打者の三振率は気にしなくて良いが投手の三振率は気にした方が良さそう、という話

打者の三振率と投手の三振率は意味が異なる?

セイバリストであるtangotigerが以下のようなツイートをしていました。

画像は投手と打者の三振を除いたwOBAとK%(三振率)についての散布図です。wOBAとは得点創出を表す指標であり高いほど得点を生み出す(打者は高い方が良いが投手にとっては低い方が良い)ことを表す指標です。

説明にもあるように打者は三振率が高い場合、三振でない場合のパフォーマンス(wOBAの値)とバランスがとれています。打者は三振が多くとも他の面で優れていることがある、ということです。言い換えれば打者は全体的なパフォーマンス(例えばwOBAやwRC+)さえ良ければ三振率が高いことを気にする必要はあまりないとも言えます。

一方で投手は三振率と三振でない場合のパフォーマンス(wOBAの値)と関係が見られません。投手は三振が少ないからと言っても他の面で優れているということはない、ということです。

試しにwOBAとK%(三振率)の関係を打者と投手でそれぞれ見ていきましょう。

まずは打者からです。

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打者は三振率とwOBAの間にほとんど相関は見られません。打者の三振率はwOBAの高低を決めるうえで重要な要素とはなっていない、ということを意味します。

今度は投手のK%とwOBAの関係を見ていきます。

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投手の三振率とwOBAの間には強い相関があります。投手の三振率はwOBAの高低を決めるうえで重要な要素となっている、ということを意味します。

このように投手と打者の三振率では意味合いが大きく異なります。打者の三振率は総合的な得点創出にほとんど影響を与えない一方で投手の三振率は総合的な得点創出に大きな影響を与えます。

tangotigerはこうも言っています。

そのため、クラブは、バッターが全体的にうまく機能する限り、バッターの高いKレートを気にせずに、高いKレートのピッチャーを見つけるように動機付けられます。(Googleによる翻訳)

もちろん三振率の低い投手の中にも四球を出さない能力や打球管理に長けた投手もいるので三振が低い投手が絶対に通用しないわけではありませんが全体的な傾向で見れば三振はかなり重要な要素と言えるでしょう。

打者は三振率と何を引き換えにしている?

ところで打者はK%と何を引き換えにしているのでしょうか?大雑把に調べます。まずwOBAを構成する要素で打球結果と非打球結果について注目します。

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BB%(四球率)と三振率にはあまり相関がないようです。一方でwOBAcon(打球のwOBA)とは相関が見られます。三振率は打球の質とトレードオフになっているようです。

続いて打球の質を上げるうえで打球を多く安打にすることで稼いだという面と打球を多く長打にしたことによって稼いだという2つの面があります。これを比較します。

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三振率とBABIP(フィールドに飛んだ打球がヒットになった率)との間に相関は見られませんでした。一方でHR/BBE(本塁打/打球)には相関が見られました。

これらの結果を総合すると打者の三振率と打球の質はトレードオフの関係にあり、その中でも特に打球が本塁打になる率とトレードオフの関係にある、ということが言えそうです。

まとめ

・打者の三振率と三振でない場面でのパフォーマンスはバランスが取れている。

・投手の三振率と三振でない場面でのパフォーマンスはバランスが取れていない。

・打者の三振率から打者の総合的な貢献の質を予測することは難しい。

・投手の三振率から投手の総合的な貢献の質はある程度予測できる。

・打者の三振率と打球が本塁打になる率は相関があり両者はある程度トレードオフの関係にある。

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