投打の左右を考慮したスライダーの球速帯別変化グループのStats

横スライダー、縦スライダー、小さいスライダー、スライダーを形容する言葉はいくつかある。それぞれのスライダーの打球の失点リスク、コンタクトのさせにくさ、総合的な失点リスクについて見ていく。

スライダーを球速帯別と変化グループにグループ分けしたうえで各種Statsを算出する。グループ化の方法は球速を5km/hずつに刻み、その球速帯の平均変化量と比較した変化グループを作成する。(下記画像を参考)

変化グループ

これは先行研究であるデルタ・ベースボール・リポート4(水曜社:2021年)『変化量とRun Valueが示す本当に有効なボールとは? (八代 久通)』と全く同じである。

今回はそれに加えて投打の左右が一致した場合としていない場合と場合分けして、各種Statsを算出した。

Statsを集計した表については、スライダーの平均値を中間値と比較して値が低くなると青く、高くなると赤くなるようカラースケールしている。

球速帯別変化量

スライダー 球速 変化量

スライダーの変化量は球速が上がるほど横変化は小さく(スライダー方向へ変化)なりたて変化は大きく(ライズする)なる傾向にある。

投打の左右が一致する場合


まずは投打の左右が一致する場合について見ていく。

xwOBAcon

まずは打球の失点リスクについてだ。ここではxwOBAconという指標を見ていく。xwOBAconとは打球の角度と速度から打球の得点価値を推定し、どれだけ価値のある打球を打たれていたかを表す指標で、投手にとっては低ければ低いほど、失点のリスクが低いことを意味する。

スライダー xwOBAcon_2

GLOVE-RISE型のスライダーが打球の失点リスクが比較的低いようだ。

Contact%

続いてはContact%を見ていく。Contact%とは打者がスイングを試みた際に、どれだけコンタクトしたかを表す値だ。低ければ低いほど打者にコンタクトされないことを意味している。

スライダー Contact

基本的にGLOVE型のスライダーがコンタクトをさせないようだ。球速によって若干結果が異なり、140キロ未満ではRISE型が、140キロを超えるとDROP型が優位になる。

一方でストレートに近い変化であるARM-RISE型はコンタクトをされやすいようだ。

O-Swing%

O-Swing%とはボールゾーンの投球をいかにスイングさせたかを表す指標だ。高ければ高いほどボール球を振らせていたことを意味する。

スライダー O-Swing

「変化の大きなスライダーは打者に振ってもらえない」と言われることがあるが実際には、変化の小さいARM-RISE型が最もボール球を振ってもらえない組み合わせとなっている。

RV/100

RV/100とはストライクを取る、凡打にさせたなど相手の得点を防いだ事象についてはマイナスの得点価値が、ボール球を投げる、安打を許すなど相手の得点の見込みを増やす事象については、プラスの得点価値が与えられる指標で投手にとっては低ければ低いほど得点を防ぐことを意味する指標だ。

スライダー

140km/h未満まではGLOVE-RISE型のスライダーが優位だ。140km/hを超えるとDROP型のスライダーが優位になる。

変化の小さなARM-RISE型のスライダーは、基本的に失点を防ぐ効果に乏しく、140キロを超えてしまうとかなり失点リスクの高い組み合わせになってしまう。ストレートに近いスライダーは打ちにくいとされるが、実際は球速が速く変化の小さなスライダーは打たれやすいようだ。

投打の左右が一致しない場合

xwOBAcon

画像6

投打の左右が一致しない場合、打球の失点リスクは横変化がARM側によると高くなる傾向にありGLOVE側によると小さくなる傾向にある。

Contact%

画像7

投打の左右が一致しない場合、縦変化がRISEするとコンタクトされやすくDROPするとされにくくなる傾向にある。

O-Swing%

画像8

O-Swing%は投打の左右が一致した場合と同様、変化の小さなARM-RISE型が最もボール球を降らせにくいという結果になった。

RV/100

スライダー 一致しない

投打の左右が一致しない場合の総合的な失点リスクは、GLOVE側へ変化する、もしくは135km/h以上出てDROPすると、失点のリスクを減らせるようだ。GLOVE-RISE型はコンタクトされやすい球質ではあったものの、打球の失点リスクが低いため、総合的な失点リスクではそれほど高くはならなかった。一方で平均的な変化であるNOMALと、打球の失点リスクの高さとコンタクトされやすさを併せ持つARM-RISE型は、リスクの高い組み合わせとなっている。

まとめ

・スライダーの球速帯別平均変化量は球速が速くなるほど横変化は利き手側に縦変化はホップする。

・ARM-DROP型は投打の左右が一致する場合は130km/h以上、一致しない場合は球速が135km/h以上出れば有効となる。

・ARM-RISE型は投打の左右が一致しても一致しなくても失点リスクの高い組み合わせとなっている。

・GLOVE-DROP型は投打の左右が一致する場合は140km/h以上だと特に有効、左右が一致しない場合はどの球速帯でも有効。

GLOVE-RISE型は140km/h未満なら投打の左右が一致する場合に特に有効、投打の左右が一致しない場合でもそれなりに失点のリスクを抑えることが可能。

・NOMAL型は基本的に球速が速くなるほど有効度が上がる。投打の左右が一致する場合はそれなりに有効だが一致しない場合は球速が140km/hを超えなければ有効とならない。

・小さな変化であるARM-RISE型はボール球を振らせにくい。


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