簡単な医療用品やら尿瓶やらが揃えられている小さな台車と一緒に。
・・・ノートパソコン?大丈夫なのかな。ここ、病院でしょ。パソコンなんて電磁波飛ぶんだから、医療機器に問題出たりするんじゃないかな。

自分の知識にはなかった事なので、まるで違う世界にいる感じがする。
「気分はどうですか?」
「あー、なんだかボケーっとしてます」「ず〜っと寝てましたからね。仕方ないですよ」
ず〜っと寝てた?
確かに永い夢は見ていたけど、自分家で寝てて起きたらここだったんですけど。
「じゃあお熱測りましょうか」
看護師さんに体温計を差し出される。が、うまく腕が上がらない。
「あ〜、ちょっと失礼しますね」
左脇に体温計を入れてもらう。
そして、指に大きなクリップみたいな物をつけられる。何かを測る電子器具らしい。
どちらもピッっと計測し終えたのを確認し、その数値をチェックしてノートパソコンに打ち込んた。

ベッドの頭の上の方、壁側にあるパネルからコードの付いている何かを伸ばし、寝ている布団の上に置かれた。「じゃあ、トイレとか何かあったらコレ押してくださいね。失礼しま〜す」
・・・あ、コレ、ナースコールか。
シャッ・・・「失礼しま〜す」シャッ
看護師さんは隣のベッドの方に行ったみたいだ・・・

横になっているまままた天井を見つめ、起きているような寝ているような、霧がかかったかのような脳内で何かを考えているか、何も考えていないかのような感覚で、ただただ時間の流れに揺蕩うように過ごしていた。

・・・あ〜、なんなんだろ。コレ。

起きて時間が経ってもはっきりしない頭。
寝起きのだるさが延々と取れない身体。
2センチぐらいしか綺麗に見えない視界。
扉一枚隔てた所から聞こえてくるような音。
なんでだろ・・・
・・・
・・・あ、そうか。
これはまだ夢の中か。

#4「まだ、夢の中」へ

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