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「絶望の開幕戦から、5割復帰までの94試合の道程」阪神タイガース前半戦総括

 初めましての人は初めまして、越智哀斗と申します。今回は、1ファンとして阪神タイガースの前半戦総括を行わせていただきます。(後半戦開幕に間に会いませんでした、すみません。)月ごとに振り返りをしつつ、個人的にターニングポイントだと思った試合と月間MVPを僭越ながら選出していきたいと思います。駄文ですが、最後までお付き合い頂けると幸いです。────────────────────────────────────────────────

まさかまさかの大逆転負け、0勝で終わった3月

 昨年、東京ヤクルトスワローズにゲーム差なしで優勝をかっさらわれ、あと一歩のところでリーグ優勝を逃した阪神タイガース。今年こそ悲願の優勝を目指して、まずは昨年の覇者ヤクルトとの開幕3連戦、着実にエースとしての階段を登っている青柳晃洋投手が、自身初の開幕投手としてマウンドに登るはずでした。3月17日、青柳投手はPCR検査によって新型コロナウイルス陽性判定を受け、開幕投手を辞退する結果となります。今思えばここから運命の歯車は狂い始めていました。さらには20日にオープン戦で打率3割4分5厘と結果を残し、個人的にも期待していた島田海吏外野手もコロナ陽性者として離脱を余儀なくされます。開幕3戦目の先発が有力視されていたジョー・ガンケル投手も腰の張りを訴え開幕には間に合わず。矢野阪神最後の勝負4年目は、暗雲が立ち込める中スタートしました。

なんとしても勝ちたかった開幕戦、ご存じの通り結果は8-10の逆転負けでした。

開幕戦で最低最悪の敗北を喫した阪神はその後の2試合もあっけなく落とし、続く広島東洋カープ三連戦でも一つの白星も獲得できずに、悪夢のような3月を終える事になります。

3月29日 マツダスタジアム vs広島1回戦 2‐3 醒めない悪夢

 3月のターニングポイントとなった試合としてはこの試合を挙げたいと思います。開幕戦だろという人がほとんどだと思いますし、もちろんあの思い出したくもない試合は、今季の阪神タイガースにとってあまりにも痛かったのは間違いないですが、連敗の波が止まらなくなったのはこの試合で逆転負けを喫したのが大きかったと私は考えています。2-1とリードしながら九回の裏にカイル・ケラー投手が満塁のピンチを作って降板し、代わった湯浅京己投手が西川龍馬外野手に逆転サヨナラタイムリーを打たれて負けたこの試合にもし勝てていたら、借金が16まで膨れ上がることは無かったと私は思います。仕切り直しの一戦で、開幕戦と同じような負け方をしたのは痛すぎました。もし789回の何処かで追加点が取れていたら、もし最初から湯浅投手が登板していたら……タラレバを言っても仕方ありませんが、もしこの試合に勝てていたならば、今頃はもう少し近くに燕の背中はあったかもしれません。

不屈の超人 糸井嘉男

 一度も勝利を収めることが出来なかった3月ですが、今年41歳を迎えるこの男が打線の中で輝いていました。キャンプから若手と同じメニューを精力的にこなし、オープン戦で打率.346、本塁打2、打点7と結果を残して見事6番レフトで開幕戦のスタメンを勝ち取った超人は、その開幕戦でチームの今季初ホームランとなるツーランホームランを放つなど4打数3安打4打点の大活躍。最終的に3月はチームの3分の1の打点を挙げ、堂々と復活の狼煙を上げました。去年は阪神入団後最小となる77試合の出場に留まりましたが、まだまだ俺はやれるという気持ちが溢れたプレーを見せてくれていました。5月以降は調子を落としてしまっていますが、層の薄い野手陣で糸井選手は欠かせません。代打でもスタメンでも出場時は存在感を放てる貴重な選手の一人なので、後半戦なんとかもうひと踏ん張りして欲しいと思います。

