トラッキングデータを用いた打たれにくいスライダーの分析
スライダーと一言に言っても「縦のスライダー」「横のスライダー」「スラーブ」「高速スライダー」などその種類は多岐にわたる。だが実際に失点を防ぐ上でどのようなスライダーが有効なのだろうか。
近年のMLBでは試合中にボールの球速・変化量等さまざまなトラッキングデータを取れるようになった。それらのデータを用いどんなスライダーが打たれにくいのかを検証する。
検証
スライダーを球速帯別と変化グループにグループ分けしたうえで各種指標を算出する。グループ化の方法は球速を5km/hずつに刻みその球速帯の平均変化量と比較した変化グループを作成する。(下記画像を参考)
![](https://assets.st-note.com/img/1639387439311-907xseM2o4.png?width=1200)
指標を集計した表については全球種の平均値を中間値とし、比較して投手にとって良い結果だと赤が、悪い結果だと青が濃くなるようにカラースケールしている。
集計対象とする指標はPV/100(100球あたりの得点価値、高いほど投手にとって価値が高い)、Z-Swing%(ゾーンスイング率)、O-Swing%(ボールゾーンスイング率)、Whiff%、Z-Whiff%、O-Whiff%、平均打球速度、CountUp%、PutAway%とする。
![](https://assets.st-note.com/img/1639387493086-gGcvI8nNWi.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1639387439116-iB3CeHDBIr.png?width=1200)
右投手対右打者or左投手対左打者の場合
![](https://assets.st-note.com/img/1639837120111-DwYiNcS3Tn.png?width=1200)
並べ方はPV/100(100球あたりの得点価値、高いほど投手にとって価値が高い)が高い順に並べている。上位はほとんどGLOVE型(同じ球速帯の平均的なスライダーよりボール1個分以上曲がる)となっている。対戦打者と利き手が一致する対戦の場合、スライダーは基本的に横に大きく曲げると効果的なようだ。
逆に有効でない(PV/100が0未満)組み合わせはARM型(平均的な球速帯よりボール1個以上曲がらない)と球速が130km/hに満たない場合のDROP型となっている。これらのタイプはO-Swing%(ボール球スイング率)が低くなりやすく、それに伴いWhiff%(空振り/スイング)が低くなりやすい。
右投手対左打者or左投手対右打者の場合
![](https://assets.st-note.com/img/1639837300481-SECQDmjWWh.png?width=1200)
並べ方はPV/100(100球あたりの得点価値、高いほど投手にとって価値が高い)が高い順に並べている。上位は高速(140km/h以上)のGLOVE型(同じ球速帯の平均的なスライダーよりボール1個分スライドする)が多くなっている。これらのグループのスライダーの特徴としてはWhiff%(空振り/スイング)が非常に高いことだ。
逆に有効でないスライダーを見てみると横変化がARMのスライダーとなっている。高速でDROPするわけでないなら横変化がARMのスライダーは投げないほうが無難なようだ。
左右どちらにも有効な組み合わせ
![](https://assets.st-note.com/img/1639840123775-YsK5Gdihp6.png?width=1200)
左右どちらにも有効(PV/100が1超え)な組み合わせは140~145km/hのGLOVE-DROP型となった。これらはO-Swing%とWhiff%が高いようだ。
まとめ
・投打の左右が一致する場合、スライダーはグラブ側に曲がるほうが良い。
・投打の左右が一致しない場合、スライダーは高速でかつ平均よりグラブ側に曲がる軌道が効果的。
今回の分析についてはMLB2017-2021のデータを使用した。
データはBaseball Savantから取得したものを使用している。
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