見出し画像

【少年野球】子どもの「ケガ」はチャンスである

 野球少年たちにとって一番つらいのはケガである。特に長期間の休養が必要なケガや、手術が必要なケガをしてしまった子は本当につらい時間を過ごすことになる。場合によっては「野球をやめるかどうか」という選択を迫られる場合もあるから、本当にケガだけは気をつけてもらいたい。

 しかし「気をつける」といってもなかなか気をつけられないのが現実だ。
特に肘に関しては、あまり痛みを感じないまま進行してしまう野球肘があり、「痛い気がする」と子どもが自己申告した時点では相当症状が進んでしまっていることがある。
 低学年の頃からレギュラーとしてたくさんの球数を投げているような子は、例えピッチャーやキャッチャーでなくても、年に一度は専門医のいる整形外科で診てもらうなど予防に努めることをおすすめする。

 では実際にケガをしてしまった場合だが、私はとにかく親の皆さんに頑張って欲しいと思っている。
 子どもへの声がけは、できるだけ明るくポジティブに。そんなことは当たり前だと言うかもしれないが、チーム状況によっては「わが子のケガでチームに迷惑をかける」といった気持ちが強く出てしまう親もいる。
 また、知識のない監督やコーチが「お前は体が弱いからだ」などと平気で言ったりすることもあるから、親は常に子どもの味方でいなければならない。間違っても指導者やチームメイトの前で「うちの子が迷惑をかけてすみません」などと言ってはいけない。(放課後に無茶な遊び方をしてケガをしたなど、野球とは関係のないケガの場合は除く)

 ケガの治療やその後のリハビリ等は医師に任せるとして、親のできることで言えば「ケガは教育という観点で言えば一つのチャンスである」ということを、是非頭の隅に入れておいてもらいたい。

 ずっとレギュラーだった子は、ベンチの子の気持ちを理解するチャンスである。野球漬けだった子は、別のことに時間を使うチャンスである。

 それぞれの子の視点に立って「ケガ」がどんなチャンスをつくってくれたか考えるのが親の役目だ。
 
 ケガをした途端、ベンチにいるのは無駄だからと一切活動に来なくなったというのはさすがに周囲の理解を得られないだろうが、様子を見ながら練習を休む日があっていい。
 休んだら是非、博物館や美術館、科学館などに連れて行ってあげて欲しい。子ども向けミュージカルや演劇なども良いだろう。
 
 「うちの子はそんなものに興味はない」という親は、親自身に興味がないから乗り気にならないだけだ。世の中には野球なんかより面白いことが山ほどある。それらにほとんど触れさせることなく野球だけで小学校時代が終わってしまう危うさを、親もまた実感するチャンスだ。
 厳しい言い方をすれば、野球しかやらせなかった親は、子どもから「他の経験をするチャンス」を奪ってきたのだと気づかなければならない。

 子どもは、その瞬間は「つまんなかった」と感じだとしても、その経験はかならず後で活きてくる。見たことがある・聞いたことがある・行ったことがあるというのはそれだけで興味のフックとなる。海外旅行で訪れた国が身近に感じられるのと同じだ。興味のフックはあればあるほど良い。たくさんのフックを持つ人の人生は、間違いなく豊かなものになる。

 ケガは確かにつらい。
 しかし、その経験・その期間を親が有効活用できれば、それは子どもの人間形成にとって決して無駄にはならない。 

 
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?