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噛み合わない歯車、最大借金16、文字職人の色紙

 矢野阪神集大成の年として最低のスタートを切った阪神タイガース。4月3日にはジェフリー・マルテ内野手が右足のコンディション不良で早々と離脱するアクシデントにも見舞われ、今季初勝利はなんと4月5日まで訪れませんでした。ようやく1勝したと思ったら今度は引き分けを挟んで6連敗。4月14日時点での勝率は.063。読売ジャイアンツ戦で今季2勝目を挙げた4月15日の試合後のインタビューでは、矢野監督が文字職人の誠司さんに書いてもらった色紙を見せるという暴挙に出てSNSを大きく騒がせました。今となってはネタに昇華した色紙騒動ですが、リアルタイムで見ていた時は笑えませんでしたね。ドン引きでした。私は、インタビューで選手の活躍に涙を見せる矢野監督が好きでした。あまり宗教には触れたくないのでこの話題はここまでにしておきます。4月21日には今季最大の借金16(8月1日時点)を抱えますが、この後の7試合を6勝1敗で切り抜け、最終的に4月は9勝14敗1分で終えることになります。

4月5日 甲子園 vsDeNA1回戦 4‐0 待望の、希望の、渇望された初勝利

 4月のターニングポイントとなったのはもちろんこの試合でしょう。この試合のMVPは西勇輝投手でした。9回118球無失点の投球で開幕からの9連敗を完封で止めました。西投手らしいコーナーを突いてゴロを打たせるピッチングが光り、27個中13個のアウトをゴロで取りました。打線は佐藤輝明内野手の今季初ホームランとなるツーランホームランなどで二回までに4点を取り、西投手を援護しました。去年後半は制裁を欠いた投球が多かった西投手ですが、今年は俺が先発陣を引っ張るんだという気概が見えた素晴らしいピッチングでした。

ステップの2年目 佐藤輝明

 なかなか勝利を掴めない中、打線の中心として奮闘していたのが去年のドラフト一位でプロ2年目の大砲、佐藤輝明選手です。4月は打率.272、7本塁打、14打点、ops.892の成績を残しました。中でも今季1号のホームランは今日こそ勝てる!と多くのファンに希望を持たせた本塁打でした。去年後半戦の旧失速から今年の成績を不安視する声もありましたが、4月の活躍で去年がフロックではないことを全員が確信したでしょう。そもそも佐藤輝選手は素材型として指名されました。去年はホップの年で、今年はステップの年。来年以降のジャンプに向けて一歩ずつ進んでいく佐藤輝選手を、今年は皆で見守っていきましょう。

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月間防御率1・79で負け越し、「波」に乗り切れない5月

 4月を5連勝で終え、ビッグウェーブに乗っかっていきたかった5月ですが、残念ながら波に乗り切る事は出来ませんでした。青柳投手、伊藤将司投手がコロナから復帰し、ガンケル投手も怪我から復帰。さらに高卒3年目西純矢投手と来日1年目アーロン・ウィルカーソン投手の台頭によって、先発ローテーションは安定していきます。ブルペンもラウル・アルカンタラ投手、湯浅投手、岩崎優投手の勝ちパターンが確立され、浜地真澄投手、加治屋蓮投手、渡邉雄大投手、石井大智投手らも安定した投球を披露します。月間防御率は1・79を記録し、なんと5月24試合中22試合を3失点以内に抑えました。しかし、11勝13敗で月間負け越し。5月チーム打率.216の野手陣は見事に投手陣を見殺しにしました。4月24日のヤクルト戦で左脚を負傷した大山悠輔内野手の状態が上がらず、糸井選手も調子を落としていった結果、7試合で完封負けを喫することになりました。チームの歯車は噛み合わないまま交流戦に突入し、6月を迎えます。

5月18日 神宮 vsヤクルト11回戦 8‐1 プロ初完投、2019年ドラフト1位が投打に大活躍

 5月の個人的ベストゲームとしてこの試合をピックアップしたいと思います。今季3度目の先発となった西純矢投手は、投げては9回115球7奪三振1失点プロ初完投、打っては2回表にレフトスタンドへプロ初の本塁打となるツーランホームランを放つ大活躍。王者ヤクルト相手に完勝しました。昨年は阪神で及川雅貴投手が1軍で中継ぎとして39登板に登板、他球団では奥川恭伸投手、宮城大弥投手が頭角を現し、今年の4月10日には佐々木朗希投手が完全試合を達成するなど、同年齢の活躍が目立っていたなかで、西純投手は悔しさ、焦りを感じていたと思います。この試合で、自分自身も2001年生まれ黄金世代の中心にいることを見事に証明しました。低迷していた野手陣もジェフリー・マルテ内野手、佐藤輝選手、大山選手の345番が本塁打の揃い踏みで若きエース候補を援護。投打が嚙み合った最高の試合でした。

