2008年以降ドラフトの考察(投手編)

ドラフトについてのデータをまとめたtableauを作りました。これを使って色々考察します。

経歴と順位、ポジション別で集計

投手よりチームの核となる野手を1位指名するべき、大卒投手は安定しているがスターが出ないので高卒を取るべき、などドラフト評論では色々言われますが実際どうなのかをざっくり検証します。

投手

高卒投手は1位以外差がつかない?

高卒投手の順位別スタッツを集計します。100IP(投球回)到達者は順位に応じて右肩下がりになります。実戦で使える投手の比率や、使ってみたいと思うような投手が上位にいくにつれて増える形になります。

しかし平均WARを見ると1位は高めに出る傾向にあるものの2位以下ははっきりした傾向は見えません。(むしろ2位は低め)

通算WAR5超(レギュラー格選手)の選手比率で見ても1位が飛び抜けて高いですが、2位以下ははっきりした傾向はやはり見えず。6位がなぜか高い…と不思議な構成になっています。

これは想像になってしまうのですが、1位で指名されるようなドラフト時点で同じ年の大卒選手や社会人選手と比較してエンジンや投球の完成度を含めた「高卒時点でも総合力の高い投手」はプロでもそのまま働いてくれる可能性が高い。
(例えば松井裕樹や藤浪晋太郎のような)

しかし2位以下で指名されるような「将来を見越した素材が評価されている高卒投手」はドラフト時点は2位の期待値でも下位の期待値でもプロに入ってみないと真価がわからない、ということではないでしょうか。高卒時点で将来性はこれくらいある!と見越して指名してもプロのスカウトが思った通りに育たないことがままある、ということです。高卒選手が将来どうなるかを予測するのは難しい、と。

リスクの高さを考えると「同年の大卒投手や社会人投手と比較しても既に総合力で優れている」スーパーエースを除くと高卒投手は上位での指名は控えるべきかもしれません。

大卒投手と社会人投手は順位相応

高卒投手と比べると、大卒・社会人投手は平均WAR、WAR5超の投手が現れる率が順位通りになっています。将来が予測できない高卒投手と比べ、大卒や社会人の投手は既にある程度完成されているため能力の見極めが容易なのかもしれません。上位で投手を指名するなら大卒・社会人が安全策かも。

1位で指名するなら大卒投手か社会人投手?

ここからは順位カテゴリで分割します。

基本的に1位指名は大卒・社会人が安定しています。
通算100投球回達成者は社会人>大卒>高卒。
平均WARは大卒>高卒=社会人。
1年目WAR1超率は大卒>社会人>高卒。

当たる確率は低いが当たればリターンの大きいイメージのある高卒投手ですがWAR10超(スタープレーヤー率)もそれほど高いとは言えません。

上位(2位~3位)では他と異なり高卒が活躍しない

中位(2位~3位)では平均WAR、100投球回達成率、WAR5超率、1年目WAR1超率、全てで社会人>大卒>高卒となります。

当たる確率は低いが当たれば大成するイメージのある高卒投手ですが、2~3位のWAR10超率は社会人>大卒>高卒であり、大成する確率も高いとは言えません。

中位(4位~5位)でも依然として高卒は成功しにくい

中位では100投球回達成率、平均WAR、いずれも社会人>大卒>高卒です。

スタープレーヤー(WAR10超)の率もあまり差はつきません。(むしろ高卒は低め)

下位(6位以下)で高卒投手が逆転

これまでの順位では、大卒や社会人が実戦で使える率、WAR、共に優位に立ってきました。
しかし、6位以下の指名では高卒投手があらゆる指標で逆転します。
平均WARもそうですが、通算100投球回に到達した率でも高卒がリードしています。
WAR5超率も高卒>大卒>社会人であり、若い選手ほど大成する率も高いと言えます。

選手としてある程度完成されている大卒・社会人カテゴリで6位以下まで残る選手は、指名時点の実力も低めでかつ年齢の影響で伸びしろが残っていないため将来的にも一軍で通用する実力を身に着けにくい。
逆に選手として完成されていない高卒でこの順位まで指名されていない選手は、能力的にも年齢的にも伸びしろを大きく残しており一軍で大成する選手も出てくる、というところでしょうか。

育成指名は基本厳しい、高卒>大卒>独立の順で可能性は高い?

育成指名についても見てみます。支配下ではサンプルが少ないので省きましたが独立は育成に指名が集中しているのでサンプルに含めます。

基本的に育成指名は厳しい結果に。
100投球回以上到達できたのは高卒>大卒>独立の順。(社会人はクラブチーム以外は基本育成では指名できないためサンプルが小さいです。)独立に関しては0です。

育成出身でWAR1以上を記録した選手。千賀がやはり飛び抜けていて次いで西野が高いです。

育成枠という名の通りポテンシャルを評価しての指名なので、基本的に伸びしろを残す若い選手ほど開花のチャンスが高いのかもしれません。

その他、考えられる要因としては大卒や独立の育成枠はファームの試合や三軍を回すために数合わせで指名しようと考えている球団が多いのかもしれません。(初めから戦力になることを見越して指名せず、将来的に一軍で活躍できるようなポテンシャルはなさそうでも二軍の試合をある程度回せる程度の完成度を求めて指名するケース等)

まとめ

・高卒選手は1位以外差がつかない。2位も下位指名もそれほど変わらない。

・大卒・社会人投手は順位通りに育ちやすい。

・1位では大卒選手が貢献度、即戦力率共に大きくリード。
 大卒>社会人>高卒 といった結果に。
 高卒は同年の大卒や社会人と比べても指名時点での実力が遜色ない選手(松井裕樹や藤浪晋太郎クラス)でないとリスクが高い?

・2~3位、4~5位では社会人>大卒>高卒に。

・6位以下、育成指名では高卒>大卒>社会人に。
 既に選手として完成されている大卒・社会人でこの順位まで残る選手は指名時点での実力も低く年齢を考えると伸びしろも少ない。逆に高卒は、伸びしろが残っている分、大成するチャンスが残っている?
 下位や育成の大卒、社会人はそもそも試合成立要員として取っている可能性も?

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