ファームの投手と年齢の影響

セイバーメトリクスでは年齢が成績に与える影響というものが調べられています。例えばNPBの投手について調べた研究(注1)では防御率ベースで19歳から21歳までは能力向上の傾向が見られるものの、残りの期間はほとんどすべて下落する(22歳以降は歳をとればとるほど失点しやすくなる)という結果が出ており投手は若ければ若い方がいい、という結果になっています。
私は一部の即戦力選手を除けば大卒(23歳)でプロ入りした投手は1年目からは一軍で通用せず数年ファームで鍛えてから一軍に上がり戦力になる、というイメージがあったのでこの結果は驚きでした。

しかしもし22歳から衰えが始まるなら大卒や社会人出の投手は1年目から一軍で活躍しないと平均的にはみな戦力になることなくそして一軍にほとんど上がることなく引退するのでしょうか。数年間ファームで鍛えて成績が上がり一軍に昇格することは珍しいのでしょうか。疑問に思ったのでファームでの投手の年齢曲線を調べることにしました。

調べ方としてはある年齢を対象にした場合、その年齢の選手のある年齢時点と次の年の成績、投球回(K%、BB%、HR%の場合は打席数)を調べ、二つの年の投球回(打席数)で少ない方で重みづけをして加重平均し成績の変化率を見る、という方法です。
対象は2005-2019年のNPBのファームの投手です。

Aging Curve 検証方法

上記の方法で調べた結果を見ていきます。
まずはFIPです。FIPとは守備から独立した投球の事で投手の責任範囲内でどれだけ失点を抑止したかを表す指標です。詳しくは1.02のFIPの解説ページをご覧ください。

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一軍とは大きく異なる結果になっています。FIPは一軍のように22歳をピークとすることなく下がり続け29歳でピークを迎えます。

続いて項目ごとの結果を見ていきます。

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K%(三振率)は上昇した方が、BB%(与四球率)とHR%(被本塁打率)は減少した方が良いということを表しています。それぞれのピークは29歳、25歳、35歳です。


まとめ
・FIPは徐々に減少していき29歳でピークを迎える。
・三振率は徐々に上昇していき29歳でピークを迎える。
・四球率は25歳まで徐々に減少し25歳でピークを迎える。
・被本塁打率は35歳でピークを迎える。(被本塁打を抑えられる)

なぜ今回の検証では一軍での検証と大きく異なる結果が出たかについてはわかりません。
一軍とファームでは環境に違いがあるのでしょうか。
また検証方法などに問題があるようでしたらご指摘ください。

(注1)プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート1(水曜社)の年齢の変化と成績の関係 より

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