ハリウッド俳優似の男がチームを救う A.ウィルカーソン

 5月のMVPはこのイケメンで間違いありません。4試合に登板して3勝1敗、防御率1.04、WHIP0.85の活躍。NPBが選出する5月度「大樹生命月間MVP賞」を受賞しました。秋山拓巳投手の不調でローテに空いた穴を、しっかりと埋めてくれました。ストレートのスピードはそこまでですがキレ、コントロールが共に抜群で、そこに被打率の低いチェンジアップにスライダーとカーブを組み合わせた打者に的を絞らせないピッチングが光りました。5月は被本塁打0で、長打を打たれていなかった所も勝ち星につながった要因だと思います。現在は5月と比べて調子が落ちているように感じますが、オールスター休みでしっかりとリフレッシュして、後半戦の活躍にも期待したいです。

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交流戦でついに来たビッグウェーブ、噛み合いだす投打

 いまいち「波」に乗り切れないまま6月に突入した阪神ですが、遂に大型連勝、月間勝ち越しがやってきます。6月1日からの6連勝、2連敗を挟んだ後再び5連勝。交流戦成績は12勝6敗でパリーグ相手に貯金を6つ作ることに成功し、月間でも14勝8敗1分で今季初の月間勝ち越し。大きかったのは野手陣の復調です。7本21打点交流戦二冠を獲った大山選手を筆頭に、近本光司外野手が月間打率.366、糸原健斗内野手が打率.293、6月からスタメンに定着した島田選手が打率.298の成績を残すなど、多くの選手が先月より成績を向上させ、チーム打率も先月と比べて6分高い.276に。疲労の色が見え始めた投手陣をカバーし、5月の借りを返す結果となりました。最大16あった借金は6月終了時点で半分の7にまで減り、ついに借金返済が現実的な目標となって見え始めてきました。

6月3日 甲子園 vs日本ハム1回戦 9‐7 目醒めた主砲、粘る中継ぎ陣、諦めない姿勢が生んだ大逆転劇

 6月のターニングポイントとなった試合は間違いなくこの試合でしょう。先月のMVPウィルカーソン投手が3回7失点の大乱調も、大山選手の3本のソロホームランなどでコツコツ点を返していき、8回に一挙4点を取って6点差を逆転した試合です。この試合表のMVPは間違いなく大山選手ですが、大逆転を生んだ影のMVPは、4回以降を0点に抑えた中継ぎ陣と、諦めない精神を見せた代打陣でしょう。4回以降投げた投手は全員がランナーを出しましたが、一人の生還も許すことなく0で抑え続けました。もし誰かが中押し点を与えていたら、試合は日本ハムファイターズの勝利であっけなく終わっていたでしょう。北條史也内野手は、追い込まれてからストレートに食らいついて三遊間に転がし、3点目をもぎ取りました。糸井選手は冷静に四球を選んで次に繋ぎ、山本泰寛内野手は外角のチェンジアップに飛びついて一二塁間に転がし同点のランナーをホームに返しました。彼らは誰一人として諦めていませんでした。もし誰か一人でも諦めて1打席を無駄にしていたら、この試合で白星は取れなかったでしょう。主砲の豪快な3発の影に隠れた彼らの諦めない姿勢がこの試合の勝敗を変えたのです。この試合を機に、チーム全体の雰囲気が変わっていったように私は感じます。

悠然とバットを振り構える我らの主砲 大山悠輔

 6月のMVPは満場一致でこの男でしょう。打率.318、10本塁打、29打点、ops1.161、得点圏打率.423の凄まじい成績を残し、本塁打と打点の二冠でセ・パ交流戦「日本生命賞」を受賞しました。五月は怪我の影響で思うようなプレーが出来ていませんでしたが、その鬱憤を晴らすような活躍。入団以降一人で虎の未来を背負い続け、事あるごとに矢面に立たされてきた大山選手ですが、佐藤輝選手の入団で少し肩の荷が下りたのか、今年は6月からキャリアハイの成績を残す勢いで活躍を続けてくれています。誰が何と言おうと、現在の阪神タイガースの顔は大山悠輔選手です。彼には阪神で優勝して欲しい。大山選手が阪神タイガースに入団することが出来てよかったと本心から思える時が来ることを、私は本心から願っています。

