新外国人選手(打者)はいつまで我慢して使い続けるべきなのか。

新外国人選手は即戦力として高い期待をかけられる一方でNPBでの実績がないことからいきなり見切られてしまうことがあります。サンプルサイズが揃うまで実力を推定することは難しいためある程度は我慢して起用すべきだと思うのですが実際どこまで我慢して起用すべきなのでしょうか。

退団した選手はどれだけチャンスをもらっていたか。

NPBでプレーするも1年で退団し「失敗」の烙印を押された外国人選手は数多くいます。そんな選手達ですが実際どれだけチャンスを与えられていたのでしょうか。2010年以降のNPBでプレーした選手で開幕前に支配下契約され入団した年で退団し翌年以降にNPB球団と契約しなかった選手を対象とし打席数の平均をとります。

外国人選手 打席数

対象となった選手は46人でした。打席数の平均は169でwOBAは.297でした。この169打席という値は妥当な値なのでしょうか。

wOBAの誤差を打席数から推定する

wOBAとはイベント(単打や本塁打やアウト等)の得点価値を基に加重した打撃指標です。その汎用性の高さもあって現代で最も重要な打撃指標の1つです。(注1)

セイバリストのTangotigerはtwitter上でwOBAの標準偏差(SD)についてこう説明しています。

大まかに言えば、wOBAの1つのSDは0.5 / sqrt(PA)であり、これは、McGwireまたはGwynnのどちらであるかに関係なくほぼ当てはまります。(Googleによる翻訳)

標準偏差(以下SD)とはデータの1つ1つが平均を中心としてどれだけバラついているかを表すものです。SD±1の範囲内に約68%のデータが入りSD±2の範囲内に約95%のデータが入ります。平均±2SD以内はよくある誤差、と言うことができます。(ここらへん、うまく説明できる自信がないので詳しくはググったほうがよいと思います)

Tangotigerの式に当てはめてwOBAの誤差範囲を算出します。

画像2

wOBAの1SDは0.038となりました。2SDを誤差の範囲内の基準とすれば平均±0.076はよくある誤差の範囲内ということになります。

これはつまり新外国人選手の真の実力がwOBAで.380(今季の坂本勇人並)でも与えた打席が169打席では誤差(-2SD)によって.304(今季の木浪聖也並)を記録することもありえるということです。169打席立たせた時点でwOBAが.304でも諦めるのは早い、と言えるかもしれません。このようにこれまで見切られて退団した選手のなかにも見切られた時点では誤差の影響を受けていただけで出し続ければ活躍した選手もいるのかもしれません。

一体どこまで我慢すればいい?

とはいえ成績が出ていない選手をどこまで我慢すればいいのか、という問題もあります。チーム事情によっては早めに見切って代替選手を起用したり余剰に獲っておいた外国人選手を使うために二軍に落とした方がチームの得失点を増やせる、という可能性もあります。

ただシーズン前に外国人選手を獲った、ということは前年のチーム状況から考えてその外国人選手のポジションが弱点でかつその年度に戦力になることが期待されるプロスペクトがいないから獲得したと考えられるわけで代替の選手にそれほど期待をかけられるチーム状況でないことが多いと考えられます。そのためある程度は我慢した方が良いケースが多いのではないでしょうか。

そこで目安として

新外国人選手に期待するwOBA - 打席数から推定される2SD

を実測値のwOBAが下回るまでは我慢し続ける、というのはどうでしょうか。例えば新外国人選手に.380以上のwOBAを期待する場合は以下の通りです。

画像3

表の打席数を立たせた時点で実測値のwOBAが右端のwOBAを上回っていたらまだ我慢をし下回ったら外す、といった具合です。例えば100打席立たせた時点で実測値のwOBAが.280以上ならまだ我慢して起用する。200打席立たせて実測値のwOBAが.309を下回っていたら外す、という感じです。

これなら誤差を考慮したうえで目標値のwOBAを下回りそうだと推定できるタイミングで外せるのではないでしょうか。

まとめ

・今までNPBで退団した選手は平均して169打席程度チャンスをもらっていた。

・打席数からwOBAのSDを推定できる。

・169打席程度だとwOBAの誤差は±0.076程度。

・新外国人選手に期待するwOBA - 打席数から推定される2SD と実測値のwOBAを比較することで使い続けるか外すかのだいたいの目安になる

(注1)

wOBAについては1.02のwOBAの解説ページを参考にしてください。

以下元データ

元データ1


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