球質はフロントドア・バックドアに影響を与えるか

　変化球の基本はストライクからボールになる球だ。だが、グレッグ・マダックスや黒田博樹のようにボールからストライクになる球を活用する投手もいる。このボールからストライクになる球は「バックドア」「フロントドア」と呼ばれる。

　このバックドアやフロントドアは高速で小さく動くムービングボールで行うイメージが筆者にはある。ただ最近、大谷翔平が左打者に対し大きなスライダーを用いてバックドアを決める場面を見た。打者からすると速く・小さな変化が入ってくるのと、遅く・大きく動くボールではどちらの方が打ちにくいのだろうか。

検証方法

　MLB2017-2021の右投手を対象に2ストライクからバックドア・フロントドアを試みたときのPutAway%（三振/2ストライクからの投球数）を算出する。

・なぜPutAway%？
バックドア・フロントドアの狙いはボールからストライクに投げることで見逃しストライクを狙うことだ。2ストライクでは積極的に振るタイプ、慎重に球を見るタイプのどちらでもスイングをしてくる。どんな打者でもストライクとわかれば振る場面に限定し奪った三振の割合を見ることでバックドア・フロントドアの有効性をより測りやすくする。

シンカー（ツーシーム・シュート）

フロントドア（対左打者への内角）

　フロントドアのシンカーは
・ボールのシュート変化が大きいほどPutAway%が高くなる
・球速はそこまで影響を与えないが、153キロを超えると下がる。

バックドア（対右打者への外角）

バックドアのシンカーは
・シュート変化が30cm未満と小さすぎるとPutAway%が下がる。
・球速は148km/hを下回るとやや下がる傾向にある。

スライダー・カットボール

フロントドア（右打者への内角）

フロントドアのスライダー・カットボールは
・横変化が大きいほどPutAway%が高くなる
・球速が速くなるとPutAway%が高くなる
・140キロを超えると跳ね上がる

バックドア（左打者への外角）

バックドアのスライダー・カットボールは
・重要なのは球速、PutAway%を高くするには140キロ以上が必要。

まとめ

・フロントドア・バックドアのシンカーはシュート変化の大きさ（30cm以上）が重要。
・フロントドア・バックドアのスライダー・カットボールは球速が重要（140キロ以上）。