シーム・シフト・ウェイク(縫い目によって起こるボールの動き)を簡易的な方法で改善する

ボールの変化要因は回転だけではない

投手の投げるボールの動きは、回転数や回転軸と言った回転によって主に起こされます。

ただ、近年の研究によってボールの縫い目の向きが重要であることがわかってきました。この現象はシーム・シフト・ウェイクと呼ばれ研究の対象にもなっています。

縫い目がもたらす変化

回転軸

縫い目がもたらす変化はジャイロ回転の向きとシーム・オリエンテーション(縫い目の向き)で決まります。

https://twitter.com/Alexkachler10/status/1552446831321575427 を基に翻訳して表を作成

 角度の偏差の時計回りは回転軸を時計に例えたものです。
例えば時計回りは回転軸が1時→2時になった場合を指します。

縫い目の向き

https://www.researchgate.net/figure/Difference-in-the-seam-orientations-the-number-of-seams-per-rotation-with-respect-to_fig8_284164226

縫い目の向きはどこを中心にボールが回転してるかで決まります。
上記の図を参考。

通常右投手の場合、フォーシームの時は反時計回りに、ツーシーム、ワンシームは時計回りに回転軸よりボールが変化します。(左投手の場合は逆)

縫い目がもたらす変化

NEOLABの内田聖人氏によるRAPSODO PRO 3.0を用いた実践動画。
同じリリースで投げても縫い目の向きよりボールの変化が変わっています。

縫い目による変化を大きくする方法

Rapsodo Pro3.0

最も手早い方法はRapsodo Pro 3.0を使うことです。
Rapsodo Pro 3.0はどの位置を中心に回転してるかを図示したり、シームによる変化量を計算してくれます。

Dot Ball(ボールに点を描く)

もっと手軽に確認する方法としてはボールに点を描く方法です。
Pitching Coach UことJared Gaynorが考案した方法です。

Dot Ball の作り方

右投手のシンカー(ツーシーム)とチェンジアップ、スプリット用のボール
2シームオリエンテーションにあたる部分に黒い丸を描きます。

ジャイロ回転のスライダー、カットボール用
縫い目の1番狭いところに黒い丸を描きます。

右投手のスイーパー用
1シームの位置に黒い丸を描きます。

左投手のスイーパー用
1シームの位置に黒丸を描くが、左右の位置が異なります。

Dot Ballを用いたSSW改善

ツーシーム・チェンジアップ・フォークのSSW改善方法

ツーシーム・チェンジアップ・フォークは基本的にシュート変化とドロップを大きくしたいので2シームオリエンテーションで投げましょう。

Dot Ballは2シームの位置に描かれたボールを使います。
描かれた黒丸が右投手の場合は左上に見え続けるようにボールの握る位置を調整します。(左投手の場合は右上に位置するように)

シンカー(ツーシーム)の例

純粋にツーシームで握ってもうまくいかない場合は握る位置を調整してドットが左上に来るように握りを調整してもいいかもしれません。

チェンジアップの例

チェンジアップもドットが左上に来るように調整するとシュート変化やドロップが大きくなります。

握りの調整方法としては基本的にフォーシームでなくツーシームで握ることです。

これらが基本的な握りですが、より左上に位置させるために少しズラしてみても良いかもしれません。

フォークボール(スプリット)の例

フォークボールもチェンジアップ同様に黒丸が左上に来るようにすることで落差やシュート変化が大きくなりやすいです。

フォークは同じ握りでも、人によって人差し指で押し込むタイプや中指で押し込むタイプかなどによってどの位置で握るのがベストかは異なると思われます。

人差し指型

中指型

フォークボールの握りの種類

・縫い目の1番狭いところに2本の指を置く2seam Grip
・縫い目の1番広いところに置く2seam Grip
・人差し指を皮に置き中指だけを縫い目に置く握り
・人差し指を縫い目に置き中指を皮に置く握り

シーム効果を最大にできる握りは複数の握りで試してみて、左上にドットを配置できるのはどれかを探すと良さそうです。

https://x.com/TreadAthletics/status/1807549940077318159

ジャイロ系スライダーの例

ジャイロ系のスライダーは4シーム回転をさせることでドロップとスライドを得られます。

縫い目の1番狭くなってる部分にドットを書いてその中心を回転させる握りで投げると良いでしょう。

握りの例

https://x.com/LanginTots13/status/1562937086306832384

スイーパーの例

横曲がりのスライダー、スイーパーを投げたい場合はスライダーの回転軸を8:00(左投手の場合は4:00)にしたうえで、1シーム回転か2シーム回転でボールを投げることでホップとスライドを得たいです。

ワンシーム部分にドットを描き右下に位置するように握る位置等を調整してください。

握りの例

https://twitter.com/LanginTots13/status/1562937086306832384

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