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【まとめ】少年野球の問題は哀しい大人たちの問題だ(8)

 「なぜ自分はこの活動をしているのか」と自問自答ができる大人は、果たして少年野球(学童野球)の世界にどのぐらいいるだろうか。
 
 疲れた中高年にとって仕事と家庭以外の居場所はとても貴重だ。
 仕事の面では現役世代はストレスも多く、退職が見えてくる世代は寂しさしさと不安を抱えている。退職後なら自分が必要とされる居場所を切実に求めているだろう。そうした中高年のメンタルは休日の家庭では癒やされない。ゴロゴロしていれば疎まれたり、親の介護や自身の体調不安、お金の心配などが頭をかすめ家にいても気が晴れないからだ。
 
 少年野球の現場はそうした哀しい中高年にとって大切な場所だ。青空の下で「勝った!」「負けた!」と童心に返り、学歴や職種や年収とは違う基準で自分の居場所を作り上げることができる。だから少年野球に入れ込む大人たちにとって「少年野球に関わるならもっと自分と向き合え」と言われるなど本末転倒、とんでもなく野暮な要求ということになる。

 だからこそ、それができる人が少年野球の現場には必要だ。少なくともその意識を持った人が必要だ。単に野球が好きだから・・・ではもう勤まらない。かっこいいユニフォームや肩書きが好きで、現実逃避したくて、感謝されたくて、勝った負けたに興じたくて、次の試合の戦術を酒のサカナにワイワイやりたくて・・・そうした目的で少年野球を利用しているだけの大人にはもう少年野球の現場は荷が重すぎる。

 コロナ禍を経て世間はより一層ものごとの本質について考えるようになった。子どもという圧倒的弱者を利用してストレスを発散する大人を、もはや世間は放っておいてはくれない。
 ジャニーズも歌舞伎も宝塚も、日大アメフト部も立教大駅伝部も、ニュースを見ればそれらの事件や騒動が指し示す時代の流れはただひとつだ。

 伝統の名の下に許されてきた「なんとなくスルーされてきた悪」は、白黒ハッキリさせられてしまう時代になったのだ。
  
 少年野球の世界においては、競技人口の減少がこの流れを後押しする。野球は人気がなくなった。それはなぜか。簡単な答え合わせだ。少年野球に関わる大人たちに問題があるからだ。

 結局身勝手な大人たちが昨日と同じ今日を繰り返したからだ。現実逃避したい大人たちが子どもたちを利用したからだ。試合に負けて泣いているレギュラーの子ばかり見て、ベンチの子の表情を見ようとしなかったからだ。勝てない原因を子どもたちに押しつけ、自分の課した練習方法や采配を省みなかったからだ。活躍するOB選手を自慢げに語る一方で、疎外されて傷ついた子どもたちが野球から離れていくことに胸を痛めなかったからだ。
 
 子どもたちにとって一日、一週間、一ヶ月、一年という単位がどれほど長く大切な時間かを忘れ、子どもたちからチャンスを奪い続けたからだ。
 そして今日という一日は来年、再来年・・・10年後に続く「成長過程」だということを忘れ、目の前の勝利に固執して子どもたちを酷使したからだ。

 子どもたちが去るのは必然だ。


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