オフスピードボール(スプリット、チェンジアップ)の考察

 チェンジアップ、スプリットのようなオフスピードボールを球速・変化量から分析します。

縦の変化量の効果

 縦の変化量(pfx_z_cm)が小さい(落差が大きい)ほど、Whiff%(空振り/スイング)、O-Swing%(ボールゾーンスイング率)、GB%(ゴロ率)は高くなります。基本的に落差が大きいオフスピードボールは投手優位のようです。

速球との縦変化量差を考慮する

 同じ縦変化量のオフスピードボールを投げる投手が2人いるとします。1人はライズする速球を投げ、もう1人はシンカー気味の速球を投げる投手とします。この場合、オフスピードボールは同じ縦変化量だからといって同じようなスタッツになるでしょうか。

 オフスピードの縦変化量が同じ場合、速球の縦変化量がRISEするほどWhiff%やO-Swing%は高くなります。オフスピードの縦変化量だけを考慮するのではなく、速球との差を考慮する必要がありそうです。

速球との球速差を考慮する

 オフスピードボールはEli Morganのように速球と大きく球速差をつける投手もいれば、Zack Greinkeのように高速で沈ませる投手もいます。ここでは速球との緩急を考慮します。

 オフスピードボールと速球との縦変化量の差の平均はだいたい23cmです。これを基準に平均より、ボール1個分以上沈まないオフスピードボールを"RISE"と定義します。ボール1個分以上沈むオフスピードボールをDROP。そして平均的な変化をNOMALとします。それぞれの変化タイプ別の緩急の効果を見てみましょう。

DROP

 平均より沈むオフスピードボールは速球との球速差が少ないほど、O-Swing%、GB%が高くなります。球速が遅すぎるとO-Swing%が低くなることを考えるとある程度速い方がいいかもしれません。

RISE

 平均より沈まないオフスピードボールの場合は、速球との間に球速差をつけることが重要となります。速くて沈まないオフスピードボールは打者にとって恰好の的です。

NOMAL

 NOMALの場合は球速差をある程度つけることが重要です。速いオフスピードボールは打者にコンタクトされ、ボール球を振ってもらえません。

速球の球速はオフスピードボールに影響を与えるか

 速球の球速はオフスピードボールに影響を与えるでしょうか。速球が速ければ速いほど打者は速球をケアしなければならなくなることを考えると、速いほど同じ変化タイプ、球速差でも打ちにくくなりそうです。ここでは速球の球速を143-148km/h(MLB平均より遅い)、148-153km/h(MLB平均)、153-158km/h(MLB平均より速い)に分割して調べます。

DROP

 沈むオフスピードボールの場合、速球の球速は非常に重要になります。速球の球速がMLB平均より速いグループ(153-158km/h)に属するとWhiff%で他のグループを圧倒します。

RISE

 沈まないオフスピードボールの場合、速球の球速が速いグループはWhiff%では分があります。一方、O-Swing%ではそれほど優位をとれないようです。

NOMAL

 NOMALではあまりはっきりとした傾向は見えてこない。

まとめ

・基本的にオフスピードボールは沈むほうが有効。
・単純な縦変化量より、速球との差に注目したほうが良い。
・沈むオフスピードボールは速球の球速が非常に重要。
・沈まないオフスピードボールは速球との球速差は大きいほうが良い。

今回の分析にはStatcastの2017-2021年のデータを使用した。

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