ホームランダービー参加者は後半戦に調子を崩すのか。

大谷翔平のホームランダービーへの参加が決まって以降、以下のような参加を不安視する意見を目にした。
「ホームランダービーに参加するとホームラン狙いのスイングをしてしまい後半戦に調子を崩す」
「現行のホームランダービーのルールだと選手に疲労が溜まって後半戦に悪影響を及ぼす」
「一部の選手は調子を落とすのを恐れてホームランダービーの出場を辞退することもある」

2015年以降のホームランダービーのルールでは時間制限内で何度もホームラン狙いのスイングを行う必要があり確かに選手への負担やフォームの崩れなどを心配する意見もわかる。だが実際にどれだけ選手の成績に影響を及ぼすのだろうか。

ホームランダービー参加者の前半戦と後半戦の成績を算出

ホームランダービーの参加者が実際に後半戦でどれだけ成績が変動するのか算出を試みた。方法としては2015年以降のホームランダービー参加者の前半戦のwOBAとxwOBAを後半戦のwOBAとxwOBAから引き算をして差を算出しその平均を取る。なお平均を算出する際は前半戦と後半戦のうち少ない打席数で加重をする形で行う。

画像1

以上のような計算方法を行った結果が以下である。

ホームランダービー

ホームランダービー参加者は前半戦と比較するとwOBAで24ポイント、xwOBAで22ポイント低下するという結果になった。確かにホームランダービーの参加者は平均して後半戦に成績を落とす傾向にあるようだ。

平均への回帰

しかしこの結果をそのまま受け取って「ホームランダービーに参加すると選手は調子を崩す」とは言い難いところがある。ホームランダービーに選ばれる選手というのは前半戦で優れた成績を残している選手が大半で後半戦には疲労やフォームの崩れ等の要因がなくとも平均への回帰によって成績が落ちる可能性があるからだ。

平均への回帰というのは例えば2つのテストを行いどちらか片方のテストで山勘が当たった等の偶然の影響で偏った成績を出した場合、もう片方のテストでは平均に近づくと言った統計的現象だ。これをホームランダービーに当てはめると前半戦で偶然等の実力以外の要因も絡んで好成績を残してホームランダービーに選出された選手が後半戦では実力や身体の調子自体は変動していないのに偶然の偏りが排除されたことによって成績が低下する、といったことが考えられる。平均への回帰を過小評価して単純に結果から結論を導くのは危険だ。

ホームランダービーに参加していない前半戦で好成績を残した選手たちの成績はどうなっているかを検証

ホームランダービーに参加していない好成績の選手が後半戦でどのように成績が変動しているのかについて算出しホームランダービーに参加した選手の変動と比べてその差を見てどの程度影響があるかについて調べてみる。
好成績の選手の選出基準としては

ホームランダービーに不参加で
1. オールスターにファン投票で選出された打者
2. オールスターにリザーブメンバーで選ばれた選手

の両者をさきほどと同じ手法で後半戦と前半戦の成績の差を算出する。
結果が以下である。

画像3

ホームランダービー参加者と比較するとオールスターファン投票選出選手の方が成績低下の影響が大きいことがわかる。リザーブメンバーについてもホームランダービー参加選手並みにwOBAが低下している。前半戦に好成績を残して成績低下の影響を受けるのはホームランダービー選手に限ったことではないようだ。


オールスター出場選手を用いて比較するというアイディアはなういずスポーツさんから提案していだきました。ありがとうございます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?