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取り戻した強者の野球、借金完済で後半戦へ

 6月の勢いそのまま、波に乗った阪神は白星を重ねていきます。西勇投手、青柳投手、伊藤将投手、ガンケル投手の4人は安定感抜群で、七月はなんと負けなし。打線も好調が続く近本選手大山選手を中心に、急遽獲得した新外国人アデルリン・ロドリゲス内野手を加え、一時期と比べれば点が取れる状態を維持します。22日からの前半戦最終カードを前にして借金は3にまで減り、迎えた横浜DeNAベイスターズ3連戦を見事に三連勝。94試合目にして今季初めて勝率は5割に到達し、まさかまさかの借金0で前半戦を終える事となりました。

7月3日 バンテリンドーム vs中日14回戦 3‐0 通算100号と涙の復活白星

 この日1148日ぶりに一軍のマウンドに登ったのは、トミージョン手術を乗り越え今年5月4日に支配下登録された背番号35、才木浩人投手でした。注目の初回、いきなり151キロのストレートを投げ込むと、150キロ越えを連発し2奪三振三者凡退の好スタートを切ります。本人曰く初回でばてていたそうですが、その後も中日打線をしっかり抑え5回76球5奪三振無失点のピッチング。打線も大山選手のプロ通算100号となるツーランホームランと中野拓夢内野手の第4号となるソロホームランで3点を奪い、才木投手に白星を付けることに成功しました。大山選手は才木投手とドラフト同期。復帰登板の日に100号を打つことが出来て嬉しかったと思います。ヒーローインタビューでは涙を堪え切れず男泣きした才木投手。テレビで見ていた私も思わず涙を流してしまいました。本当に帰ってくることが出来て良かった。彼は偉大なかつてのエース、ランディ・メッセンジャーのような投手になれる逸材です。才木投手がエースとして君臨する物語の、大切な1ページとなる試合だったと確信しています。

掴んで離さないエースの称号 青柳晃洋

 7月どころか456月全てでMVP級の活躍をしている青柳投手が、7月そして前半戦のMVPだと思います。七月は4試合に登板して3勝0敗、防御率1.00、WHIP0.81と文句無しの活躍。オールスターファン投票では先発1位として選出されました。前半戦は15試合に登板して11勝1敗4完投2完封、防御率1.37、勝率.917、奪三振92、QS率93.3%、K/BB5.75、FIP2.25、WHIP0.86という化け物みたいな成績を残しました。コロナでの離脱が無く、もし開幕投手として登板していたら、現在阪神の順位はどうなっていたのか。そんなタラレバも言いたくなるような成績です。現在のNPBでは頭一つ抜きんでているのは誰の目にも明らかでしょう。一年目から毎年課題を克服し続け、遂にエースの座まで手に入れた青柳投手。今年は夏場の失速も克服して、後半戦も獅子奮迅の活躍を見せてくれるでしょう。

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ヤクルト三連戦2勝1敗、首位とのゲーム差10

 本当はヤクルト三連戦の前にこのnoteを出すつもりでしたが、だらだらしているうちに終わってしまいました。結果は2勝1敗。三連勝がマストだったので勝ち越していても満足は全くできません。三戦目、一度でも村上を歩かす選択肢をベンチか梅野隆太郎捕手がとっていれば、勝敗は変わっていたのではないかと思わずにはいられません。佐藤輝選手に徹底した内角攻めを敢行していたヤクルトとの差を感じる一戦でした。まあ終わった試合の話をしても仕方がありません。8月2日の巨人戦から数えて残り試合は46試合。燕の背中はギリギリ視認出来る距離にあります。諦めるにはまだまだ早い。後半戦のキーマンはもちろん選手、監督、コーチ全員です。全員野球こそが矢野監督が言う俺たちの野球だと、私は信じています。今季終了後、面白いドラマが見れたなと私に思わせてくれよ矢野タイガース。


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・参考にさせていただいたサイト
データで楽しむプロ野球ホーム
nf3-Baseball Date House-
NPB公式ホームページ
阪神タイガース公式サイト


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