「ストレートがあってこその変化球」は本当か?フォーシームが他の球種に与える影響
「ストレートがあってこその変化球」「変化球に頼り過ぎると変化球が活きなくなる」と言われることがある。今回は実際にストレート(フォーシーム)が他の球種に影響を与えているのかについて見ていく。
フォーシームの投球割合が他の球種に与える影響を検証
ある年と翌年のフォーシームの投球割合とフォーシーム以外の球種のSwStr%(空振り/投球)とxPV/100(予期される100球あたりのPitch Value)を比較してその効果を確認する。
(xPVとは打球の結果に依存しないPitch Value。詳しくは下記リンクを参照)
検証方法は、ある年のフォーシームの投球割合とフォーシーム以外の球種全体の指標を算出する。そして翌年のフォーシーム投球割合と各種指標を算出し、後者から前者を引いた値を算出し相関分析を行った。対象はMLB2017-2020年の各年度で全球種合わせて1000球以上投げた投手とする。
結果は以下のようわずかだが(R=0.23)相関があるようだ(図1)。しかし散布図を見ると右端にポツンと60%近くに点がある。このような外れ値は全体の結果に大きな影響を与えると考えられる。急激に60%も上昇するのも考えづらいため(おそらく今まで投げてたシンカー、カットがフォーシーム判定に切り替わった等の事情)、除いて計算するのが妥当と考える。これからは外れ値を除いた計算を行っていく。
外れ値を除いて計算した結果、SwStr%は弱い相関がある(R=0.26)という結果になった(図2)。フォーシームの投球割合は他の球種のSwStr%に弱いながらも影響を与えている可能性がある。しかし、失点抑止(xPV/100)は相関がないという結果になっている(図3)。空振りを誘発するものの、結果として失点抑止にまでは繋がってないようだ。
他の球種の価値とフォーシームの価値は連動しているか
「ストレートがあってこそ変化球が活きる」という言葉は、投球割合以外にも「質の良いストレートを投げれば」という意味も含まれていると思う。「質の良さ」をどう定義するかは判断が分かれるところだが、今回はフォーシームのxPV(予期される失点リスクの低さ)にする。年を跨いだフォーシームのxPVの変動が、他の球種全体のxPVと連動するかを調べる。なお、こちらの分析ではフォーシームを各年度300球以上投げた投手に限定している。
フォーシームの価値と他の球種全体には相関がない(R=0.15)という結果になった(図4)。
まとめ
・フォーシームの投球割合と他の球種全体のSwStr%には弱い相関がある。
・フォーシームの投球割合と他の球種全体の価値には相関がない。
・フォーシームの価値と他の球種全体の価値には相関がない。
今回はフォーシームが他球種に与える影響を調べたが、ほとんど影響はないという結果になった。「ストレートがあることで他の球種が活きる」と言うが、少なくともフォーシームの投球割合や価値を高めても、他の球種に与える影響は確認できないようだ。
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