【人生】訃報を聞いて

朝、家を出る時に父から聞かされる。
父の友人で昔馴染みの方だった。名前の通り神の下へ還ったそう。

小さい頃から可愛がってもらっていて、大きくなってから芝居をしていると言うと「新藤兼人監督の作品は観ろ」と熱く語ってくれた。

「嫁が両親の介護で北海道に帰った。一人はなんだか寂し過ぎて耐えられない」
うちの父との話の中でそんな事を言ったそうで、流れの中でうちに住む事になる。部屋は家を出た妹の部屋を使う事に。

父、母、次男(あたい)、おじさん。
あたいが一人暮らし始めるまで、なんだか面白い組み合わせの生活を2年ぐらいしていた。
おじさんも仕事があるし、お酒好きで一人飲みもする方だったから、毎日のように顔を合わせることもなかったけど。

夕食時に顔を合わせた時は板橋家になかった角度からの話をしてくれたので、面白かったし、あたいがランニングを始めた遠因はこのおじさんとの話からだ。
マラソン大会で地方に遊びに行くのも楽しかったと言っていたなぁ。あたいがランニングを始めた時には心臓を痛めていたので走ってはいなかったけど。

そんなおかしな四人の生活は面白かった。右腕の事も変に気を遣われる事もなく気楽だったし、たまに実家に帰った時も良い時間を過ごさせてもらっていた。

・・・

「自分も北海道に帰る事にする」
コロナ禍になり、実家に戻る事を決めた時にはおじさんは居なくなっていた。
若干の寂しさはあるけど、仕事に区切りがつく歳になり、奥さんと暮らす方がいいだろうし。
電話でも「走りに来いよ。北海道で走るのはいいぞー!」なんて言ってくれてたっけ。

そして日々の生活を繰り返す中で、認知症になったと聞いた。
それも一番最悪のレビー小体型に。

レビー小体型認知症はあたいが知ってる
・アルツハイマー型認知症
(昔から言われているボケっやつ)
・血管性認知症
(脳の血管が切れて脳機能が低下)
・レビー小体型認知症
(幻覚が見えてしまう)
の三つの中でも最悪のやつ。
(調べたらもう一つ前頭側頭葉変性症っていう、若い世代でもなってしまうのもあるそうで)

去年やった芝居の科白でもあったけど、レビー小体型のは幻覚が見えるから現実との境目がつかなくなる。だから周りからは突飛もない言動をしたり、奇行に走ったりしてしまう・・・本人は「認知症にはなりたくない」って言っていたのに、一番エグいやつなんてなぁ・・・

そのうち北海道に会いに行くって言ってたのに、このコロナ禍だ。
入院している方、ましてやレビー小体型認知症じゃ会えたとしてもあたいの事が分かるのかどうか・・・

正直、以前の元気で飄々としている様で芯が熱いおじさんはもういない。
でも顔ぐらいは見たかった。
面白い方が亡くなってしまいましたよ。あっちでもみんなの為に戦うのかしら? なんてね。
とにもかくにもゆっくりしてください、と。


・・・こうして思い出を振り返る事で、その方の供養ななるのかもしれない。少なくともあたいの中では一区切りつけられるんじゃないかと思う。

でも・・・自己満足の為っていうのは否定できないけど、それでも顔ぐらいは見たかったよ、神下さん。

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