「ストレートがあってこその変化球」は本当か?球種割合増減の効果を検証

「ストレートがあってこその変化球」「変化球に頼り過ぎると変化球が活きなくなる」と言われることがある。今回は実際に球種割合を増やすとどんな効果があるのかを見ていく。

先行研究

上記の記事は投手が球種の割合を増減させた場合に、RV/100(100球あたりの得点価値)やSwStr%(空振り/投球)に、どのような変化が見られるのかについて検証した記事だ。検証した結果、投手がある球種の投球割合を増減させたとしても、RV/100やSwStr%にはっきりとした変化は現れなかったようだ。ただ、RV/100は打球の結果に依存する可能性があり、今回の分析では打球の価値を結果ではなく、打球の速度と角度から推定される価値を用いたxPV/100で行うことにした。(後述)

検証

ある年と翌年の球種の投球割合とSwStr%(空振り/投球)とxPV/100(予期される100球あたりのPitch Value)を比較してその効果を確認する。

(xPVとは打球の結果に依存しないPitch Value。詳しくは下記リンクを参照)

検証方法は、ある年の球種の投球割合と指標を算出する。そして翌年の投球割合と指標を算出し、後者から前者を引いた値を算出し相関分析を行った。対象はMLB2017-2020年の各年度でその球種を300球以上投げた投手とする。

結果

各球種の投球割合を増減させてもSwStr%(図1・図3・図7・図9・図11)、xPV(図2・図4・図8・図10・図12)ともに相関は見られなかった。(唯一カットボール(図5・図6)には何かしら影響はありそうだが、これはそれまでフォーシームと分類されていた投球が、カットボールに分類され直した投手などの影響を含んでいる可能性もある。)球種の投球割合を増やしても球種自体のSwStr%や失点しにくさに影響を与えるとは言えなさそうだ。

図1

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まとめ

・投手が年を跨いで球種の投球割合を増減させたとしても、球種の空振り率や価値に与える影響ははっきりとしない。

使う指標をRV/100からxPV/100に変更したが先行研究とほぼ変わらない結果となった。球種の投球割合を増減させても、球種の価値に与えるはっきりとした影響は見られなかったことを考えると、投手はストレートを主体とした投球やバランスの良い配分などにこだわらず、自分の得意な球種を積極的に投球するというスタイルがあってもいいようにも思える。

実際に2021年のMLBでは、30回以上投げスライダーが投球の50%を超える投手が19人おり、そのうち代表的なMatt Wislerは投球の90%がスライダーという極端なスライダーピッチャーだ。(2010年にはスライダーの投球割合が50%を超える投手は4人しかいなかった。)偏った球種割合にすることにデメリットが見出されなければ、今後もこうした投手は増えていくのかもしれない。

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