空振り率の高い高速カーブ、"death pitch"

 メジャーリーガー、Andre Pallanteがアメリカの野球ジム、Tread Athleticsで"death ball"と呼ばれる球種を練習中で話題になっています。どのようなボールなのかをこのnoteで考察していきます。

"death ball"は高速の縦カーブ?

(左)今までのカーブ (右)"death ball"

"deatch ball"とこれまでのカーブ(左)を比較すると

・球速 122km/h→133km/h
・縦変化 -53cm → -16cm
・横変化 -18cm → -1.5cm
・有効回転数 2920→2662

これまでのカーブはスピン量が多く縦の落差、横の変化量共に大きなものでした。球速は122キロと遅く、回転数も2920と非常に多いです。

新しいカーブ("death ball")は球速が133キロと速く、縦変化は-16cmと落差がやや小さく、横にはほとんど変化しません。Total Spinも少ないです。

今までのカーブらしい"カーブ"に比べると"death pitch"は縦のスライダーに近いかもしれません。

ブレーブスの投手開発スタッフが"death pitch"と呼んでいるもの

https://blogs.fangraphs.com/atlanta-braves-pitching-prospect-spencer-strider-nerds-out-on-his-arsenal/

過去にDavid Laurilaがfangraphsに投稿したSpencer Strider投手とのインタビュー記事を見てみましょう。ブレーブスの投手開発チームが"deatch pitch"の存在を指摘しています。 それによると"death pitch"とは

球速 >85mph(135km/h)
縦変化 < -6inch(-15cm)

高速でかつ落差の大きいカーブのようです。この特徴はPallanteが開発中の球種の特徴と一致します。

"death pitch"は高い空振り率を期待できる球種

上記のインタビューでも言及されていますが、"death pitch"は打者にコンタクトを許さない球種のようです。実際にどの程度空振りを期待できるでしょうか。

上記の画像は過去にCammeron Groveが自身のサイト上で公開していたPitching Bot(機械学習を用いて球質や制球を評価付けるもの)です。

スライダーについて球速と縦変化でxWhiff%(期待される空振り/スイング)を算出すると40%を超えます。通常のスライダーが30%前後、カーブが25%前後なことを考えるとこの"death pitch"は非常に高い空振り率を記録する変化球と言えそうです。

投げ方

ここからは投げ方を考察します。

握り

まず上記動画にもありますが、スパイク(人差し指を立てる)のが特徴です。ナックルカーブと呼ばれるものに近いです。

リリース

リリースについてですが、手の平の向きが違うかもしれません。

左(通常のカーブ) 右(death pitch)

通常のカーブは強い回転と変化をつけ、球速を落とすために、右投手なら手の平を一塁側に向けます。(画像左)

death pitchの場合は変化が小さくてもいいから速度を出すために、手の平を捕手側に向けたままにします。

左(通常のカーブ) 右(death pitch)

リリース映像を比較すると

・通常のカーブは中指は付け根の一部が見えるだけです。
 これは手の平を一塁側に少し向けているからだと思われます。
・death pitchは中指の全体が見えています。
 これは手の平を捕手側に向けているからだと思われます。

他の投手の通常のナックルカーブとpallante以外にスパイクグリップを使って"death pitch"を投げている投手を見てもこれは共通しているようです。

イメージとしてはスパイクカーブの握りでフォーシーム(ストレート)を投げる、が近いかもしれません。リリースで操作しなくても立てた人差し指が軸を勝手に作り、勝手に変化を生み出すという感じで。

通常のナックルカーブ(中指が一部しか見えない)

トレバー・バウアーのナックルカーブ
https://www.youtube.com/watch?v=4QHi2a_NPXo

"death pitch" (中指の大部分が見えている)

Jose Ruiz

Luke Jackson

James Karinchak


投球動画(Luke Jackson)


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